新型コロナウイルスが中国スマホメーカーを直撃、5G移行に大きな影響山根康宏の中国携帯最新事情

» 2020年03月06日 07時23分 公開
[山根康宏ITmedia]

 2020年2月24日から27日までスペイン・バルセロナで開催予定だったMWC Barcelona 2020が中止になった。MWCは世界最大の通信関連イベントであり、最新の技術や製品が展示されるとともに、業界のキーパーソンたちによる多数のカンファレンスも開催される。その年の通信業界の動きを知り尽くすことができるイベントでもあり、今回は特に5G関係の展示が数多く見られるはずだった。3月に5Gサービスが始まる日本にとっても、MWC Barcelona 2020は格好の情報収集の場になるはずだったのだ。

OPPO Find X2 MWC Barcelona 2020が中止になったバルセロナ市内には、新製品を発表予定だったメーカーの広告だけが残されていた。写真はOPPO Find X2の広告

Huawei以外の全メーカーが新製品発表会を中止に

 一方、スマートフォンの新製品も例年以上に数多く出展される予定だった。近年はMWCの開催前日や前々日にプレスカンファレンスを行うメーカーが多く、2019年はXiaomiがMWCに合わせて初の新製品発表会を行った。MWC Barcelona 2020ではVivoが初の発表会を開催する予定で、中国メーカーのグローバルシフトがさらに加速化する動きも見られようとしていた。

 他の中国メーカーもMWC Barcelona 2020に合わせて2020年最初のフラグシップモデルを準備していた。Huaweiはここ数年Leicaカメラを搭載する「P」シリーズを3月に発表しているが、MWC Barcelona 2020では2019年に続き、折りたたみ式スマートフォンの新製品という飛び道具を用意。XiaomiやOPPOも注目製品を発表予定だった。他にもHonorやZTE、またNubiaが新製品をリリースするといった情報もあった。RoyoleはMWC Barcelona 2020への出展中止アナウンスの中で、折りたたみスマートフォンの後継モデル「FlexPai 2」を発表予定だったことも明らかにした。

 MWCは来場者数10万人を超える大型イベントで、メディア関係者の参加ももちろん多い。各社の新製品はすかさずニュースにされ各国に配信される。メーカーにとっては自慢の最新技術を搭載したモデルを全世界の消費者に伝えることのできる場であるわけだ。しかしMWC Barcelona 2020が中止されたこともあり、最終的にはHuawei以外のメーカー全社が新製品発表会を中止にしてしまった。

Huawei 唯一発表会を行ったHuawei。リチャード・ユーCEOは会場に登壇せず、ビデオが流された

 そこで、各社は新製品発表会をオンライン形式でストリーミングや動画配信に切り替えた。しかし発表会後の実製品をメディア関係者がレビューすることはできず、新製品のPRという点では限定的なものになってしまう。国ごとにメーカーのPR担当者が母国メディアを呼んで個別に新製品のタッチアンドトライの場を提供するケースもあるが、そうなるとその製品が発売される国でしか実機の情報が出回らないことになる。

 また、中国メーカーはグローバル向けとは別に、自国内で改めて新製品発表会を行うケースもある。中国国内だけに投入される製品や、下位モデルなどはグローバル発表会を行わず中国国内だけで発表会を開催することも多い。しかし新型コロナウイルスの影響で中国国内では1月中旬以降から、イベント開催はもちろん、人々の移動の自由な移動も大きく制限されている。例えば他の都市からの訪問者は14日間の隔離処置を取られる都市が多い。これでは発表会を開催したとしても、来場者を集めることすらできなくなってしまう。

Xiaomi 中国では国内向け新製品発表会の開催頻度も多い。Xiaomiの「CC9」は国内限定ブランドだ

スマホメーカーが情報発信できない事態に

 2019年の中国国内発表会の動きを振り返ってみると、毎月数回、頻度が高いときは1週間に数社が新製品発表会を行った。スマートフォンの普及が一巡し、これからは買い替え需要が高まっていく中で、各メーカーはハイスペックモデルだけではなくミッドレンジやエントリーモデルでもイベントを行うことで、ターゲットとなるユーザーへ製品の魅力を伝えるようになったのだ。

 今ではスマートフォンをオンラインで買うことが当たり前になった中国だが、それと比例するように、リアルに行われるオフラインの大々的なイベントが年々新製品の大きな情報発信源になっている。イベントにはKOL(キー・オピニオン・リーダー=インフルエンサー)が呼ばれ、彼・彼女たちは自分のスマートフォン片手に会場内を回りながら、発表会の様子や会場の雰囲気、そして新製品に触れてライブ配信やSNSへの投稿を行う。オフィシャルで行われるストリーミング配信では得られない臨場感を、KOLたちが中国全土に配信するのである。

KOL KOLによるSNS配信は強力な宣伝効果を持つ

 だが新型コロナウイルスは、これらのメーカーの情報発信を全て中止させる事態になった。2019年11月に5Gサービスが始まった中では、消費者の4Gから5Gスマートフォンへの関心を高め、買い替え需要を生み出そうと各社が躍起になっている。それは2019年11月と12月に中国国内で発表された5Gスマートフォンが8機種にも上がったことを見れば分かる。この2カ月だけで、世界各国で5Gサービスを展開している各通信事業者が販売している5Gスマートフォン(多くても5機種程度)を抜き去ったのだ。

 このように新製品発表会がしばらく行えない中国では、メーカーも派手な動きはできず、5Gスマートフォンの販売数は各社の見込みよりもかなり落ちるだろうし、5Gスマートフォンの投入も時期を遅らせなくてはならなくなった。5Gサービスを展開している3キャリア(China Mobile、China Telecom、China Unicom)でも、ユーザーの5G移行に一時的なブレーキがかかるだろう。そして5G免許を取得した第4の事業者「チャイナブロードキャスティングネットワーク」のサービス開始時期も遅れることになりそうだ。

中国5G 2020年上半期、中国の5G移行は足踏み状態となりそうだ

5G普及には逆風も、ユーザーの5Gへの関心は高まる?

 このように逆風ばかりが吹いているが、日常生活が平常とは全く異なる状況になったことから、逆に5Gへの関心が高まることにもなりそうだ。新型コロナウイルスの拡大防止のために中国政府は一部の都市を閉鎖したり、国民の自由な外出までをも制限したりしている。そのため、スマートフォンを使ったさまざまなサービスの利用者が増えている。

 例えば、会社や学校など普段はすぐに会って話せる相手でも、今はビデオチャットでしか会えなくなった。しかし4G回線を使った既存のビデオチャットでは、映像品質、通話品質、大幅な遅延測度、同時通話可能人数の制限など限界が見えてくる。一方、5G回線を使えばそれらの不満は全て解決できる。制限が長引けば、消費者たちが5Gのメリットを理解しやすい状況が増えていくだろう。

 武漢市に突貫で建てられた病院では、Huaweiの5Gソリューションを使った遠隔医療システムが導入されたという。5Gは人と人、人と物、物と物のコミュニケーションを大きく変えるものになるが、緊急時とはいえ、中国では5Gの実利用ケースがこれから大きく増えていくだろう。

 人々の生活や商業、産業界全てに大きな影響を与えた新型コロナウイルス。その収束はまだ見えてはいないが、専門家の意見では気温が高くなる春過ぎには落ち着くとの見方が多いようだ。中国のスマートフォンメーカーは2020年上半期のビジネスが完全停滞してしまったものの、中国1カ国に集中するサプライチェーンや、新製品の投入タイミングなど、これまでのやり方を見直す機会になったかもしれない。

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