総務省、改正電気通信事業法の評価方法を検討――有識者「MNP件数を見るべきではない」の仰天発言石川温のスマホ業界新聞

» 2019年12月13日 10時00分 公開
[石川温]
「石川温のスマホ業界新聞」

 12月2日、総務省で「モバイル市場の競争環境に関する研究会(第21回)が行われた。

いくつかの議題があったが「これまでの議論を踏まえた検討の方向性」という議論が本当にひどかった。あまりの茶番ぶりに、改めて今後の通信行政に不安を感じてしまった。

この記事について

この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2019年12月7日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額500円・税別)の申し込みはこちらから。


 10月より改正電気通信事業法が施行されている。この有識者会議で、改正法がきちんと機能しているか、これから評価するものだと思っていた。とはいえ、そもそも自分たちが作ったルールが正しいかどうかの評価を自分たちでできるものか、かなり疑問ではあった。

 競争など起きず、市場が低迷すれば、それは改正法が間違っていたということになる。しかし、有識者会議で「改正法が間違っていた」となれば、自分たちの首を絞めることになる。有識者の先生方が自分たちの考えが間違っていたと会議で認めるというのはプライドが許さないのではないか。

 そんななか、改正法を評価する上において、有識者のなかから「MNPの数字で評価すべきではない」という驚きの発言が出てきた。

 そもそも、モバイル市場の競争環境を促進させるために有識者会議を行い、法改正に着手したのではないか。

 さらに有識者会議の議論が物足りないと、総務省は議論を全く無視し、ゴリ押しでネットアンケートを実施。結論ありきで「解除料1000円」「2年縛りの見直し」を導入し、契約を解除しやすく環境を整備したはずだ。

 それもこれも「キャリア間でのユーザーの流動性を高めるため」が目的ではなかったのか。

 その指標となるはずのMNPの件数を評価の対象とせず、何を持って、改正法が機能しているかどうかのチェックできるというのか。

 「MNPの件数を評価軸としない」というのは責任放棄でしかないように感じた。

 さらに別の有識者からは「評価は難しい」とさじを投げた発言も聞き捨てならなかった。

 来春から5Gが始まるが、当然、キャリアは値下げするどころか現状維持、もしくは値上げ方向の料金プランを設定してくるだろう。

 結局、キャリア間の流動性は落ち、通信料金は値上がりし、端末の割引も受けられない状態になる。

 総務省と有識者の愚策により、キャリアが儲かり、ユーザーが損をする。誰のための法改正だったのか、という振り返りもないまま、まもなく5G時代に突入しようとしている。

© DWANGO Co., Ltd.

アクセストップ10

2025年12月05日 更新
  1. 飲食店でのスマホ注文に物議、LINEの連携必須に批判も 「客のリソースにただ乗りしないでほしい」 (2025年12月04日)
  2. 「楽天ポイント」と「楽天キャッシュ」は何が違う? 使い分けのポイントを解説 (2025年12月03日)
  3. 楽天ペイと楽天ポイントのキャンペーンまとめ【12月3日最新版】 1万〜3万ポイント還元のお得な施策あり (2025年12月03日)
  4. 「スマホ新法」施行前にKDDIが“重要案内” 「Webブラウザ」と「検索」選択の具体手順を公開 (2025年12月04日)
  5. 三つ折りスマホ「Galaxy Z TriFold」の実機を触ってみた 開けば10型タブレット、価格は約38万円 (2025年12月04日)
  6. 楽天の2年間データ使い放題「バラマキ端末」を入手――楽天モバイル、年内1000万契約達成は確実か (2025年11月30日)
  7. サイゼリヤの“注文アプリ”が賛否を呼ぶ理由──「使いやすい」「紙メニュー前提」など多様な意見 (2025年11月23日)
  8. Z世代で“友人のInstagramアカウント乗っ取り”が流行? いたずらで済まない不正アクセス禁止法違反 保護者が注意すべきこと (2025年12月04日)
  9. NTT系初の耳をふさがない集音器「cocoe Ear」発表 補聴器でない理由、AirPods Proとの違いは? (2025年12月03日)
  10. 鉛筆デザインのiPad用スタイラスペン「Nelna Pencil」発売 物理ボタンに9機能を設定可能 (2025年12月03日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー