KDDI、ソフトバンクは値下げ影響で年間700億円規模の減収予想――新規契約者増、ARPU増で通信料収入の復活は可能か石川温のスマホ業界新聞

» 2021年05月21日 10時00分 公開
[石川温]
「石川温のスマホ業界新聞」

 各キャリアの決算が出そろった。やはり、通信料収入の落ち込みが顕著だ。NTTドコモは167億円、KDDIは409億円の減収だ。

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この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2021年5月15日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。


 また、通期予想に関してもソフトバンクは、今年度は携帯料金の値下げ影響として700億円程度の減収を見込む。NTTドコモはahamoなどの値下げによるマイナス影響は具体的には明らかにしていないが、通信事業の営業利益は111億円の減収を予想。

 KDDI・高橋誠社長は「22年3月期のID数とARPUを計算すると3180万ID、現在、4400円のARPUがマルチブランド展開により4200円に下がりそうだ。ざっと計算すると600〜700億円の顧客還元になるだろう」と語る。

 通信料収入の落ち込みをいかに回復させるかが、今後の経営課題となる。

 NTTドコモは2021年度に5G契約者の目標を現在の309万から1000万契約を目指す。KDDIも3月末までの240万から700万突破を目標としている。

 5Gスマホユーザーが増えれば、それだけデータ消費量は増えるわけで、結果として使い放題プランユーザーが増え、ARPUが回復していくのではないか。

 もうひとつ、今後の通信料収入を見ていく上で注目なのが純増数だ。特にNTTドコモは2021年度に158万件の純増数を計画している。2020年度は71万件しか計画していなかったが、実際は230万件も純増を獲得していた。特に下期の数字が伸びており、やはりahamo効果が相当あった模様だ。

 ahamoに関しては、すでに100万件を突破しており、その内訳について、井伊基之社長は「既存のドコモユーザーからの乗り換えが多いが、新規契約や他社からの乗り換えがないわけでもない。楽天モバイルに移行した人も、一定程度戻ってきている」という。

 これまでNTTドコモは若年層が弱く、特にファミリー割引が適用されていた家族から独立した子どもが自分で通信料金を支払うようになる段階でワイモバイルなどに逃げていくという状態であった。ahamoを始めたことで、中容量という選択肢ができ、解約抑止につながった模様だ。

 KDDIのpovoも「100万件が見えてきた」(高橋社長)という。「トッピングに関しても24時間データ使い放題が好調。新しいトッピングも絶賛検討中であり、かわいいキャラクターもできて、LINEスタンプも配信されたので、楽しいトッピングができたらいいなと思っている」(高橋社長)とした。

 またUQモバイルの統合に関しても高橋社長は「正直言って、やって良かったと思う」と語る。

 KDDIではau回線の10%がpovoやUQモバイルに移行するのではないか、と見ている。

 各キャリアとも、今年度も純増数の増加を計画している。5Gスマホの普及とともにMVNOに流れたユーザーを取り返すことで、契約者数と通信料収入の回復を目指すことになりそうだ。

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