半年で配車数が約20倍、ドコモやKDDIとの提携も 「みんなのタクシー」のMaaS戦略

» 2019年11月05日 20時11分 公開
[田中聡ITmedia]

 タクシー配車アプリを提供する「みんなのタクシー」が11月5日に事業説明会を開催し、西浦賢治社長が直近の戦略を語った。同社は外部パートナーが持つデータベースを活用しながら、MaaS(Mobility as a Service:サービスとしての移動)分野の拡張を目指す。

みんなのタクシー みんなのタクシーの配車サービスで実際に使われているタクシー車両

 みんなのタクシーは、タクシー会社5社、ソニー、ソニーペイメントサービスの合弁会社。タクシー会社5社が保有する1万台以上の車両と、タクシー配車アプリ「S.RIDE(エスライド)」を用いてサービスを提供している。2019年4月16日にサービスを開始し、まずは東京23区と武蔵野市、三鷹市で展開している。10月28日からは、乗車時にあらかじめ運賃が分かる「事前確定運賃サービス」を導入した。

みんなのタクシー 事前確定運賃サービスも開始。他に提供しているのはJapan Taxiのみ

 S.RIDEの1日あたりの平均利用単価は9月時点で約2755円で、「相当高いのではと感じている」と西浦氏は話す。1日あたり配車と実車の件数は、4月から9月に掛けて約18倍に伸びたという。10月はさらに22倍にまで伸びているそうで、「大規模なプロモーションはやっていないが、順調に配車件数を伸ばしてきた」と西浦氏は手応えを話す。

みんなのタクシー S.RIDEの平均利用単価と配車実績

 10月18日には、3単語の組み合わせで場所を特定する「what3words」との連携を開始。3m四方の位置をピンで特定できるため、ドライバーと出会えないというミスマッチを防ぐのが狙いだ。ワンスライドでタクシーを呼べるようにするなど、使い勝手にもこわだってきた。

 4月には、タブレットを用いた広告事業も始めており、9月の売り上げは4月から約4倍に伸びたという。東京のタクシー利用者はビジネスパーソンが多く、「タクシー車内というクローズドな空間では広告の訴求度が高い」と西浦氏はみる。

 決済は、現在のところ事前に行うネット決済と、その場でQRコード決済が行える「S.RIDE Wallet」を提供しているが、2019年度中に他社のコード決済も取り入れる予定。対応決済サービスは「au PAY」「d払い」「Alipay」「WeChatPay」「楽天ペイ」「LINE Pay」「Origami Pay」「メルペイ」「PayPay」を予定している。また、タクシー車種の指定も今後可能になる予定。

みんなのタクシー ネット決済やコード決済の利用も増えている
みんなのタクシー 汎用(はんよう)のコード決済も導入する

 提供エリアについては、2019年度ないに多摩や横浜をはじめとした関東地域での導入を増やし、全国展開につなげていく。

 さらに、「東京の移動をもっと快適にするプロジェクト」の第1弾として、ソニーミュージック、ソニーマーケティングとの共同プロジェクトも予定しているという。「動空間に対して付加価値を高めることで、静寂かつ上質な移動体験を提供する。具体像は近々に発表する」(西浦氏)

 みんなのタクシーでは、ソニーが培ってきたAIとセンシング技術を活用し、「需要予測サービス」と「安全運転支援」という2つの分野に注力する。

 需要予測サービスは、走行データをベースに、エリアごとの特性や天候情報などを組み合わせて機械学習を行い、未来のタクシー需要を予測するもの。ドライバーはこの結果に基づき、効率的な走行ルートを決められる。需要予測はナビ画面にヒートマップ形式で表示され、長距離や長時間の乗車の予測が分かる。ドライバーが営業エリアに向かう際に、需要が高いスポットを経由するルートの提案も可能だ。このサービスは特に新人ドライバーにとってメリットが大きいそうだ。

みんなのタクシー 人々の移動需要を予測することで、タクシーの稼働率向上を目指す
みんなのタクシー このような形で、需要予測をナビ画面にヒートマップ形式で表示させる

 これまで500人弱のドライバーが需要予測サービスを試用し、フィードバックをもとに完成度を高めた上で11月5日に商用サービス開始。大和自動車交通のドライバー用タブレットに、ソニーの需要予測アプリを搭載した。他のタクシー会社にも順次展開する予定だ。ソニー 執行役員 AIロボティクスビジネス担当の川西泉氏は、需要予測サービスはドライバーの利便性を向上させるだけでなく、「タクシー会社の収益向上にもつながる」と期待を寄せる。

みんなのタクシーみんなのタクシー みんなのタクシーの西浦賢治社長(写真=左)とソニー執行役員の川西泉氏(写真=右)

 安全運転支援については、ソニーの各種センサーをタクシーと同型の試験車両に搭載して走行することで、センシングデータや運転記録データを収集。それらを解析することで、危険予測データベースを構築していく。「安全運転支援ツールの開発を進め、実際のタクシーにも順次提供して検証を開始する」と川西氏は今後の見通しを話す。

みんなのタクシー 各種センサーを搭載した試験車両を用いて、安全運転支援ツールのデータを収集する

 みんなのタクシーは、今後の事業を拡大すべく、資本・業務提携を進めていく。東日本旅客鉄道(JR東日本)との業務提携では、同社が開発を進めている、さまざまな移動〜決済をワンストップで提供できるアプリ「Ringo Pass」とS.RIDEとの連携を進める。みんなのタクシー約9000台の車両に設置されているタブレットに、2019年度中にRingo Passアプリを導入する予定。

みんなのタクシー JR東日本の「Ringo Pass」と連携し、事前に決済を行えるようにする

 大手携帯キャリアのKDDI、NTTドコモとは資本業務提携する。KDDIとは、MaaSプラットフォーム構築、新たなタクシーサービス開発、ビッグデータを活用した新ビジネスなどの共同検討を進める。ドコモとは会員基盤の「dアカウント」、決済サービス「d払い」、ドコモが実施している「モバイル空間統計」を用いた配車予測を連携させる。

 キャリアと組むメリットについて西浦氏は、膨大な顧客データを組み合わせることで、需要予測サービスの精度を高められることを挙げる。

みんなのタクシー
みんなのタクシー KDDIとドコモの提携では、決済サービスやビッグデータの活用でシナジーを目指す

 さらにゼンリンデータコムとも資本業務提携し、タクシー走行データを活用した3Dリアルタイムマッピングの可視化や、データの利活用を目指す。

 S.RIDEのサービス向上や業務提携をする上では「データの収集」が大きなカギを握るが、「個人を特定する意図を持って収集することはない。収集するデータや目的はプライバシーポリシーでお知らせする」と川西氏。

 データを増やすにはユーザーを増やす必要があるが、他社が展開しているような、キャンペーンでの“ばらまき”でユーザーを集める予定はない、と西浦氏は言う。「われわれはタクシー産業の発展に貢献する責務を持っている。タクシー事業者にとって本当にメリットがある機能を提供する」と話し、タクシー会社を最重要視する姿勢を強調した。

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