新型コロナウイルス感染症の拡大を防ぐため、大手キャリアは3月頃から順次、キャリアショップの営業時間の短縮、一部店舗の臨時休業や店頭での受付業務の制限といった対策を講じてきました。
新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく「緊急事態宣言」が解除されると、これらの措置は順次解除され、現在はおおむね「通常営業」の体制に戻っています。しかし、いわゆる「三密」を避ける観点から、来店時の事前予約やWebでの手続きを従来以上に推奨する状況は続いています。
「外出自粛を求められている中、携帯電話を買いに出かける人は減るでしょ?」「来客が減るのなら、ショップを完全に休業しても問題ないのでは?」と考えた人もいるでしょう。しかし、キャリアショップを簡単に“休業”するわけにはいかない事情もあったのです。
今回の元ベテラン店員が教える「そこんとこ」は、3〜6月にかけて行われたキャリアショップの「時短営業」「臨時休業」や「受付業務の制限」がもたらした影響を見ていきます。
キャリアショップを安易に休業できない理由の1つとして、携帯電話が生活に欠かせない“インフラ”の1つとなったことが挙げられます。
以前であれば、一家に少なくとも1回線は固定電話を導入していたものですが、現在では固定電話を導入していない家庭も珍しくありません。唯一の連絡手段が携帯電話という人も多い状態です。さらにいえば、携帯電話回線に付帯するサービスとして、固定ブロードバンドサービス(光回線やCATV回線)やエネルギーサービス(電気やガスの提供)を手がけているキャリアもあります。
「携帯電話が壊れてしまった」という相談にとどまらず、「光インターネットがつながらない」「エネルギーについて相談したい」といったインフラに関する困りごとを受け付ける窓口として、休業という選択肢を安易に取れない状況にあるのです。
「Webや電話の窓口を用意すればいい」という意見もありますが、全てのユーザーがWebや電話の窓口を「活用」できると思ったら大間違いです。タッチポイントとして、実店舗がどうしても必要なユーザーが存在することは念頭に置いておく必要があります。
とはいえ、新型コロナウイルスが猛威を振るう中で、来客の対応に当たるスタッフに不安がないかというと、そんなこともありません。
人材派遣会社からの「派遣スタッフ」を含めて、キャリアショップでは非正規雇用のスタッフも多く働いています。非正規雇用スタッフの給与は、原則として時給制となっているため、店舗の時短営業や臨時休業によって給与が大きく減ってしまうという問題があります。
ショップを運営する代理店の正規雇用スタッフなら大丈夫かといえばそうでもありません。正規雇用スタッフでも、給料の算定方法によっては手取額が大幅に減ってしまう可能性があります。
不安は給与に限りません。来客から新型コロナウイルスが「うつってしまう」リスクを排除できません。治療方法が確立している感染症ならともかく、まだそうでない状況で感染してしまったら……と思うと、「心配するな」という方が難しいです。
筆者の知人にはかつての同僚で、現在も携帯電話販売の最前線に立っている人は多くいます。3月から現在に至るまで、ショップの時短営業、受付業務の制限や臨時休業についてさまざまな話を聞き、時には相談に乗ったこともあります。
そこで、新型コロナウイルスの感染拡大を防止するためにキャリアが講じた措置について、キャリアショップのスタッフの“生の声”をいくつか紹介したいと思います。
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