総務省が「電気通信番号制度の在り方」を情報通信審議会に諮問 MVNOへの音声用携帯電話番号の直接付与を検討へ12月をめどに答申

» 2021年05月26日 21時30分 公開
[井上翔ITmedia]

 武田良太総務大臣は5月19日、総務省の「情報通信審議会」に対して「デジタル社会における多様なサービスの創出に向けた電気通信番号制度の在り方」を諮問した。これを受けて、同審議会の電気通信事業政策部会傘下にある「電気通信番号政策委員会」は5月26日から、諮問内容の検討を開始した。大臣に対する正式な答申は、2021年12月をめどに行われる予定だ。

【訂正:21時40分】初出時、データ伝送携帯電話番号に関する説明が一部誤っていました。おわびして訂正いたします

今回の諮問 武田大臣が諮問した内容の概要(総務省資料より:PDF形式、以下同)

議論を進める内容

 今回の諮問を受けて、大きく「音声伝送携帯電話番号(※1)の指定」と「固定電話番号(※2)を使った電話転送サービス」の2点に関して検討が進められる予定となっている。

(※1)音声通話できる携帯電話に割り当てられる電話番号(「090」「080」「070」で始まる電話番号)
(※2)「0」を含む2〜5桁の番号(一部)

電話番号 総務省が割り当てる主な電気通信番号(電話番号/IMSI)

音声伝送携帯電話番号:MVNOへの直接割り当ての可能性を検討

 音声伝送携帯電話番号(以下「音声携帯番号」)は、総務省が携帯電話基地局の免許を受けている携帯電話事業者(MNO)(※3)に対して割り当てている。2020年3月末時点における指定率は91.2%(約2億4560万番号)で、そのうち1億7654万番号が使用されている。

(※3)NTTドコモ、KDDI、沖縄セルラー電話、ソフトバンク、楽天モバイル

 一方、現行の制度では、基地局の免許を持たないMVNOに対して音声携帯番号を直接割り当てることはできない。そのため、MVNOが音声携帯番号を使った音声通話サービスを提供するには、MNOからサービスの卸提供を受ける必要がある。

 MVNOが音声携帯番号を使って独自の音声通話サービスを提供する場合、現状では卸提供を受けるMNOの制約をどうしても受けてしまう。そこで一部のMVNOは、今後自社でIMS(IP電話設備)を設置することで、より自由な音声通話サービスを提供する方針を示しており、それを実現する一環として音声携帯番号をMVNOにも直接割り当てられるようにすることを要望している。

(※4)パケット通信のみ利用できる携帯電話に対して割り当てられる電話番号(「020」で始まる11桁、または「0200」で始まる14桁)。この電話番号を割り当てられた回線では携帯電話の音声通話やSMSは利用できない

現状 音声伝送携帯電話番号の割り当てに関する現状

 そこで、今回の検討では音声携帯番号をMVNOに直接割り当てることの是非と、直接割り当てる場合の要件が検討される。

 なお、音声携帯番号の割り当てには、基地局免許の割り当て以外にも以下の条件が課されている。

  • 緊急通報(110/118/119番)に対応すること
  • MNP(携帯電話番号ポータビリティ)に対応すること
  • サービスを提供するために利用する設備が技術基準(技適など)に適合していること
  • 他の通信事業者と網間接続を行うこと(※5)

(※5)第一種指定電気通信設備と直接(または単一の他事業者を介して)接続する方法と、全ての接続対象事業者とIP(ENUM方式)で直接接続する方法のいずれか

 いずれの要件も、対応するには少なくない費用が必要となる。議論の過程では、MVNOが最低限満たすべき要件(と負担すべき費用)についての検討が必要だ。

 なお、ヨーロッパでは、一定の要件を満たしたMVNOに対して直接電話番号を割り当てる制度が導入されている国が多い。

要件 音声伝送携帯電話番号の割り当てを受けるための要件。MVNOへの直接割り当てを実現する場合、
欧米 欧米におけるMVNOへの携帯電話番号の直接割り当て状況。ヨーロッパでは一定の条件で直接割り当てを認めている国が多い

 今回の議論では、データ伝送携帯電話番号もMVNOに直接割り当てる是非や、携帯電話番号の拡張(「060」で始まる番号の音声伝送携帯電話番号としての利用など)も合わせて検討される見通しだ。

検討課題 今回の検討では、フルMVNO以外にもデータ伝送携帯電話番号を直接割り当てるかどうか、携帯電話番号の拡張をどうするのかについても検討される見通しだ

固定電話番号を使った電話転送サービス:前回答申の状況をチェック

 電話転送サービスには、大きく「着信転送」と「発信転送」がある。着信転送はある電話番号にかかってきた通話を別の電話番号に転送するというもので、携帯電話でも「転送でんわ」などという名前で提供されている。一方、発信転送は転送(交換)装置宛に電話をかけると、転送(交換)装置が別の電話番号を使って発信するというもので、主に法人向けにサービスが提供されている。

転送電話 電話転送サービスのイメージ図

 固定電話では、市外局番(と市内局番)によって発信者の所在地をある程度特定できる。その特性を生かして、新聞やTVの世論調査では、発信先の市外/市内局番に応じて質問内容を変えることがある。これを発信転送サービスに当てはめて考えると、発信転送サービスを使えば“本当の”所在地を知られることなく電話を掛けられるということになる。

 そこで野田聖子総務大臣(当時)は2018年4月、情報通信審議会に対して固定電話番号を使った電話転送サービスの「新たな在り方」を検討するように諮問した。その結果、同年9月、転送サービスの契約者(最終利用者)の本人確認の厳格化や、発信転送を利用した緊急通報を不可能とすること(※6)などを盛り込んだ答申が出され、これに基づき「電気通信番号計画」(電話番号の割り当てルール)が改訂された。

(※6)発信者の位置を緊急機関に正しく通知できる方法がある場合を除く

現行ルール 2018年9月に出された答申の概要
現行ルール 答申に基づき定められた、固定電話番号を使った電話転送サービスの現行ルール

 この答申では、答申後も実施状況を確認(フォローアップ)し、必要な検討を行うことが盛り込まれていた。今回の検討では、以下のチェックが行われる。

  • 電話転送サービスの提供形態や動向の整理
  • 整理を踏まえた提供条件の見直しや明確化の検討
  • 電話転送サービス提供者に対するルールの在り方の検討
見直し 今回チェックされる事項

今後のスケジュール

 今後、電気通信番号政策委員会では以下の日程で議論を進める予定となっている。

  • 6月9日:携帯電話番号の割り当てに関するヒアリング
  • 6月24日:電話転送サービスに関するヒアリング
  • 7月〜9月:論点整理(複数回実施予定)
  • 10月上旬:報告書の取りまとめ
  • 10月中旬:答申案の公開
  • 10月下旬から11月下旬:答申案に対する意見(パブリックコメント)募集
  • 11月下旬:意見に対する考え方の公表
  • 12月上旬:正式な答申
スケジュール 今後のスケジュール案

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