18日の会見で気になった話題に「両者の技術やリソースを合わせてアジア進出を目指す」というものがある。もともとLINEは国外展開では台湾を中心にタイとインドネシアに拡大しており、特にLINE PayのFinTech事業では現地の銀行免許取得も含めた本格参入を目指しているとされている。
そうした土台もあり、ヤフーとの経営統合後に開発リソースを強化し、海外展開をさらにテコ入れしたいという思惑なのだろう。会見の質疑応答では「欧米では(GAFAなどの強力なプレイヤーがいるから)勝てないが、アジアなら勝てるだろう」といった質問もあったが、この見通しは正直いって非常に甘い。
人口規模でいえば日本よりインドネシアの方が多い上、配車サービスと金融分野で激しい競争を勝ち抜いたGojekやGrab(Ovo)のようなプレイヤーが存在する。特にGrabは東南アジア地域をまたいで8カ国にクロスボーダーの経済圏を築いており、この会見が行われた18日には正式にJapanTaxiとの提携で日本進出を果たしている。アジア進出以前に、他のアジアのプレイヤーに日本の市場を食われる危険性さえある。
金融を含む当局の規制というのは大きな参入障壁であり、恐らく素の状態で日本に入ってくることは難しい。かつてAlipay(Ant Financial)がメガバンクとの提携で日本進出を狙っていたとき、同業他社と政府の横やりで断念したということがあった。Grabの日本進出も主に東南アジアからのインバウンド客を送致するのが目的のものだが、既に東南アジア市場でスーパーアプリ化しつつある同社が次のサービスを日本に持ち込むのも時間の問題だろう。
海外進出以前に、まずは現状でモバイルとサービス面で世界のトレンドから遅れつつある日本のインフラをきちんと整備し、地固めを行うことが重要だ。その意味で、今回発表された経営統合は諸外国での強力なプレイヤーに対抗しうる勢力を築き上げる可能性を秘めている。逆にいえば、それくらいのことをしてようやく世界の勝負のスタートラインに立った状態ともいえる。
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