「ソフトバンクはコロナの影響下でも成長できる」 宮内社長が株主総会で宣言

» 2020年06月24日 18時05分 公開
[田中聡ITmedia]

 ソフトバンクが6月24日、第34回定時株主総会を開催した。今回は新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、株主の来場は自粛してもらい、オンラインでの開催となった。議長の宮内謙社長兼CEOを含む全役員がWeb会議システムから参加した。

ソフトバンク ソフトバンクの宮内謙社長兼CEO

 宮内氏は2019年の株主総会で「2019年度に(業績の)成長と高配当をどんなことがあっても達成すると約束した」ことに言及。この1年は「ドコモの値下げや楽天の参入など、競合環境が激変した」が、業績は過去最高益、株主還元でも10円の増配を実現し、「1年前の約束を実現できた」と胸を張る。

ソフトバンク 2019年度は2桁増益と10円増配を達成

 現在は新型コロナウイルスの影響で経済が深刻な打撃を受けたが、「コロナの影響下でも増益と増配をお約束する」と宮内氏は言い切る。「ソフトバンクは経済の混乱の中で確実に成長できる」と同氏が自信を見せるのには3つの理由があるという。

 1つが「スマートフォン戦略」だ。モバイル事業は「安定的に収益を生み続ける事業」(同氏)であり、その成長を支えているのがスマートフォンとなる。同社スマートフォンの累計契約数は2019年度で2400万件に達しており堅調に伸びている。特に効果を発揮しているのがソフトバンク(SoftBank)、Y!mobile、LINEモバイルのマルチブランド戦略だ。

ソフトバンク 3ブランドのスマートフォン契約数

 「ライフスタイルの変化でニーズが変わったお客さんには、グループ内の別ブランドを勧めることで他社への乗り換えを防げるのが、マルチブランドの大きな戦略。今後も全ブランドで契約数を拡大していく」と宮内氏は話す。

 例えばソフトバンクユーザーでもう少し通信費を抑えたい人にはY!mobileやLINEモバイルを勧め、LINEモバイルユーザーでもっとたくさんのデータ容量を使いたければY!mobileやソフトバンクを勧めるという具合になる。今後もスマートフォンが通信事業をけん引するのは間違いなく、「5Gでスマホの可能性がさらに広がる」と宮内氏は期待を寄せた。

ソフトバンク 3ブランドでさまざまなニーズに対応することで、他社への流出を防ぐ

 2つ目が企業のデジタル化需要だ。新型コロナの影響でニーズの増したクラウドサービスが好調で、リモートアクセスサービスの新規契約数は2020年3〜4月で前年の18倍、3〜4月のWeb会議システムの新規契約は1〜2月に比べて41倍に伸びているという。

 宮内氏は「日本企業のデジタル化は道半ばだが、コロナウイルスの影響で企業の意識は大きく変わっている。直近の調査では、6割の人がコロナ収束後もテレワークを継続したいと答えている」と話し、アフターコロナでも同社が培ってきた法人ビジネスが強みになることを強調した。

ソフトバンク ソフトバンクは企業のデジタル化をサポートするソリューションを100種類以上提供している

 5Gの分野でもパートナー企業と実証実験を進めており、「5Gが本格稼働すれば企業向けソリューションも広がる。今後は次々と実用化の話ができるようになると期待している」と宮内氏は話す。

ソフトバンク 5Gによって法人向けサービスも拡張させる

 3つ目がeコマース。国内のeコマース市場は年率9%で成長を続けており、2019年度は「PayPayモール」や「PayPayフリマ」の開始、ヤフーの「ZOZOTOWN」買収などECサービスも強化。在宅期間が長引いたことで影響で、PayPayモールとYahoo!ショッピングの2020年4月の取扱高は、前年同月比で1.4倍に伸びた。「一時的な特需とも考えられるが、最近の調査では、これまでオンラインショップをあまり利用していなかったシニアの利用率が上がっている。eコマースを生活に浸透させる大きなきっかけになったのでは」と宮内氏は期待を寄せる。

ソフトバンク ECサービスの取扱高が伸びている

 キャッシュレス決済については「PayPayが圧倒的ナンバーワンのポジションだ」とアピール。PayPayは「今週中に3000万ユーザーを突破する」見込みだという。

 株主からの質問はインターネットから受け付け、宮内氏が読み上げて回答する形となった。

 「通信事業をベースにヤフーと新規事業を拡大するとのことだが、収益を上げて他社を凌駕(りょうが)できるのか。コロナの影響は?」という質問に対しては「コロナ渦でも、Beyond Carrier(キャリアを超えた事業展開)を推進することで、成長していく」と答える。「ソフトバンクの強みは、ヤフーというインターネットサービスを持っていること。(ヤフーが)LINEとの統合によってアジアから世界をリードするAIテックカンパニーを実現することで、将来的に大きな収益を実現できる」

 PayPayについても、ユーザーが増えている中で現在は投資額が大きく上回っている状況だが、今後は「決済手数料や広告、スマホを利用した金融事業に進出していくことで、大きな収益を見込めると期待している」と述べた。

 「アリババのジャック・マー氏がソフトバンクグループの取締役を退任したが、PayPayとアリペイの提携が退歩することはないのか」という質問も出た。宮内氏は「アリババとは非常に緊密な協力関係にある。SBクラウドはアリババと(ソフトバンク)のジョイントベンチャー。PayPayも、(インドの)Paytmとやっているが、Paytmの40%の株を持っているのがアリババなので、いい関係にある。緊密な協力関係が後退することはない」とした。

 通信事業に関しては「ソフトバンクグループがソフトバンクの株式を売却するという話が出ているが影響はあるのか?」という質問が挙がった。これに対しては宮内氏は「ソフトバンクグループがソフトバンクの株式を売却したとしても、戦略や業績への影響はない。事業運営は独立した意思決定を行っており、今後も変えることはない」と答えた。

 「5Gの通信距離が短いが採算がとれるのか」という質問に対しては「採算は取れる」と同氏。「ソフトバンクは23万箇所のアンテナ基地局を保有している。他社に比べても多い。小型アンテナなどで対応して十分に採算が取れると思っている」とした。

ソフトバンク ソフトバンク戦略、法人向けソリューション、ECサービス、決済サービスに5Gを掛け合わせた成長戦略を描く

 「役員報酬が高いのでは」「株価低迷もあり、孫氏と宮内氏の退任を求める」といった厳しい質問を宮内氏が自ら読み上げた。役員報酬については「上場企業の中でも配当性向は極めて高いと自負している。役員報酬は業績連動報酬の割合が高いので結果として高いが、成長に欠かせないものと考える」とコメント。株価低迷の指摘については「真摯(しんし)に受け取り、株価が上がるよう努力していきたい」と述べた。

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