総務省は4月16日、電気通信市場検証会議に付属する会議体「競争ルールの検証に関するワーキンググループ」の第16回会合を開催した。この会合において、NTTドコモが2021年秋をめどに「解約金留保」の撤廃と、定期契約プラン(いわゆる「2年縛り」プラン)の新規受け付けの停止を検討していることを表明した。
ドコモでは、2019年10月の電気通信事業法の改正に合わせて、解約金を1100円(税込み、以下同)とする定期契約プランの提供を開始した。
さらに、2020年3月から提供を開始した5Gサービスでは、定期契約プランを用意していない。2021年3月から提供しているオンライン専用プラン「ahamo(アハモ)」にも定期契約という概念はない。
しかし、ドコモでは、変更前の定期契約プランの解約金が契約満了月まで保留される「解約金留保」という仕組みが用意されている。そのため、解約金がない、あるいは値下げされたプランに変更したとしても、変更前のプランの契約期間内に解約すると、そのプランにおける解約金が請求されてしまう。
ドコモと同様に、au(KDDIと沖縄セルラー電話)やソフトバンクは、2019年10月1日から、解約金を値下げしたり撤廃したりしたプランを提供している。しかし、ドコモとは異なり従前のプランにおける解約金を留保する仕組みはない。プランを変更すると、変更後の解約金を適用、または撤廃となる。
理論上の話となるが、auやソフトバンクを昔から使っているユーザーが解約やMNP転出を検討している場合、2019年10月1日以降のプランに変更すれば、定期契約の解約金を“大幅値下げ”または“無料”とすることもできる。
ドコモの解約金留保の仕組みについては、総務省の「モバイル市場の競争環境に関する研究会(終了済み)のヒアリングにおいてKDDIが疑問を呈したことがある。また、同会議や現行のワーキンググループの構成員からも、その意義を問う質問が何度か寄せられていた。
MVNOを含むキャリア間の乗り換えを円滑化する観点では、解約金留保の仕組みは「円滑化の障壁」となることは明らかだ。
今回、ドコモが解約金留保の撤廃にとどまらず、定期契約自体を廃止する方向性を示したのは、乗り換え円滑化を促進するための取り組みの一環だろう。具体的な時期は示されていないが、解約金留保の撤廃が行われれば、解約金自体がかからない(=定期契約のない)プランへの移行が進むものと思われる。
なお、今回の会合でドコモは「端末購入プログラム」に関する問題点を指摘している。
電気通信事業法の改正前に、auは「アップグレードプログラムEX」、ソフトバンクは「半額サポート」という48回の分割払いとセットになった端末購入プログラムを提供していた。これらのプログラムは、契約期間はもちろんだが端末を買い換えることが適用条件となる。
法改正に当たっては、従前(2019年9月まで)に締結された既存契約はそのままの条件で契約を継続できるとされている。しかし、従前の契約が継続されているがゆえに、法改正までにこれらのプログラムを適用した契約のロックイン(囲い込み)効果が余りにも強い。
これらの既往契約について、ドコモは少なくとも端末の買い換えを条件から外すことを提案している。「スイッチングコスト(キャリア変更に伴うコスト)の引き下げには、各社一律の対応が必要」とも指摘している。
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