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1人1台のPCで教育のICT化を推進――日本マイクロソフトが「GIGAスクールパッケージ」を提供開始スペックは「議論して決定」

» 2020年02月04日 16時00分 公開
[井上翔ITmedia]

 日本マイクロソフトは2月4日、文部科学省が定めた「GIGAスクール構想」に準拠したPCや、同社のプラットフォーム製品などをワンストップで提供する教育機関向けソリューション「GIGAスクールパッケージ」の提供を開始した。

関係者 GIGAスクールパッケージにおいてPCを供給するパートナー企業の関係者と日本マイクロソフトの担当者

「GIGAスクールパッケージ」の概要

 GIGAスクールパッケージは、「『GIGAスクール構想』の1日も早い実現に貢献」すべく、以下の製品やサービスをまとめて提供する。

  • GIGAスクール構想に準拠したPC
  • GIGAスクール構想に対応する教育プラットフォーム
  • MDM(モバイルデバイス管理)による大規模端末展開とアカウント管理手法
  • 無償の教員研修
  • 「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」に対応できるクラウド環境
概要 GIGAスクールパッケージの概要

GIGAスクール構想準拠PC

 GIGAスクール構想では、「Windows 10 Pro」「Chrome OS」「iPadOS」のいずれかを搭載する学習用コンピュータを“1人1台”利用して学習を進めることになっている。要件は「文部科学省が(OSの)プラットフォーマーと議論して」決められたもので、Windows 10 Pro搭載端末では以下の通りとなっている。

  • CPU:Intel Celeronプロセッサ以上(2016年8月以降に製品化されたもの)
  • メモリ:4GB以上
  • ストレージ:64GB以上
  • ディスプレイ:9〜14型でタッチ操作に対応するもの(できれば11〜13型)
  • Wi-Fi(無線LAN):IEEE 802.11ac以上
  • モバイル通信:LTEに対応していること(内蔵または外付けドングル経由)
  • カメラ:イン、アウトに搭載
  • バッテリー持ち:8時間以上
  • 重さ:1.5kg以下

 GIGAスクールパッケージでは、日本エイサー、日本HP、NEC、Dynabook、デル、富士通、マウスコンピューター、レノボ・ジャパンの各社から発売される17機種(うちLTE対応6機種)のタブレットPCまたは2in1 PCを提供する。

 2月4日現在のラインアップを見ると、準拠PCのメジャーな仕様は以下のようになっている。

  • CPU:Celeron N4020(1.1G〜2.8GHz、2コア2スレッド)またはCeleron N4100(1.1G〜2.4GHz、4コア4スレッド)
  • メモリ:4GB(一部に8GBもあり)
  • ストレージ:64GB eMMC(128GBや256GBのeMMCを搭載できるモデルもある)
Wi-Fiモデル Wi-Fi(LTE非搭載)モデルは全メーカーから計11機種発売される(一部未発表モデルあり)
LTEモデル LTEモデルは5社から6機種登場する
NECPC製 NECパーソナルコンピュータ(NECPC製)のGIGAスクール構想準拠PC。まだ発表前の製品で、近日中にモデル名と合わせて正式発表される予定だ
マウス製 今回の発表に合わせてマウスコンピューターが披露したMousePro P101A。スタンドが取っ手になることが特徴で、詳細なスペックなどは近日中に発表される見通しとなっている

教育プラットフォーム

 このパッケージには「Windows 10 Pro Education」と、「Office 365 Education」のライセンスが付帯する。いずれも、通常のライセンスと比較して「特別な低価格」で提供されるという。

 Windows 10 Pro Educationは、Windows 10 Proをベースとして一部設定の規定値を変更した教育機関向けエディションだ。例えば、通常エディションでは有効化されている「Windowsのヒント」「スタートメニューのおすすめアプリ」が、Educationでは無効化されている。

 Office 365 Educationは、サブスクリプションサービス「Office 365」の学生、教育者向けエディションで、教育機関が一括して導入することも可能だ。「Microsoft Teams」を使って、教室内(あるいは学校中)でコミュニケーションを撮ったり調べ学習などの成果を共有(コラボレーション)したりすることもできる。

教育プラットフォーム Windows 10 Pro EducationとOffice 365 Educationのライセンスを「特別な低価格」で提供する

MDMと端末展開

 GIGAスクール構想では、児童や生徒の使うPCだけではなく、ログインに利用するIDも“1人1アカウント”用意する必要がある。そのことに伴い、PCとIDを一括管理できるMDMの導入も必須条件となっている。

 今回のGIGAスクールパックでは、MDMサービスとして同社のクラウドサービスの1つ「Microsoft Intune」を活用。PCの利用準備(セットアップ)にも同サービスを活用することで、迅速にセットアップを完了できるようになるという。

 「Windows Update」を介したWindowsやデバイスドライバーの更新についても、展開するポリシーを適切であれば、夜間の充電中にスリープから復帰して自動展開し、というプロセスを整えられる。

迅速な展開 PCのセットアップやMDMにはIntuneを活用。従来のキッティングと比較すると「マスター」に関わる作業を短縮できる分、展開も迅速になる

無償の教員研修

 GIGAスクール構想の理念を実現するためには、学校で児童や生徒に携わる教員のスキルも重要な課題だ。同構想では学習用コンピュータや校内ネットワークの整備に対する補助金は用意されるが、教員研修に対する補助金は用意されていない。

 そこで日本マイクロソフトでは、GIGAスクールパックを導入する都道府県または政令指定都市の教育委員会を対象に、無償で「研修プログラム」を提供する。加えて、同社が提供しているオンラインの「教育センター」にも、GIGAスクール構想に対応した無償オンライン講座を用意する。

講座 都道府県または政令指定都市単位で無償講座を開催する
教育プログラム 無償のオンライン教育プログラムも提供する

クラウド環境

 文部科学省では「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」を定めている。ガイドラインでは「(データの)守秘義務、目的外利用および第三者への提供禁止」が定められており、クラウドサービスを利用する場合は一定のセキュリティ要件を満たすことが求められている。

 当然、GIGAスクール構想で利用するクラウドサービスについてもガイドラインの要件を満たす必要がある。ただし、クラウドサービスを利用する場合は、以下のようなリスクも考えられる。

  • 規約の準拠法令が日本以外の国・地域である場合、係争発生時に海外での裁判を強いられる可能性がある
  • データセンター(サーバ)の設置場所が海外である場合、設置場所の法令次第によっては、日本の法令では認められないデータの押収・解析が行われる可能性がある

 これらのリスクを払拭(ふっしょく)するため、GIGAスクールパックで提供されるクラウドサービスは、以下のような特徴を備えている。

  • 情報保護に関する国際規格(ISO27018、ISO27701など)を取得
  • 規約の準拠法令を日本のものとし、管轄裁判所を東京地方裁判所に設定
  • 円建て決済可能
  • データセンターを日本国内に設置
クラウドサービス クラウドサービスはガイドラインにのっとったものを用意

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