ソフトバンク宮内社長が株主総会で語った戦略 “通信障害での発言”を追及する声も(1/2 ページ)

» 2019年06月25日 12時22分 公開
[田中聡ITmedia]

 ソフトバンクが6月24日、第33回株主総会を開催。同社が2018年12月に東証1部に株式を上場してから初の株主総会となり、宮内謙社長兼CEOが戦略を語った。

スマホには無限の可能性がある

 宮内氏は、通信事業を成長させ、新領域となる非通信事業を拡大することを中長期戦略に掲げる。通信事業は、2006年にボーダフォンジャパンを買収してから契約数は約3倍に、営業利益は約10倍に伸びたことを説明した。

ソフトバンク株主総会
ソフトバンク株主総会 モバイルの契約数とソフトバンクの営業利益は堅調に伸びている
ソフトバンク株主総会 ソフトバンクの宮内謙社長兼CEO

 一方、「スマートフォンは成熟して市場が飽和するのではという声もあるが、まだスタートしたばかり。スマホには無限の可能性がある」と宮内氏。それはハードウェアの進化というよりは、「スマホでできること」が今後さらに拡張し、ユーザーの日常生活をさらに豊かなものにすることを指す。

 その一例として、EC、タクシーの配車、ホテルの検索、資産運用、シェアオフィス、決済のサービスを挙げ、いずれもソフトバンクがサービスを提供している分野だ。総務省の2018年12月時点の調査によると、スマートフォンを持たないユーザーは、個人でまだ35%いるが、いずれ到来するであろう「1億総スマホ時代」では、「スマホを起点にあらゆるサービスが一元化し、スマホがお財布以上に重要になる時代がこれから来る」と宮内氏は話す。

5G、データ、AIが新領域の柱に

 新領域では「5G」「データ」「AI」の3つを柱に挙げる。

ソフトバンク株主総会 新領域では5G、データ、AIを軸にする

 ソフトバンクは全国に約23万箇所の基地局を抱えており、これを5Gでも活用していく。宮内氏は「高密度な基地局網を作れるので、ソフトバンクの5Gは圧倒的に強い。今はどこに行っても4Gだが、3〜4年後には5Gになるのでは」と自信を見せる。ソフトバンクは2019年9月までに5Gの実証実験を行い、2020年3月に商用サービスを開始する予定。「対応する端末なども準備している段階」と同氏。

ソフトバンク株主総会 全国23万箇所の基地局を5Gでも活用していく

 データは、IoTの世界でさまざまなモノにセンサーが付いて膨大なデータが収集可能になる「ビッグデータ」のことを指す。そのカギを握るのが、100以上のサービスを提供している「ヤフー」で、ソフトバンクがヤフーを子会社化した狙いが生きるという。「ビッグデータの世界でもナンバーワンになりたい」と宮内氏は意気込む。特に5Gではトラフィック量が爆発的に増加するため、いかにデータを有効活用するかが重要になる、と同氏はにらむ。

 こうして収集したデータを分析、活用するのに重要な役割を果たすのがAIだ。ソフトバンクグループはAI技術を持つ企業に積極投資しており、現在は特に「移動」「決済」の分野を重視している。

 トヨタ自動車とはMONET Technologies(モネ・テクノロジーズ)を設立し、地域密着型のオンデマンド交通サービスや、企業向けのシャトルバスを提供する。宮内氏は自動運転にも着目し、「コンビニやオフィス、病院が家の前まで移動してくるといった、究極的な移動のサービスが可能になる」と期待を寄せる。MaaS(Mobility as a Service)市場は、2017年の600億円から2030年には6兆円にまで伸びるという観測もあり、「大きなマーケットチャンスがある」と同氏はみる。

ソフトバンク株主総会 少子高齢化が進む地方は、交通手段が不足しているという課題を抱えている
ソフトバンク株主総会 MONETでは、究極の移動サービスを模索する
ソフトバンク株主総会 国内MaaS市場は2030年に約6兆円に達するという観測もある

 決済分野では「PayPay」がおなじみで、既にユーザー数は800万人を超えた。国内のコード決済市場は、2019年の0.6兆円から2023年には8兆円にまで伸びるという観測があることから、ここにも積極的に投資していく。

ソフトバンク株主総会 キャンペーン効果もあり、好調にユーザー数を伸ばしている「PayPay」
ソフトバンク株主総会 国内コード決済市場は、2023年に約8兆円に達するという観測がある
ソフトバンク株主総会 「1億総スマホ」と「産業のデジタル化」を目指す
ソフトバンク株主総会 宮内氏が「毎日見ている」という図。「AI、ビッグデータ、5Gを使って、新しいビジネスモデルを作りたい」と意気込む

PayPayやHuaweiの問題について

 株主からの質問では、セキュリティ面が心配でコード決済を使っていないとの声が挙がった。宮内氏は「QRコード自体は、セキュリティ面で大きな心配はないが、(PayPayを)始めたときに、クレジットカードをできる限り簡単に登録できるようにしたところ、悪用されるという問題が起きた」と振り返る。その際の問題発生率は約0.1%だったが、クレジットカードの登録に3Dセキュアを導入したところ、問題発生率は0.00数%まで減ったという。「これからもセキュリティ面での強化を図っていきたい」とし、現在は安心して使えることを強調した。

 米国からの制裁により、基地局やスマートフォンの採用に影響が出ているHuaweiについては、「5Gのネットワークは、EricssonとNokiaを使うことを決定した。現在、4Gの一部ネットワークではHuaweiの設備を使っている。非常に優秀なネットワーク機器だと思っているが、政治的な問題が絡むので、Huaweiさんの問題を私が言及するのが難しい」と宮内氏は言葉を選んだ。スマートフォンについては「現在、GoogleのOSやサービスを提供できるかにかかっているので、Huawei端末をどう提供するかについては保留している」と述べた。

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