ソフトバンク回線を始めたLINEモバイルはどこに向かうのか? 嘉戸社長に聞く:MVNOに聞く(1/2 ページ)

» 2018年07月13日 06時00分 公開
[石野純也,ITmedia]

 3月にソフトバンクと資本・業務提携を結び、同社の子会社になったLINEモバイルが、ソフトバンク回線の提供を開始した。ソフトバンクのSIMロックがかかった端末をそのまま使えることや、通信速度の高さを売りにしていく方針で、現在、キャンペーンとして、ドコモ回線とソフトバンク回線を無料で切り替えるサービスも行っている。

 ただ、速度を売りにしてはいるが、MVNOという形態である以上、帯域には限界もある。技術だけでなく、資金面でも、ソフトバンクのサポートがどこまで受けられるのかは気になるポイントだ。資本・業務提携時には端末の調達についてもシナジー効果の1つに挙げていたが、これも実現できていない。

 資本・業務提携後のLINEモバイルは、どのようなMVNOになっていくのか。同社の代表取締役社長を務める嘉戸彩乃氏に、ソフトバンク回線提供開始までの裏側や、今後の展開を聞いた。

嘉戸彩乃 LINEモバイルの嘉戸彩乃社長

「格安スマホ最速チャレンジ」の狙い

―― 子会社化からソフトバンク回線の提供まで3カ月かかりましたが、この3カ月はいかがでした。

嘉戸氏 ひたすら忙しかったです(笑)。

―― 発表後の反響は。

嘉戸氏 こちらがびっくりするぐらい大きかったですね。久しぶりにTwitterのトレンドにも入ったぐらいです。取り上げられ方を見てみると、ソフトバンク回線をスタートするというところが一番大きかったのです。ツッコミどころは満載だったかもしれませんが。(格安スマホ最速チャレンジキャンペーンの)「(UQ mobileを除く)」とかもありましたし(笑)。

―― (笑)。あの括弧は自分も気になりました。UQ mobileは比較対象から外していたのでしょうか。

嘉戸氏 格安スマホ最速チャレンジキャンペーンを出すにあたって、誤解を与えないよう、定義をしっかりしなければいけないと思ったからです。格安スマホとは何かというとMVNOですが、何をどうやっても太刀打ちできないところがあるというのは、しっかり出すことにしました。

LINEモバイル 「格安スマホ最速チャレンジ」の「格安スマホ」は、「UQ mobileを除く」という注釈がある

―― とはいえ、UQ mobileもKDDIの関連会社とはいえ、MVNOの1つです。同じように速度を出すことはできるのではと思いました。

嘉戸氏 よくミルク補給(直接、間接問わずに親会社からの資金提供で帯域などを増強すること)のことは言われますが、割とマジメにMVNOとしてやっています。格安スマホ最速チャレンジも、何がチャレンジかというと、経営に対するチャレンジになっていますね(笑)。

―― 1Mbpsを下回ると1GBというのは、どういう基準だったのでしょうか。

嘉戸氏 YouTubeが快適に、詰まらず見られるラインで、そこは死守したいと考えています。ドコモ回線だと難しいところはありますが、一方でお客さまの中には1Mbpsは欲しいという方もいます。その意味で、選択肢を用意しました。

―― 個人的には、子会社ならむしろミルク補給があってもいいのではとも思っています。

嘉戸氏 ジョイントベンチャーなので、マーケティング活動のサポートは、LINE側からも受けています。接続料のところで、公正競争が促進できることは担保しつつ、ソフトバンクからは、店舗の連携や、ソフトバンク解約時にグループのMVNOとしてオススメしてもらうというところで連携していきます。どちらにとってもいい形のジョイントベンチャーになることは意識しました。

ミルク補給はされていない

―― Y!mobileのように、ソフトバンク回線をそのまま提供するということは考えなかったのでしょうか。MVNOにこだわった理由を教えてください。

嘉戸氏 ドコモ回線がどうなってしまうのかというのはありますね。どこがデータベースを持つのかという話とリンクしてしまうので、(ソフトバンク回線をそのまま提供するのは)なかなか難しいです。マルチキャリアMVNOだからできることの方が多いと考えました。正直、ソフトバンク回線オンリーで数字が伸びるかというと、うーんというところもあります。それぞれのお客さまにとって、一番いい形とは何かを考えたとき、MVNOのよさである低価格を生かそうということで、今の形に落ち着きました。その際に、どういう資本構成なのかはかなり大事で、MVNOにはMVNOらしさもあります。

―― ルーティングを見ると、ソフトバンクの設備を経由しているようですが。

嘉戸氏 資産としては、全てこちら側にあります。所有権はLINEモバイル側にあって、誰が運用しているかというと、LINEモバイルとソフトバンクの両方です。

―― 子会社である以上、MVNEを間に挟むのもちょっとおかしいですしね。

嘉戸氏 当初はNTTコミュニケーションズを間に入れるアイデアもありましたが、期間的に間に合わなかったり、帯域の増強を頑張らないといけないことがあったりで、今の形になっています。

―― 料金的にはドコモ回線と同じですが、接続料を加味すると、持ち出しが多くなってしまうのではないでしょうか。

嘉戸氏 3〜4年後には、ほとんど違いはなくなってくると見ています。ソフトバンクでいえば、ギガモンスターでトラフィックがガーっと上がっているので、安くしていかなければならないと思います。

LINEモバイル ソフトバンク回線では、ドコモ回線と同じ料金プランを提供する

―― 逆に、現時点ではLINEモバイル側で差分を吸収したということですか。

嘉戸氏 ミルク補給はされていませんが、そこは先ほど申し上げた経営に対するチャレンジですね(笑)。ただ、MVNEが間に入っていないので、その分のマージンが発生していないというところも仕組みとしてはあります。設備も自分たちで持っているので、トラフィックがちゃんと見えたりするところの違いも大きいですね。

―― ただ、データフリーが提供されていません。

嘉戸氏 間に合いませんでした。察してください(笑)。

―― やはり、きちんとデータを識別するのは、大変なんですね。

嘉戸氏 パケットの制御に手を入れなければいけないので、間に合わせるとなると何月になるという話が出たとき、そこまで待つかどうかを判断しました。結果、待たないでやろうと決意し、今、ソフトバンク回線できることをやっています。

―― その間に倍増するというのは、いい落としどころな気がします。

嘉戸氏 これは一瞬で決まりました。今使われているデータの30%前後がデータフリーで、ならば2倍にすればお客さまも納得してくれるだろうという判断です。でも、早く出せて本当によかったと思っています。やはりニーズがあったんだなと実感しているところです。

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