現在のMVNOと、VMNOの違いは次の表の通りだ。現在のMVNOは、MNOのコアネットワークの一部機能を自前のデータセンターに作り、事業をしている。一方、VMNOは仮想化5Gコアネットワークに全て依存する。サービスの自由度という面では、MVNOは自前で音声サービスができなかったり、技術的に無理なことがあったりと自由度は低いが、VMNOは基本的にはホストMNOと同等のサービス自由度を有する。事業モデルとしては、MVNOは値段で勝負せざるを得ないことが多い。
一方、VMNOは各種業界に特化したソリューションプロバイダーとして、5Gをけん引していくようになるのではないか、と欧州委員会に提出されたペーパーで言及されているという。
なぜこのような違いが出てくるかは、接続形態が影響している。現在のMVNOの設備は下の図の緑の部分にある。日本のMVNOの場合、インターネットに出るゲートウェイの部分を自前で運用していることが多い。それ以外の設備はMNOに依存している。
恐らく数カ月後のうちには5GがMVNOでも始まる模様だが、初期の5Gでは接続形態が現在と大きく変わらない構成になると予想される。「MVNOは簡単に5Gを始められるが、できることも4Gとそれほど変わらないMVNOの5Gローンチになる」(佐々木氏)。
それが2025年くらいになると、3Gは停波し、純粋な5Gのコアネットワークができてスタンドアロンの5G(5G SA)になる。5Gのコアネットワークが、まだ残ってサービスを続けているLTEの基地局を従え、5Gの基地局がどんどん増えていく。ただ、こうしてコアネットワークが切り替わってしまうので、MVNOがこれまで作っていた設備は使えなくなる可能性が高い。「今のまま、何となく使えるということにはならないので、MVNOが考えなくてはいけない部分」(佐々木氏)も出てくる。
サービスレイヤー的に見てみよう。4Gまでのネットワーク構成は、無線、有線、光回線といった物理層の上にコアネットワークがあり、その上にインターネットやアプリケーションがある外部のネットワークがある。
MVNOはコアネットワークから外部のネットワークに出るゲートウェイから先しか保有していないので、MVNOが付けられる付加価値はサービスインスタンス層だけになる。なぜ他を保有しなかったかといえば、「1つはそこにそれほど付加価値がなかったから。もう1つの理由は、データリンク層、ネットワーク層も全て物理設備だったので不可分性が高かったこと。ここを切り分けてMVNOで運用するのが難しかった」(佐々木氏)ためだ。IIJは一部、フルMVNOという形で若干は保有しているが、それ以上になると難しいという。
これが5G SAになると、今まで物理設備だったところも仮想化されていく。「これまでは全国で物理的に置かれていた通信設備が、コンピューティングリソースの上で動くプロセスになっていく」(佐々木氏)。もちろん、基地局に物理的な設備は残るが、そこから先は仮想ネットワークに入っていき、仮想で自由にプログラムできるネットワークになっていく
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