ソフトバンクが6月24日、第33回株主総会を開催。同社が2018年12月に東証1部に株式を上場してから初の株主総会となり、宮内謙社長兼CEOが戦略を語った。
宮内氏は、通信事業を成長させ、新領域となる非通信事業を拡大することを中長期戦略に掲げる。通信事業は、2006年にボーダフォンジャパンを買収してから契約数は約3倍に、営業利益は約10倍に伸びたことを説明した。
一方、「スマートフォンは成熟して市場が飽和するのではという声もあるが、まだスタートしたばかり。スマホには無限の可能性がある」と宮内氏。それはハードウェアの進化というよりは、「スマホでできること」が今後さらに拡張し、ユーザーの日常生活をさらに豊かなものにすることを指す。
その一例として、EC、タクシーの配車、ホテルの検索、資産運用、シェアオフィス、決済のサービスを挙げ、いずれもソフトバンクがサービスを提供している分野だ。総務省の2018年12月時点の調査によると、スマートフォンを持たないユーザーは、個人でまだ35%いるが、いずれ到来するであろう「1億総スマホ時代」では、「スマホを起点にあらゆるサービスが一元化し、スマホがお財布以上に重要になる時代がこれから来る」と宮内氏は話す。
新領域では「5G」「データ」「AI」の3つを柱に挙げる。
ソフトバンクは全国に約23万箇所の基地局を抱えており、これを5Gでも活用していく。宮内氏は「高密度な基地局網を作れるので、ソフトバンクの5Gは圧倒的に強い。今はどこに行っても4Gだが、3〜4年後には5Gになるのでは」と自信を見せる。ソフトバンクは2019年9月までに5Gの実証実験を行い、2020年3月に商用サービスを開始する予定。「対応する端末なども準備している段階」と同氏。
データは、IoTの世界でさまざまなモノにセンサーが付いて膨大なデータが収集可能になる「ビッグデータ」のことを指す。そのカギを握るのが、100以上のサービスを提供している「ヤフー」で、ソフトバンクがヤフーを子会社化した狙いが生きるという。「ビッグデータの世界でもナンバーワンになりたい」と宮内氏は意気込む。特に5Gではトラフィック量が爆発的に増加するため、いかにデータを有効活用するかが重要になる、と同氏はにらむ。
こうして収集したデータを分析、活用するのに重要な役割を果たすのがAIだ。ソフトバンクグループはAI技術を持つ企業に積極投資しており、現在は特に「移動」「決済」の分野を重視している。
トヨタ自動車とはMONET Technologies(モネ・テクノロジーズ)を設立し、地域密着型のオンデマンド交通サービスや、企業向けのシャトルバスを提供する。宮内氏は自動運転にも着目し、「コンビニやオフィス、病院が家の前まで移動してくるといった、究極的な移動のサービスが可能になる」と期待を寄せる。MaaS(Mobility as a Service)市場は、2017年の600億円から2030年には6兆円にまで伸びるという観測もあり、「大きなマーケットチャンスがある」と同氏はみる。
決済分野では「PayPay」がおなじみで、既にユーザー数は800万人を超えた。国内のコード決済市場は、2019年の0.6兆円から2023年には8兆円にまで伸びるという観測があることから、ここにも積極的に投資していく。
株主からの質問では、セキュリティ面が心配でコード決済を使っていないとの声が挙がった。宮内氏は「QRコード自体は、セキュリティ面で大きな心配はないが、(PayPayを)始めたときに、クレジットカードをできる限り簡単に登録できるようにしたところ、悪用されるという問題が起きた」と振り返る。その際の問題発生率は約0.1%だったが、クレジットカードの登録に3Dセキュアを導入したところ、問題発生率は0.00数%まで減ったという。「これからもセキュリティ面での強化を図っていきたい」とし、現在は安心して使えることを強調した。
米国からの制裁により、基地局やスマートフォンの採用に影響が出ているHuaweiについては、「5Gのネットワークは、EricssonとNokiaを使うことを決定した。現在、4Gの一部ネットワークではHuaweiの設備を使っている。非常に優秀なネットワーク機器だと思っているが、政治的な問題が絡むので、Huaweiさんの問題を私が言及するのが難しい」と宮内氏は言葉を選んだ。スマートフォンについては「現在、GoogleのOSやサービスを提供できるかにかかっているので、Huawei端末をどう提供するかについては保留している」と述べた。
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