Mi Mix Fold発表の前日にはXiaomiのスマートフォンのメインラインである「Mi」シリーズの最上位モデル「Mi 11 Ultra」が発表された。シリーズ中核モデルとなる「Mi 11」は2020年12月に発表しており、Mi 11 Ultraはそれから3カ月後に発表された。これは打倒Huaweiを目指す狙いがあったからだろう。
Huaweiは例年、カメラ性能を高めた「P」シリーズを4月ころに発表している。Pシリーズは業界最高のカメラ品質を誇るとともに、スペックも高い同社のフラグシップモデルだ。しかし2021年に登場予定の「P50」(仮称)は、米国の制裁を受けた関係から、発表スケジュールは確定されていない。HuaweiのPシリーズは世界中に愛好者が多いが、2020年モデル「P40」シリーズはGoogleサービスが非搭載だったことから販売は思わしくなかったとみられている。XiaomiはHuaweiの2021年フラグシップ製品が出る直前にMi 11 Ultraを投入することで、Huaweiの最高カメラフォンを待ち望んでいる消費者に自社製品を売り込もうと考えているのだろう。
一方、ミドルハイレンジモデル「Mi 11青春版」も発表会ではしっかりと説明が行われた。Huaweiなど他社の新製品発表会ではハイエンドモデルを中心に紹介し、中低位モデルはアナウンスだけを行う、ということが多い。しかしMi 11青春版はカラフルな本体カラーを中心に「楽しいスマートフォン」として若い層にアピールを行った。
Mi 11青春版はSnapdragon 780Gを搭載。メインカメラは6400万画素でインカメラも2000万画素とスペックが高く、セルフィー需要にも対応する。また本体重量は159gと軽量で片手でも楽に持てる。iPhoneよりもベゼル幅が薄くディスプレイ体験も高いという。基本性能はしっかり押さえつつ、春を感じさせる6色展開のカラバリにより20台前半の若者をターゲットにしている。価格は2299元(約3万9000円)だ。
Xiaomiは低価格モデル「Redmi」シリーズも積極的に展開しており、スペックを抑えた製品も多くラインアップは広い。だが正直なところ、中国の若い層はRedmiを買うならOPPOやVivoの低価格モデルを選ぶ傾向がある。Xiaomiはコストパフォーマンスを売りにした製品が多いものの、同じ価格帯のOPPOやVivoの製品よりブランドイメージは低い。最近では若者をターゲットにしたrealmeもシェアを伸ばしており、Xiaomiとしては女性層など、これまで弱かったユーザーに販売を広げることが販売数増に大きくつながる。
Mi 11青春版がXiaomiの「どことなく安い」というイメージを払拭(ふっしょく)させることができれば、Xiaomiを持つことがファッションやトレンドになり、価格やスペックを抜きにしてもXiaomiを買おうと思う消費者が増えるだろう。Mi Mix FoldやMi 11 Ultraのようなハイエンドフォンは性能を重視するユーザーなら黙っても買っていく。ボリュームゾーンともいえる一般消費者が、HuaweiやOPPO、Vivoではなく真っ先にXiaomiを選ぶようになれば、Xiaomiのスマートフォン販売数は一気に増加するだろう。
2020年の世界のスマートフォン市場は1位Samsung、2位Apple、3位Huawei、4位Xiaomiだった。HuaweiはHonorを分社化したことや、米国の制裁の影響で2021年は出荷台数を大幅に減らすと予想されている。2021年はXiaomiが世界シェア3位になることは確実といえる。しかしXiaomiが目指すのは3位の位置ではなく、現時点で約5000万台の差をつけられている2位Appleを抜くことだろう(数値はガートナー調査)。2020年は一瞬とはいえHuaweiがSamsungを抜いて1位にもなった。Huaweiを抜き去ったXiaomiがさらに上を目指していけば、AppleどころかSamsungを抜き世界シェア1位の座に躍り出ることも夢ではないだろう。
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