「どんなときもWiFi」は何が問題だったのか? サポートの側面から考える(1/2 ページ)

» 2020年08月28日 15時45分 公開
[田中聡ITmedia]

 グッド・ラックが、モバイルデータ通信サービス「どんなときもWiFi」の無制限プランを2020年10月31日に終了する。

 どんなときもWiFiは、複数キャリアに接続できるクラウドSIMの仕組みを利用した通信サービス。データ通信が「無制限で使い放題」をうたっていたが、2020年2月以降に通信障害が発生し、4月には新規受付を停止した。6月19日には総務省がグッド・ラックに対して、電気通信事業法の順守を徹底することなどを求める行政指導を行った。

どんなときもWiFi サービス開始当初は「無制限」をウリにしていた「どんなときもWiFi」

 現在のどんなときもWiFiユーザーに対しては代替プランを提供しているが、その大半は「モバレコAir」「SoftBank 光」「Broad WiMAX」など他のサービスで、どんなときもWiFiはモバレコAirとのセット、あるいは数量限定の30GBプランのみ。サービスが完全に終了するわけではないが、既存ユーザーの選択肢の1つとして残るのみとなった。

どんなときもWiFi グッド・ラックが案内している代替プラン

クラウドSIMでの無制限プランは難しい

 どんなときもWiFiは、なぜここまでのサービス縮小を余儀なくされたのか? クッド・ラックは無制限終了の理由について「事業の採算上、継続が不可能だったため」と説明しているが、これは当然と言えば当然のこと。

 クラウドSIMでは、各社の物理SIMを挿した「SIMバンク」と呼ばれる機器からクラウドSIMサーバを介して、仮想化されたSIMのデータを端末がダウンロードすることで通信可能になる。ユーザーのトラフィックを常時モニタリングしつつ、そのトラフィックをカバーできるだけのSIMを調達できていれば、無制限は可能かもしれないが、当然ながらSIMの数には限度があるし、必要な分量を調達できるとは限らない。

 実際、どんなときもWiFiでは3月にはSIMカードの提供が止まったこと、通信に必要なSIMカードが不足したことが原因で、通信障害が発生している。

 グッド・ラックは7月16日に提出した「総務省による行政指導に対する再発防止措置報告のお知らせ(※PDF)」にて、通信障害の原因は「クラウドSIMの仕組みやキャリアSIMの契約状況を把握していなかった」ためだと説明しており、同社の体制に問題があったことが分かる。

どんなときもWiFi キャリアからSIMを調達している代理店の兼松コミュニケーションズから、サービス設計やSIM調達に関して把握すべき情報が開示されていなかったという

 無制限でサービスを提供すると、TBを上回る通信をするユーザーもおり、上位5%のユーザーが総容量の20%を占める状態となる。だからといって通信を制御すると無制限ではなくなり、「誠実ではなくなる」というのが同社の考えだ(詳細は8月24日の告知(※PDF)を参照)。

どんなときもWiFi 無制限でのサービス提供は不可能との見解を示した

 しかし誠実なサービスを目指すのなら、通信障害が発生した後の対応にこそ目を向けるべきだった。ITmedia Mobileでは2人のどんなときもWiFiユーザー(Aさん、Bさんとする)に話を聞いたが、サポートに問題があったことが、あらためて浮き彫りになった。

ユーザーによって異なる「解約料免除」の扱い

 グッド・ラックでは4月以降も障害が継続している契約者に対して、3月と4月の基本料金を返金する他、解約金を免除した上で解約可能としていた。その対象は4月1日0時以降に「1週間で2回以上、30分以上連続で低速(384kbps以下)になった」「3時間以上の低速(384kbps以下)が一度でも発生した」ユーザーだった。

 しかしAさんは、実際に上記の障害が発生していたにもかかわらず、解約金免除は対象外となり、問い合わせフォームから連絡をしても、個別の回答はしない旨の返信があったという。結局、月額料金を払って契約を継続することにした。

どんなときもWiFi Aさんが解約料の免除を求めた問い合わせに対する返信。個別の回答はできないとのことだ

25GBプランへ強制移行も、その理由が不明瞭

 4月3日には一部ユーザーへ25GB制限の無償プランへの移行を案内したが、その制限を受ける具体的な基準を示さず、問い合わせにも一律で回答しなかった。この件については総務省から行政指導を受け、再発防止のお知らせで、25GB無償プランに移行させる基準は「過去の利用歴から月間200GB以上の利用が見込まれるユーザー」と説明している。

どんなときもWiFi 一部のユーザーは25GBプランへ強制移行させられた。納得できなければ無料で解約できる

 25GB無償プランはBさんが対象となったが、Aさんは対象外だった。ただ、Bさんは「月間200GBも使っていないし、その見込みもない」そうで、なぜ対象となったのかは分からなかったという。この件についてBさんが当時グッド・ラックに問い合わせても返答がなく、電話もつながらない状態だった。25GBの上限ができてしまったが、無料なのでBさんはそのまま使うことにした。

 Aさんは容量無制限プランを継続できるものの、月額料金は発生したまま。通信品質は7月頃にようやく改善されて数Mbpsは出るようになったが、「おそらくユーザーが減ったからではないか」とみている。それでも「契約当初は30Mbpsほど出ていた」ので、現在も通信品質が完全に戻ったとは言いがたい。通信速度が低下したままなら無制限で使う意味はないし、これなら25GB無償プランの方が、まだお得に思えてくる。

 Aさんは初期の解約料無償にも、25GB無償化にも該当せず、その根拠も不明瞭で問い合わせにも対応してもらえず、結果として“外れくじ”を引かされた形になった。

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