こうした撮影機能を支えているのが、iPhone 12シリーズの頭脳ともいえる「A14 Bionic」だ。機械学習の処理能力が大きく底上げされているが、CPUやGPUのスペックも、先代の「A13 Bionic」から上がっていることが分かる。以下は、Geekbench 5でのベンチマークスコア。iPhone 11のA13 Bionicはシングルコアスコアが1334、マルチコアスコアが3416なのに対し、iPhone 12、12 Proはシングルコアスコアが1596、マルチコアスコアが4044と処理能力が上がっている。
GPUスコアも同様で、iPhone 11が7489なのに対し、iPhone 12、12 Proは9384と、大きなジャンプアップはないが、着実にスペックを上げていることが分かる。A14 Bionicは、発表時にあまりCPUやGPUの性能が強調されなかったが、どちらかというと、Neural Engineの性能向上に重きが置かれているようだ。ちなみに、Geekbench 5上で表示されたメモリは、iPhone 12 Proが6GBだったのに対し、iPhone 12は4GBと差があった。恐らくカメラ、特に動画撮影を考慮しての違いだと思われるが、マルチタスクの動作にも差分が出てくるかもしれない。
新機能として搭載された、「MagSafe for iPhone」にも可能性を感じる。対応するケースやチャージャーを装着すると、画面上にMagSafeであることを示すリングが現れる。ワイヤレスチャージは便利な反面、平置きタイプの場合、置く場所がズレてしまって充電されていないといった失敗がある。筆者はベッドサイドにチャージャーを置いているが、朝起きて充電されていないといったことが何度かあった。MagSafeは磁力でパチッと固定できるため、そうした失敗がなくなる。
磁力はそこそこ強力で、この機能を利用したサードパーティー製のアクセサリーにも期待ができそうだ。チャージャー側のコードを持って、iPhone 12 Pro本体を持ち上げることもできたため、ジンバルのようなアクセサリーにも応用ができるかもしれない(外れて落下してしまうのが、ちょっと怖いが)。できれば、Apple WatchやAirPodsなどをチャージするリバースワイヤレスチャージにも対応してほしかったが、他社とは違うアプローチでワイヤレスチャージを進化させたのは面白い。
5Gも大きな特徴で、iPhone 12シリーズの通信機能は全機種共通。iPhone 12、12 Proのどちらも、5Gに対応している。速度は環境によってまちまちだが、速いときには1Gbpsに近い数値が出ることもある。iPhone 12シリーズには、5G接続時にFaceTimeやストリーミング動画の画質を上げる設定が用意されているが、5Gのメリットを体感する意味でも、これはオンにしておいた方がいいだろう。ただし、契約している料金プランとの相談も必要になる。KDDIは、定額プラン加入時に自動でこれをオンにする仕組みを用意しているようだが、他2社が追随するかは要注目だ。
5Gに初めて対応したiPhone 12シリーズだが、その高速・大容量通信を生かす機能をうまく盛り込んできた印象を受ける。例えば、動画のDolby Visionによる4K撮影は、30fpsで1分につき190MB、60fpsでは440MBに達するという。このデータサイズをモバイル環境で扱おうと思ったら、やはり5Gに対応していた方がいい。iPhone 12の解像度を上げてきたのも、5Gによる高画質化を見越してのことだろう。このiPhone 12シリーズをフルに生かせるよう、キャリア側が5Gのエリアをもっと拡大することにも期待したい。
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