―― 5G LABのコンテンツはどのくらいの期間で、どのくらいの規模で増やしていくのでしょうか。
寺尾常務 私たちは元々、「スポナビライブ」「バスケットライブ」といったコンテンツを運営していました。これらを担当していたチームや、ヤフー、そのグループ企業であるGYAOが一緒になってコンテンツを作っていこうという話になっています。
(ヤフーが運営する)「スポーツナビ(スポナビ)」はテキストメディアですが、高校野球を皮切りにライブ中継を組み合わせる取り組みを始めました(参考リンク)。ライブ中継をすると、メディアにユーザーが集まります。無料コンテンツと有料コンテンツをうまいこと組み合わせることもできると思っています。
従来のメディアと、多視点動画やVR(仮想現実)やAR(拡張現実)といった付加価値系のコンテンツサービスを両方うまく作っていくことで継続的なサービスを提供できるのではないかと考えています。
私自身は今までY!mobileを担当してきて、ヤフーとの関係は構築できています。そのリソースをうまく活用すれば、従来はリクープ(回収)しづらかったコストの案分もしやすくなって、うまく行くのではないかと。
―― チーム全体として作ったものの中に、5G LABの多視点動画などのコンテンツもあるというイメージでしょうか。
寺尾常務 そういうことになります。作り出した1つのコンテンツをうまく切り取り、いろいろな人や場所で使われることによって、幾つかのお金(収入)に変えることもできます。
コンテンツの調達にはお金が掛かるので、仕組みがうまく働けば、調達もしやすくなるでしょう。
―― 先日、AKB48とVRライブ配信に関する取り組みを行いました(参考リンク)。5G LABでもそれを継続するようですが、AKB48の効果はいかほどのものなのでしょうか。
寺尾常務 効果は高いと思います。数値としてはまだまだですが、わざわざ劇場に足を運ぶファンの皆さんは強いです。
VRグラスや視聴券をセットにした「お土産キット」を用意しているのですが、かなり売れています。購入後、それを試している人も多くいます。
―― 新型コロナウイルスの影響で、スポーツでは「無観客試合」、演劇でも「無観客公演」が増加傾向にあります。無観客で行われるもののVRコンテンツを作るのはどうでしょうか。
寺尾常務 現状の悩みは、試合や公演自体をやるのかやらないのか分からない、ということにつきます。
念のため、無観客試合などが増えることを想定して、(配信の)設備増強は始めています。
―― 5G LABは「AR」「VR」「FR(多視点)」「GAME(クラウドゲーミング)」の4つで構成されていますが、今後も4つだけなのでしょうか。
寺尾常務 もっと広げることもあるでしょうし、お客さんの反応によっては見直すこともありえます。
技術の進歩が、映像制作の世界をどんどん変えています。今日の発表会では、たくさんのカメラマンが撮影に入っていますが、人(カメラマン)がいらなくなる世界観が見えつつあります。顔認識技術を使って、特定の人を追いかけ続けられる「AIカメラ」も出てきています。
ライブで10人程度を追っかけて撮影するくらいなら、置きっぱなしのAIカメラで事足りるかもしれません。そうなると、カメラマンとその助手が省けるでしょうし、場合によってはスイッチャー(カメラの切り替えをする人)も不要になるかもしれません。
そういう意味では、技術の進歩によって、コンテンツの幅が広がることは十分に考えられます。複合メディアも生まれるかもしれません。「
―― 人手のいらない撮影、ということも考えられるのでしょうか。
寺尾常務 福岡PayPayドーム(旧名「福岡ドーム」)にも60台のカメラを設置して、(多視点撮影などの)インフラを整えました。これを野球以外の用途に使うことは“あり”だと思っています。バスケットボールリーグであれば、ホームアリーナのあるチームなら、そこに設備を入れればいろいろな面で活用できます。
ソフトバンクには法人営業もあるので、カメラやインフラをパッケージ化して提供することも考えられると思います。そうなれば、野球やバスケだけではなく、サッカーなどいろいろなスポーツや催しに活用できます。
―― 4つの要素の中で、GAMEを担う「GeForce NOW Powered by SoftBank」だけは、料金面を含めて別立てという扱いです。実際に、どのくらい実用的にゲームできるものなのでしょうか。
寺尾常務 格闘ゲームなどで“フレーム単位”を競うと厳しいです。一方で、レンダリングエンジンをガンガン回すものには強いです。
―― 5Gとそれ以外の通信ネットワークで、違いは出てくるのでしょうか。
寺尾常務 最終的にはレイテンシー(遅延)の面で差が出てくると思います。現行の5GネットワークはNSA(ノンスタンドアローン)構成なので、レイテンシーにおいて現状の4Gと大差ありませんが、SA(スタンドアローン)ネットワークになれば遅延量を小さくできます。
それでも、本当にフレーム単位で戦うものに耐えられるかというと、微妙かもしれません。
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