そしてもう1つ、各社のラインアップから見えてくる特徴的な要素が「ミリ波」への対応の違いだ。ドコモはサービス開始当初は「Sub-6」となる3.7GHz帯と4.5GHz帯を用い、2020年6月からミリ波となる28GHz帯の使用を開始するとしており、ミリ波に対応したスマートフォンのラインアップとして、サムスン電子製の「Galaxy S20+ 5G」と富士通コネクテッドテクノロジーズ製の「arrows 5G」を取りそろえている。
その一方で、シャープとソニーモバイルは、ミリ波に対応したコンシューマー向けのスマートフォンをあえて用意しないという選択を取っており、ミリ波に対する端末メーカーの対応は分かれている。その理由は、ミリ波をスマートフォンで有効活用する上でのハードルの高さにあるようだ。
ミリ波はSub-6よりも帯域幅が広いので高速大容量通信に適しているが、一方で周波数帯が非常に高く、少しでも障害物があると遮られてしまい、端末でうまく受信できなくなってしまう。ミリ波を有効活用するには電波をしっかり受信できる、安定した環境での利用が求められる。そのため、本体を手で握ることでアンテナをふさぐことが多く、しかも場所を選ばず利用されることが多いスマートフォンでは、現状ミリ波を有効活用するのは難しいのではないかという声も少なからず挙がっている。
そうしたことから、先の2社はあえて通常のスマートフォンではなく、場所を選んで利用ができる法人向けの端末に限ってミリ波に対応するという選択を取っている。シャープは、5G対応スマートフォンの「AQUOS R5G」はSub-6のみの対応にとどめる一方、ドコモから販売予定の「Wi-Fi STATION」はミリ波に対応させ、固定回線が引けない環境でも光回線並みの通信速度を実現できることを特徴に、法人向けの需要開拓を推し進めようとしている。
ソニーモバイルも同様に、「Xperia 1 II」はSub-6のみの対応にとどめつつ、同等のスペックを持ちつつミリ波にも対応した「Xperia PRO」を別途開発。こちらはアプリでミリ波の受信状況をチェックできる仕組みを用意するなど、高速大容量通信がしやすい環境を整えることで、屋外での高速大容量通信を必要としている映像のプロフェッショナルを主体とした法人需要開拓を進める方針を示している。
基地局の数が増え、技術の進展が進めばそうした課題も解決され、スマートフォンでもミリ波の性能を有効活用できる可能性は高まってくるだろう。しかしながらそれまでは、使い勝手がいいとはいえないミリ波をいかに有効活用するかという、各社の試行錯誤が続くことになりそうだ。
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