世界を変える5G

5Gスマートフォンを安価に売るためのカギは? ミリ波対応が難しいのはなぜ?:5Gビジネスの神髄に迫る(1/2 ページ)

» 2020年04月09日 12時00分 公開
[佐野正弘,ITmedia]

 5Gを利用する上で欠かせない、5G対応スマートフォン。携帯電話大手3社も5Gのサービス開始に合わせて対応スマートフォンを相次いで投入している。スマートフォンを提供するメーカー各社は、5Gへの対応を進める上でどのような点で違いを打ち出そうとしているのかを、各社の発表内容から確認してみたい。

高額な5Gスマホ、値引き規制が日本での普及を阻む

 2020年3月に入り、携帯電話各社が相次いで5Gの商用サービス開始を発表。3月下旬から国内でも5Gサービスが本格的に開始したが、それに合わせる形で各社とも、5Gを利用するための料金プラン、そして5Gに対応するスマートフォンを発表している。

 各社のラインアップを見ると、NTTドコモとKDDI(au)が7機種、ソフトバンクが4機種の5Gスマートフォンを提供するようだ。それらのラインアップを見ると機能や性能が非常に高い、5Gらしいスマートフォンが豊富にそろえられた印象だが、よく見ると各社の戦略の違いが分かる、特徴的なポイントがある。

 1つは価格だ。現在、5Gのスマートフォンは非常に価格が高いものが多く、例えばドコモの5Gスマートフォンの価格をドコモオンラインショップで確認すると、サムスン電子製の「Galaxy S20 5G」は10万2960円(税込み、以下同)、シャープ製の「AQUOS R5G」は11万1672円、ソニーモバイルコミュニケーションズ製の「Xperia 1 II」は12万3552円と、いずれも10万円を超えている。

Xperia 1 II ソニーモバイルの5G対応スマートフォン「Xperia 1 II」。21:9比率の4K有機ELディスプレイや、カールツァイスのレンズを採用した高度なカメラ機能など充実した機能を備え、12万円超えとかなり高額になる

 従来ならそうした高額なスマートフォンでも、毎月の通信料を原資としてスマートフォンを大幅に値引いて販売するという販売手法により、安価で購入することができた。実際日本では4Gまで、そうした高額の端末購入補助によって新しい通信規格を採用したスマートフォンの販売が促進され、世界に先駆けて新しい通信方式への移行が進んできた経緯がある。

 だが5Gではそれが期待できなくなっている。理由は高額なスマートフォンの値引きが通信料の高止まりを招いているとして、行政が値引き規制に力を注ぐようになったことだ。

 その極め付きとなったのが2019年10月の電気通信事業法改正で、これによって通信料金と端末代を明確に分離する「分離プラン」の導入が義務化された。そのため携帯電話会社は、従来のようにスマートフォンを大幅に値引いて販売する道が完全に断たれてしまったのだ。

総務省 総務省が2018年から2020年にかけて実施していた「モバイル市場の競争環境に関する研究会」の第15回会合より。ここでの議論から、スマートフォンの値引きには非常に厳しい規制がかけられることなり、その方針は5Gでも変わらない

 しかも総務省は、2019年6月に公開した「モバイル市場の競争促進に向けた制度整備(案)」に、「端末の大幅な値引き等により事業者が利用者を誘引するモデルを2年をめどに事実上根絶する」と記すなど、その意思は非常に強い。5Gだからといって行政が大幅値引きを認める可能性は限りなく低いというのが現状だ。

 韓国では国を挙げて5Gの普及を促進するため、これまで禁止されてきたスマートフォンの大幅値引きをあえて解禁することで、値段が高い5Gスマートフォンの販売が大幅に伸び、普及拡大につながっているという。だが日本では国が全く逆の政策を取っているだけに、現状のままでは5Gスマートフォンの早期普及は期待できない。

安価な5Gスマホのカギはプロセッサ

 では日本で5Gのスマートフォンが普及する上で重要なカギを握るのは何かといえば、安価で購入しやすい5Gスマートフォンが増えることだ。実際、一連の発表内容を見ると、KDDIとソフトバンクは安価な5Gスマートフォンのラインアップをそろえることに力を注いでいるようで、中でもKDDIが販売するZTE製の「a1」やXiaomi製の「Mi10 Lite」、ソフトバンクが販売するOPPO製の「Reno3 5G」などは、他の5Gスマートフォンよりもかなり安い値段で販売される予定だという。

ZTE a1 KDDIが2020年7月以降の発売を予定している、ZTE製の「a1」。ハイエンドの5Gスマートフォンよりもかなり安価な価格で提供される予定だという

 なぜこれらの端末は5G対応にもかかわらず安いのかというと、理由はプロセッサにある。そもそも5G対応スマートフォンの価格が高い最大の要因は、これまで5Gに対応したプロセッサがハイエンドモデル向けのものに限られており、そもそもの調達価格が高かったためだ。

 例えば多くのスマートフォンメーカーが採用している「Snapdragon」シリーズを開発しているQualcommの場合、同社ではハイエンド向けの「Snapdragon 8xx」シリーズから5Gへの対応を進めてきた経緯がある。そうしたことから、「5G元年」となった2019年に投入されたプロセッサを搭載した5G対応スマートフォンは、全て「Snapdragon 855」を採用しており価格を下げるのが難しかったのだ。

ZTE a1 サムスン電子が2019年に海外で販売した5Gスマートフォン「Galaxy A90 5G」。5Gの低価格モデルという位置付けだったが、5G対応のためSnapdragon 855を採用していることもあって、販売当初の価格は749ユーロ(約9万円)と決して安いとはいえなかった

 しかし、Qualcommもより低価格の5Gスマートフォンを開発できるよう、ミドルクラスのスマートフォン向けプロセッサの開発を進めており、2019年末にはミドルハイクラス向けの5G対応プロセッサ「Snapdragon 765」「Snapdragon 765G」を発表している。実際、a1やReno3 5GなどはSnapdragon 765Gを採用しており、それが5G端末の低価格化に大きく貢献しているようだ。

Snapdragon Qualcommは2019年にミドルクラス向けのプロセッサ「7xx」シリーズの5G対応を進めており、2020年にはその1つとなる「Snapdragon 765」シリーズが登場。これを搭載したスマートフォンが今後市場に本格投入される

 現在このプロセッサを採用しているのは中国メーカーが中心だが、今後は他のメーカーにも採用の動きは広がるだろう。またQualcommもより下のクラス向けとなるプロセッサ「Snapdragon 6xx」シリーズの5G対応も進めていることを明らかにしていることから、2020年の後半頃からは安価な5Gスマートフォンが日本でも本格投入される可能性が高い。

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