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» 2020年02月07日 06時00分 公開

tsumug.edge:エストニアに住む日本人が見た電子投票の実態と課題──ネット経由で本当に透明性を保てるのか (1/3)

「電子国家」として世界の注目を集めている北欧のエストニア。その実態について、エストニアに移住した筆者が見た電子国家のリアルをお届けする。

[tsumug edge]

 北欧に位置するエストニアは、「電子国家」として世界の注目を集めている。しかし、実際の生活がテクノロジーでどのように変化しているのか、その実態は不明な部分も多い。エストニアに移住した筆者が見る、電子国家のリアルを紹介していく。

この記事について

この記事は、オウンドメディア「tsumug.edge」からの転載です。

tsumug.edgeとは

万物があらゆるサービスとつながるコネクティッドな世界では、物理的なものや場所といった制限がなくなります。tsumug.edgeは、そんなコネクティッドな未来を紹介するメディアです。

筆者紹介:高木泰弘

セントラルオクラホマ大学マーケティング専攻。リクルートを経てコワーキングスペースsharebase.InCを創業。現在はWCSの取締役CFOとしてエストニアと日本を拠点に活動中。


tsumug.edge エストニアの投票所風景(筆者撮影)

サウナからネット経由で投票!?

 エストニアの我が家にはサウナがある。隣のマンションにもサウナがある。義理の妹の家にもサウナがあるし、ホームセンターではサウナが売っている。エストニアはネットの情報以上にサウナ立国なのだ。エストニアのスタートアップが、投資家を口説くためにサウナに一緒に入って「YES」というまで出さなかったという逸話もある。

 「昔はサウナでお産をすることもあったり、物事を浄化する神聖な場所だったりしたんだよ。今でもサウナのイベントはRitual(儀式)って言うしね。」と妻は言う。エストニア人にとって、サウナはお互いの隠し事をなくし、信頼を高めるための社交場でもある。

 エストニアの電子投票は有名だが、IDカードさえあればサウナからの投票も可能だということで実際にやってみた。

tsumug.edge 我が家のサウナ(筆者の義理の妹宅にて撮影)

 ちなみに、このバスタブは1000Lの水をいれて沸かすのに5時間くらいかかる。投票そのものより大変だ。

電子投票は3分もかからない

 実際の投票プロセスは3分くらいで終わるような簡単なもので、まず投票のWebサイトに行くと、ID-KAARTとモバイルIDを選ぶように促される。モバイルIDならスマートフォンの電話番号でログインできる。

tsumug.edge 投票サイトの画面
tsumug.edge 必要な情報を入力していく

 この画面の後に2段階認証用のコードがSMSで届くので、それを入力して完了だ。ただ、現段階でもシステムの利用はPC(Windows/macOS/Linux)に限られており、今のところ、スマートフォンで認証はできても投票はできない。

tsumug.edge 候補者を選ぶ(名前でも検索可能)
tsumug.edge 電子署名をして投票が完了する
tsumug.edge ここまでで、だいたい3分くらいで済む

 ちなみに、自分の投票がキチンとデータベースに登録されているかは、別途「EH kontrollrakendus」というアプリ(iOS/Android)を使えば確認できる。その際に必要なのは同投票サイトで表示されるQRコードで、これをスマートフォンで撮って、投票が登録されていなければ、エラーとして報告できるようになっている。

tsumug.edge 投票サイトで表示されるQRコード。別途、スマホのアプリで投票が登録されているかを確認する際に利用する

 当然、投票はサウナからだけでなく、国内外のどこからでもできる。欧州で国外というと、日本人の感覚だと県外くらいのイメージだが、投票のためにイチイチ地元に帰らないといけないというのは確かに面倒だ。スイス在住のエストニア人の友人は、時々エストニアには帰ってくるものの、投票自体はスイスからしたそうだ。

 これが別の国だとどうなるかというと、先日たまたま名古屋でアルゼンチン人と会ったが、彼は日本にいるタイミングだったにもかかわらず、アルゼンチンで国民投票があるので、その投票をすべくわざわざ東京の大使館まで行っていた。

 しかし、電子投票の本当のメリットは簡単さだけではなくその透明性にある。そのメリットを感じるためには、世界中の不正選挙の事例を見る必要があるだろう。

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