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コロナ禍でリアルからデジタルへ劇的に加速 「PayPal」好調の理由を聞くモバイル決済の裏側を聞く(1/2 ページ)

» 2020年10月07日 06時00分 公開
[小山安博ITmedia]

 新型コロナウイルスの影響はさまざまな業界で拡大しており、売り上げの減少にあえぐ業界も多い。そうした中で、伸びているのがオンラインショッピングだ。コロナ禍で外出を控えた結果、オンラインでの買い物が増える結果につながった、それに伴ってオンラインの決済サービスも拡大している。

 特にグローバルで事業を展開する「PayPal」はその影響を強く受けており、2020年第2四半期(4〜6月)の決済ボリュームは為替影響を含んで前年同期比30%増の2220億ドル、売上高は同25%増の52億6000万ドルだった。こうした新型コロナの影響を始め、「ニューノーマル」の時代におけるPayPalの戦略について、同社のインターナショナルマーケット担当シニアバイスプレジデントのCameron McLean氏に聞いた。

PayPal 日本ではオンラインの決済サービスを提供している「PayPal」。クレジットカード、デビットカード、銀行口座と連携して利用する

新規アカウント数が前年比で約140%増加

PayPal PayPal インターナショナルマーケット担当シニアバイスプレジデントのCameron McLean氏

―― まずはグローバルでの状況について、このコロナ禍でPayPalが伸びた理由は。

McLean氏 新型コロナウイルス感染症は、私たちの将来に対する考え方を根本的に変えました。大きな変化の1つは、リアルからデジタルへの劇的な加速です。デジタル決済が単に「便利な機能」から「欠かせないサービス」へと進化しました。

 PayPalは今、新規顧客、取扱高、顧客のエンゲージメントの点で創業以来、最も力強い伸びを見ています。例として、2020年第2四半期(4〜6月)中に新規アカウント数は2130万件増加しました。前年比で約140%増になります。この数字は、2016年にわれわれが1年間に獲得した新規アカウント数を上回ります。

 さらに、第2四半期には約170万件の新たな加盟店を獲得しました。この数字は通常の四半期の約3倍に相当し、コロナ禍において、加盟店のビジネスモデルがリアル店舗からEコマースに移行していることを示しています。

 同四半期には取扱高が2220憶ドルに達しましたが、PayPalが2015年にeBayから独立して以降、最も高い伸びになります。さらに売上高は52憶6000万ドルでしたが、四半期の売上高が50憶ドルを超えるのは創業以来初になります。

 越境ビジネスも堅調で、同四半期の取扱高は24%増の約370憶ドルに達しました。アジアと西ヨーロッパの主要なマーケットが、新型コロナウイルスの影響から(同四半期時点では)回復傾向にあったことが要因として挙げられます。

―― 特に伸びている分野は。

McLean氏 新型コロナウイルス感染症の影響のもと、世界中であらゆる物を購入する手段としてデジタル決済が拡大していることから、感染症は明らかに人々の決済方法に変化をもたらしました。われわれのデータによれば、コロナ禍において日本で最も売り上げが伸びている分野は「栄養補助食品」「楽器」「書籍」です。米国では、「園芸用品」「ベビー用品」「ペット用品」。どれも巣ごもり消費の特徴としてみることができます。

 前述した第2四半期に新規でPayPalのアカウントを開設した約170万件の加盟店のうちの多くは中小企業です。さらに、ロックダウン(都市封鎖)中に新たな年齢層がわれわれのサービスを使い始めています。2020年の3〜4月で、われわれが「シルバーテック」と呼ぶ、50代以上の年齢層が最も急成長したセグメントでした。

―― オンラインだけでなく、リアル店舗での動向はどうか。例えば宅配やテークアウトが伸びているか。

McLean氏 消費者も加盟店も、オンラインとリアルのショッピング体験全体でデジタル決済に急速にシフトしています。例えば、小売業者はリアルの店舗を再開させる際に、従業員と顧客双方の安全性と健康を確保するため、非接触の支払い方法を導入することが重要になります。PayPalでは現在、店舗内の非接触型の決済手段導入を優先課題として取り組んでいます。

 実際に消費者が支払いを行う際に現金やその他の決済手段で、物理的にお金や端末を触りたくないと回答している調査が多くあります。PayPalは、店舗での決済、オンライン購入後に店頭での受け取り、事前注文後の後払い、宅配などあらゆる形態のオムニチャネルコマースで存在感を高めるべく大幅な投資を行っています。

 われわれの目標は、PayPalの決済サービスを消費者のニーズに合った形で拡大することです。そうすることで、消費者が宅配やテークアウトのどちらを選択するかにかかわらず、日常的に使っていただけるような決済プラットフォームとして成長できると考えています。

海外では非接触型決済手段の導入が加速

―― 米国やグローバルでのPayPalのリアル店舗導入はどういった領域・規模が多いか。

McLean氏 消費者と加盟店の双方がデジタルにシフトしている今、PayPalの商品とサービスに対する需要は世界中で劇的に増加しています。それに応えるべく、幾つもの取り組みを行っており、このビジネス機会をしっかりと捉えるべく、店舗内の非接触型決済手段の導入を加速させています。

 例えば、iZettleの非接触型カード読み取り端末の導入、Google PayとSamsung Payとの連携に加えて、小規模ビジネス向けに世界28カ国でQRコード機能を発表しました。米国とヨーロッパでは、大手小売業者とも協力して、彼らの店舗にてQRコード決済が利用できるよう2020年後半にかけて計画を進めています。

 さらには、米ドラッグストアチェーンのCVSとも連携し、レジでPayPalと(個人間送金アプリ)VenmoのQRコード決済を利用できるように進めています。年末までに、8200店舗への全国展開を完了する予定です。私どもの加盟店と個人のお客さま双方はPayPalのサービスが店頭でも拡大することを望んでおり、そのニーズに応えることができるように努めていきます。

 加えて、PayPalとVenmo両方のオンライン決済サービスでも、機能の拡張を図っていきます。請求書支払い、サブスクリプションやポイントプログラムの管理、(価格比較やクーポン情報提供などの)Honeyのショッピングツール、新しい形式のクレジットおよび予算管理ツールなどの追加機能を導入する予定です。

 PayPalは世界中で決済プラットフォームの拡大を続けています。最近では、東南アジアにおいてモバイルコマースのリーダーであり、1億7千万人のユーザーを持つGojekと重要なパートナーシップ契約を締結しました。

 ブラジルとメキシコでは、Mercado PagoのオンラインサイトでPayPalを利用できる他、最近ではMercadoLibreの越境ショッピングでも使えるようになりました。中国では、GoPayのプラットフォームを統合し、UnionPayや他の主要なプレイヤーとパートナーを組むことで、中国でのビジネスも引き続き構築していきます。

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