5Gが創出する新ビジネス

NTT東日本に聞く、ローカル5Gの取り組み 地方創生に向け産学連携で自治体をサポート5Gビジネスの神髄に迫る(1/2 ページ)

» 2020年10月22日 06時00分 公開
[佐野正弘ITmedia]

 ローカル5Gにはさまざまな事業者が参入しているが、現在のところ規模の面で最大手といえるのはNTT東日本ではないだろうか。同社はグループに携帯大手の一角を占めるNTTドコモを持つが、自らローカル5Gで直接無線通信を直接手掛ける理由はどこにあるのだろうか。同社でローカル5Gのビジネスに関わる3人に話を聞いた。

NTT東日本 NTT東日本の野間氏と門野氏(ローカル5Gオープンラボ前にて)

産学連携でローカル5Gに取り組む

NTT東日本 NTT東日本の渡辺氏

 固定通信のイメージが強いNTT東日本だが、ビジネス開発本部 第三部門 IoTサービス推進担当部長の渡辺憲一氏によると、実はWi-Fiを用いた無線通信は以前から手掛けているとのこと。実際、オフィスや店舗などに向けWi-Fi環境を整備する「ギガらくWi-Fi」など、Wi-Fiを活用したソリューションには現在も力を入れており、日本のWi-Fi普及にも大きく貢献してきたという。

 それゆえ同社にとってローカル5Gは、企業ネットワークのエンドポイントとして利用する無線通信ソリューションの1つに位置付けられる。ライセンスバンドを使ってWi-Fiよりも高い品質を得られるローカル5Gもメニューの1つとして提供できるよう、取り組みを進めているとのことだ。

 ただ、ローカル5Gは新しい無線通信方式ということもあり、実際の取り組みにあたっては5G研究の第一人者であるという東京大学の中尾彰宏氏に協力を得て、中尾氏の知見を得ながら共同で取り組んでいる。実際、NTT東日本では東京大学と共同で「ローカル5Gラボ」を設立するなど、産学連携でローカル5Gの活用に向けた実証などを進めているという。

NTT東日本 2020年7月に東京大学と共同で「ローカル5Gラボ」を設立

 NTT東日本では既に、100社以上の企業などとローカル5Gの活用について議論を重ねているという。渡辺氏によると、同社とローカル5Gに向けて取り組んでいる企業は製造業はもちろんのこと、物流や都市開発、農業など多岐にわたっており、「本当にさまざまで、どの業種が多いとは言いにくい」とのこと。幅広い業種の企業が関心を抱いているようだ。

 そうした中でも現在は、5Gの高速大容量を生かした高品質の映像伝送に関するニーズが高いというが、ビジネス開発本部 第三部門 IoTサービス推進担当課長の野間仁司氏によると、単に映像を伝送して見るというのではなく、収集した映像データをAIなどを活用して分析し、それを農業であれば収穫予測、物流であれば作業員の動線解析など、さまざまな用途に役立てる狙いが大きいとのことだ。

 そのAIを学習させる上でもデータが必要となるが、Wi-FiやLTEでは学習データを集めるのに時間がかかるため、高速大容量かつ安定した通信を実現できるローカル5Gは、学習データを収集させる上でも有益とみているようだ。

DXへの危機感から自治体がローカル5Gに関心

 一方で同社は自治体向けのビジネスを多く手掛けていることから、自治体の5G活用に向けた相談や取り組みも多いとのこと。その一例となるのが、2020年2月にNTT東日本と東京大学、そしてローカル5Gの活用に積極的な姿勢を見せている東京都と2020年2月に協定を結んだ。

NTT東日本 東京都と東京大学とで、ローカル5Gの環境整備・利活用に関する連携協定を結んだ

 3者の協定によって、中小企業振興の拠点である東京都立産業技術研究センターにローカル5Gの環境を整備し、5G関連の新技術・新製品開発に向けた模索などを進めている。子会社のNTTアグリテクノロジーもNTT、そして東京都農林水産振興財団と協定を結んでおり、ローカル5Gを活用した新しい農業技術の実現に取り組んでいる。

 東京都以外にもNTT東日本が産学連携でローカル5Gの活用に向けた動きは多く出てきているという。渡辺氏によると、各エリアの大学は地方創生の取り組みに向けた起点となることが多いことから、産学連携で大学と一緒に自治体での5G活用の取り組みを進められることは、大きなメリットになっているのだそうだ。

 しかしなぜ、自治体がローカル5Gにそれほど強い興味を持っているのだろうか。地域活性化や地方創生においても、デジタルトランスフォーメーションが重要なテーマになってきているためだという。渡辺氏は「農業や防災、地域イベントなど、地域活性化に関する案件に取り組もうとすると必ずITインフラ、中でも無線インフラが必要だという案件が多い」と答えており、3年くらい前からそうした動きが活発になっているのだそうだ。

 またNTT東日本はローカル5Gラボ以外にも、2020年8月11日に東京・秋葉原にオープンしたeスポーツ関連の施設「eXeField Akiba」や、NTTアグリテクノロジーが山梨県山梨市に持つ自社農場など、地域活性化の文脈でモノを考えるラボを持っている。そうしたラボとオープン5Gラボを連携させ、業務から技術までをワンストップで提供できる体制を整えていることも、自治体向けの取り組みを進める上での優位点になっているようだ。

NTT東日本 ローカル5Gオープンラボを起点とし、eスポーツ、園芸、文化施設にもローカル5Gのフィールドを広げていく

 最近では、コロナ禍によって地方のデジタルトランスフォーメーションを本格的に進めなくてはいけないという危機感が全国で高まっていることから、その危機感をトリガーとしてローカル5Gの活用に向けた相談がなされるケースも増えているとのこと。カメラを使った「三密」の検知など新型コロナウイルスの感染対策に向けた活用、そしてテレワークだけでなく、接客や案内をロボットで代用するなど業務の遠隔化に向けてもローカル5Gを活用したいという声は多いという。

 ただ、ローカル5Gは現状まだ機器が高額だ。ビジネスイノベーション本部 テクニカルソリューション部 ソリューションアーキテクトグループ / 無線ビジネス推進PT(兼)担当部長の門野貴明氏によると、ソリューションを提供する側としては「顧客の課題解決が重要で、それを実現してくれるのであればどの無線方式でも構わない」ことから、実際にはローカル5Gだけでなく、Wi-FiやLPWA、SXGPなど複数の無線手段を検討して実装するケースが多いとのこと。それゆえ当面は、ローカル5Gの最適な活用法などをローカル5Gラボで検証しながら見定めていくことになる。

NTT東日本 ローカル5Gオープンラボでは、検証ルーム、オープンスペース、カンファレンスルームなどを設けている
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