Squareが3月16日に発表した決済端末「Square Terminal」。ハンディーサイズの持ち歩ける決済端末で、ディスプレイを搭載し、クレジットカードや電子マネーのリーダー/ライターとシートプリンタを内蔵することで、1台で決済を賄える製品となっている。
同製品の日本投入について、その背景や機能の詳細を、米Squareのハードウェアゼネラル・マネージャーであるトーマス・テンプルトン氏に話を聞いた。なお、取材は米国のテンプルトン氏に対してリモートで行っている。
Square Terminalは、2018年10月に米国でリリースされた。その後、同社がサービスを展開するカナダ、英国、豪州でも販売され、今回日本でも投入された形だ。他国に比べて時間はかかっているが、日本独自の交通系電子マネーなどのFeliCa対応を行ったからだ。
米国で一番人気のユースケースは、美容院やネイルサロンだという。施術した椅子から立つことなく、そのまま支払えることで使われている。同様にレストランでもテーブル会計で使われているそうだ。
小売店での利用も増えているそうで、その背景として、「レジカウンターを設ける店舗がどんどん減ってきている」という。レジカウンターを置くのではなく、店員がハンディー端末を持って通路や売り場でそのまま会計するという形が増えているのだという。
レジカウンターがあっても、行列が長くなったら端末を持った店員が並んでいる人の会計をする、という使われ方もされているという。こうした用途はコロナ禍で加速しているそうで、コロナ禍がなければあえてキャッシュレスに対応しなくてもよかった、という店舗が、コロナ禍によって非接触を求めるようになり、タッチ決済のニーズが高まっている、とテンプルトン氏は説明する。
「店舗が従来のやり方を変えなければいけないのがコロナ禍だった」とテンプルトン氏。キャッシュレスに対応してソーシャルディスタンスを保つために、固定したレジに並ばせるのではなく、店員がハンディーを持って決済に行く。店の外での支払いを受け付けるといった具合に、従来と異なるやり方をするのに、Square Terminalの柔軟性が威力を発揮したという。
「特に米国では、これまでタッチ決済には関心がない、システムを変えてまで対応しなくてもいいという事業者が多かったが、接触を避けるためにコンタクトレス決済に対応したいという声が増えた」(テンプルトン氏)。
コロナ禍において、日本を含めてキャッシュレス決済の割合が「すごく伸びている」とテンプルトン氏は話す。日本では、Square加盟店の54%が非接触決済を受け入れており、25%が現金よりもキャッシュレス決済の方が多い、という結果になっているそうだ。こうした動向はコロナ禍の影響が考えられるという。
このSquare Terminalの開発で注力したのは「とにかく簡単に決済できる端末を作りたかった」とテンプルトン氏は言う。複数の決済手段に対応するために複数のリーダーを並べるという状況があったので、それを解消するために1台でキャッシュレス対応した端末を作りたいと考えたそうだ。
そのため、クレジットカードは磁気スワイプ、IC、非接触の同時待ち(3面待ち)に対応し、プリンタも内蔵。小型かつ1台で完結する決済端末を目指した。それに加え、事業者側からは決済する場所に縛られたくないというニーズがあり、1日使っても持続するバッテリーを搭載し、電源につながってなくても決済できるようにした。
最後の1点が、Squareの製品に共通した「サインアップが簡単ですぐに始められる」という点。オンラインですぐに登録してすぐに購入、到着してすぐに使い始められる、という点を重視したそうだ。
Squareは、ハードウェアとソフトウェアを自ら手掛けているため、「OEMに依存することなく、ゼロから作りたいものが作れる」(同)ことが特徴だ。Square Terminalのデザインでは、まず前提として持ち運びが可能で、どこへでも持ち運べるような手に収まる大きさであり、なおかつディスプレイを搭載するため、小さすぎると画面が見づらく、そのバランスを重視したという。
その上で、「モダンでミニマリストのデザインの良さを追求しつつ、あまりにもぶっ飛んだものにもしたくなかった」。それでいて見ただけで決済端末であることが分かるというなじみやすさは残しつつ、洗練したデザインを目指したそうだ。
そのため、ディスプレイ下部にICカードの挿入口を設け、側面にはスワイプ用リーダーを設置。決済端末として迷わないデザインとした。5.5型というスマートフォンライクな大型ディスプレイを搭載したのは、UXとしても扱いやすく、ソフトウェアアップデートでUI・UXは常に更新できるという点からだという。
「ソフトウェアアップデートは2週間に1回行う。ソフトウェア面で継続的に先進性を提供する」とテンプルトン氏。事前にSquare Terminalを使っていた日本の店舗でも、直感的で使いやすく、スタッフもすぐに使い方を覚えられた、という声を紹介し、テンプルトン氏はデザインが成功していることをアピールする。
テンプルトン氏は、Squareと同様の事業が展開できる競合はいないのではないか、と自信を見せる。Squareでは包括的なソリューションを展開できる点をアピールする。Square Terminalは、キャッシュレス決済のみならこれ1台で全てカバーでき、既存のPOSに対してもAPI経由で連携できるなど、初めてのキャッシュレス対応から既存のアップデートまで幅広くカバーする。大規模、中小規模を問わず、「全ての事業者に適している」とテンプルトン氏は強調している。
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