データフリーの考え方に変化? LINEモバイルが料金プランを刷新した狙いMVNOに聞く(3/3 ページ)

» 2020年03月04日 11時00分 公開
[石野純也ITmedia]
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プリペイドサービスを提供する狙い

―― 今、プリペイドというお話が出ましたが、ちょうど夏からプリペイド回線を始めます。その狙いを教えてください。

LINEモバイル 2020年夏にプリペイドSIMを提供する予定

今村氏 回線を契約するのは、やはりハードルが高いことです。ちょっと試してみようと思っても、なかなか試せないですからね。プリペイドなら、ご購入いただくだけでいいので、そのハードルをかなり下げられます。幅広いお客さまに来ていただきたいので、極力ハードルは下げていきたいと考えています。また、短期的にはオリンピックの(訪日外国人)需要もあると思います。

―― 一部の国や地域の方には、LINEブランドも効きそうですね。

今村氏 はい。それもあると思います。LINEは東南アジアを中心に、特にブランド力が高いので、そこは生かせると思っています。

―― 価格や容量はどのようなものになるのでしょうか。

今村氏 そこはこれからですが、試したみたいというニーズと、短期で使いたいというニーズの2つを満たせるものにしたいですね。ただし、種類を増やすと分かりづらくなってしまうので、極力シンプルに提供していきます。

―― そういう意味でいうと、物理的なSIMカードよりeSIMが向いているような気がします。

今村氏 eSIMはやりたいですね。とはいえ、現状ではMNOから提供されていません。本当はeSIMでやりたいぐらいです。MVNOは安い料金を打ち出し、売り上げも低いので、コストを下げたいのですが、SIMカードだとどうしても物理的なコストがかかります。そのコストを減らす上では、やはりeSIMがあるとうれしい。お客さまの乗り換えもしやすくなりますからね。MNOにとってのモチベーションは低いかもしれませんが、MVNOとしてはやりたいところも多いと思います。

ゼロレーティングのガイドラインは最終版を見て判断する

―― MNOのグループ会社が、他のMNOから回線を借りる動きに懸念を示している会社もあります。特にドコモが、そのスタンスを明確にしていますが、御社としてはいかがでしょうか。

今村氏 例えば楽天さんの場合、MNOもやりながら、直接ドコモさんから回線を借りていますが、私どももビッグローブさんも(MNOの事業を展開する親会社とは)別会社です。(やめてくれという話も)全然ありませんし、au回線も昨年始めたばかりです。

―― 法令対応という意味では、ゼロレーティングに対しても総務書が指針を策定しています。例えば、データ容量を使い切った後には、ゼロレーティング対象のサービスも一律で速度を落とすといったことがありますが、この影響は受けそうですか。

今村氏 現状のガイドライン改定案では、「対応するのが望ましい」という形になっています。どこまで厳密性を求められるのかにもよりますが、今回の新料金プランはオプションとしてお金をいただく形になるので、それでも止める必要があるのか。最終のものが出てきてから判断したいと思っています。

―― 採用基準をオープンにするなど、コンテンツ提供者に対する透明性といったところの規制も強化されそうです。

今村氏 コンテンツプロバイダーに対する公平性というところだと思いますが、(LINEモバイルは)優越的な地位にあるわけではないので、どこまで対応すべきかだと思います。

―― 電気通信事業法の改正は、何か影響がありましたか。

今村氏 解除料を見直すなど、やらなければいけない対応はしてきましたが、それ以外に何かあるかというと、あまりありません。

岡田氏 2万円の端末購入補助上限がついた結果、MNOのキャッシュバックが抑えられたので、MVNOとしてはチャンスが広がっています。逆に買い控えなどはないので、大きな影響はないと見ています。

今村氏 業界全体としては、9月に駆け込みがあり、その反動で10月は少し下がったといったことがありましたが、LINEモバイルはあまり下がっていません。

取材を終えて:データフリーに代わる独自性をどう打ち出すか

 MNO各社が大容量プランを投入し、ゼロレーティングのサービスを導入するMVNOが増えてきた。こうした中で、LINEモバイルの独自性が徐々に失われていたようだ。むしろ、横並びで価格だけを比較されると、MVNOの中では高く見えてしまう側面があった。料金プランを改定し、データフリーをオプション化したのは、こうした価格競争への対応といった意味合いがあったという。LINEフリーだけは0円で残し、独自性とのバランスを取った格好だ。

 今村氏は影響を否定していたが、Y!mobileとの立ち位置の違いもよりはっきりしたような印象を受ける。料金の差がつくことで、トリプルブランドの中で、最も安く、オンラインの販路に強いキャリアというLINEモバイルの特徴が浮き彫りになったというわけだ。一方で、5G時代に使い放題が当たり前になると、ゼロレーティングそのものの意義はさらに薄れてくる。LINE本体と密接に連携したMVNOとして、データフリーに代わる新たな特徴を打ち出すべき時期が、近づきつつあるのかもしれないと感じた。

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