仮想化が進むことで、これまで物理的に線でつながっていた巨大なクモの巣のようなネットワークだった部分が、一部は残るものの、コンピュータ上で仮想的に作られた回路になっていき、不可分性が低くなっていく。
そうすると、2つのタイプの仮想通信事業者が出てくると予想される。1つは、MNOの作った仮想基盤(下記図版の青枠部分)を借りて事業を行うタイプ。これは「ライトVMNO」と呼ばれている。もう1つは、仮想基盤を自前で作り、物理設備(下記図版の赤枠部分)だけをMNOから借りて事業を行うタイプで、そちらは「フルVMNO」と呼ばれる。
MVNO委員会は、5G時代の仮想通信事業者のコンセプトとして、この2つのモデルを提唱。ライトVMNOはオリジナルのVMNOのコンセプトに近いモデルで、MNOの5GコアネットワークをAPIで制御し、最終的に利用者が必要とするQoS(Quality of Service)を実現できるようなサービスを作る。フルVMNOの場合は、利用者が必要なQoSを実現できるだけでなく、一定のQoSのもとで複数キャリアのRAN(無線アクセスネットワーク)をまたぐような通信サービスも実現できる。
フルVMNOになれば、APIを使って自前の5GコアネットワークをライトVMNOに開放していくことも可能になるだろう。つまり、Virtual Mobile Network Enabler(VMNE)になり、ローカル5Gのネットワークに5Gコアネットワークを提供するLocal 5G Enablerとしての活躍も期待できる。
VMNOのビジネスモデルが登場すると、ライトVMNOは、MNOのコアネットワークの機能をAPIで開放することでサービス競争していくことができる。一方、フルVMNOはキャリアの無線設備を利用しながら仮想基盤は自前で運用し、MNOに依存しない独自のサービスを提供できる。場合によってはVMNEとしてネットワークの一部をライトVMNOに貸し出す。さらには、さまざまなネットワークをVMNOのコアが収容することで、複数のネットワークをまたいで統一したQoSのもとでサービスを提供すること(ヘテロジニアスネットワーク)も可能になる。
MVNO委員会はこのVMNO構想を、国内、国外へと提唱する活動をしている。佐々木氏も、広く賛同を得てVMNO構想を実現できるように、今後も議論や提言を行っていくと語っていた。
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