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» 2021年06月09日 15時05分 公開

「分離プラン」と「新型コロナ」で逆風 携帯ショップのあるべき姿とは?ワイヤレスジャパン 2021(1/2 ページ)

キャリアショップのビジネスモデルは、総務省が推し進める「通信と端末の完全分離」の方針によって打ち砕かれた。さらに、新型コロナウイルス感染症の流行により、店舗への来店客が減少している。キャリアショップは大きな業界構造の転換を迫られている。

[石井徹,ITmedia]

 携帯電話販売の在り方が今、問われている。業界構造の転換を迫られる中、将来の携帯電話ショップはどのような在り方を目指すのか。全国の携帯電話ショップの運営会社が加盟する全国携帯電話販売代理店協会(全携協)の専務理事 俣野通宏氏が語った。

 「ワイヤレスジャパン 2021」にて6月3日に実施された特別講演「コロナ禍によって加速するケータイ業界の変革とスマホ流通市場のこれから」よりレポートする。

携帯ショップ ワイヤレスジャパン2021で実施されたスマホ流通市場に関する講演

キャリアショップに続く逆風

 これまで携帯販売の中心的役割を担っていた携帯電話ショップは、苦境が続いている。ドコモショップ、auショップ、ソフトバンクショップなどのいわゆる「キャリアショップ」は全国に7700店舗ほど存在するが、そのほとんどはキャリア直営ではなく、大手キャリアから運営委託を受けた販売代理店だ。

 こうしたキャリアショップでは、これまで通信回線の販売時に得られる販売奨励金が大きな収益源となっていた。

携帯ショップ 全国携帯電話販売代理店協会(全携協)専務理事の俣野通宏氏

 そのキャリアショップのビジネスモデルは、総務省が推し進める「通信と端末の完全分離」の方針によって打ち砕かれた。2019年9月にはスマホのセット販売時の割引上限を2万円とするガイドラインが公表され、これまでのような大幅なキャッシュバックをつけて販売する事業モデルが不可能となった。

 逆風はさらに続く。2020年の新型コロナウイルス感染症の流行は、店舗への来店客の減少につながった。2021年にはNTTドコモの「ahamo」など、大手キャリアが低価格なオンライン専用プランを開始。キャリアショップで販売されないオンライン専用プランは、キャリアショップにとって脅威となり得る存在だ。

 携帯電話はほぼ全国民に行き渡り、従来のような積極的な回線数拡大のための手段は使えない。キャリアショップは大きな業界構造の転換を迫られている。

キャリアショップが抱える3つの問題

 直近では、従来の販売制度と通信と端末の分離を目指す総務省の政策がかみ合わない部分でゆがみも出始めている。俣野氏がキャリアショップに関する3つの報道を挙げて問題を示した。

携帯ショップ 携帯ショップの「反省すべき点」として3つの事例紹介

 問題の1つは通信と端末の分離にそぐわない、不適切な販売の横行だ。総務省がキャリアショップのスタッフへ実施した聞き取り調査では、4割強のスタッフが「ユーザーのニーズや意向を確認せず、上位の料金プランに勧誘したことがある」と解答している。

 その背景には、大手キャリアから課せられた実質的な販売ノルマなどに課題があるとも考えられる。俣野氏は「背景はいろいろある」と述べつつも、「いろいろあるが、協会として法令順守のために何ができるかを提言していかなければならない」と改善に向けた姿勢を示した。

 オンライン専用プランの提供に合わせて、問題化したのがいわゆる“ahamoフック”や“povoフック”だ。ahamoが事前キャンペーンを実施していた時期、ドコモショップで「事前に他社からMNP転入しておけば、ahamoへラクに移行できる」などといったうたい文句で、店頭では契約できないahamoを来店のきっかけに使う勧誘を行っていた。これが問題視されていたのだ。

 3つ目の問題は、「端末単体販売の拒否」だ。通信と端末の分離をうたう改正電気通信事業法では、スマートフォン本体のみを購入したいというユーザーの要望を拒否できないとされている。一方で、スマホ本体のみの販売はキャリアショップにとって販売奨励金が入らないためうま味が薄い。また、スタッフの知識不足などの要因もあり、法令に違反する販売拒否が発生している状況だという。

 こうした携帯電話販売を巡る問題は、単純に消費者と販売店との間のトラブルといえない面もある。携帯電話は新たな技術が頻繁に登場する変化の激しい業界である上、携帯キャリアと販売店と間の独特の商慣習や、通信行政の政策の変更など左右される要素も大きい。全携協の果たす主要な役割は、販売代理店に寄せられたクレームを収集、分析し、携帯キャリアにフィードバックすることだ。また、政策決定の場で販売店側の代表として意見を述べるなど、政策決定の場にも参加している。

行政DXで変わる携帯ショップ

 冒頭で述べたように、通信と端末の分離は携帯電話販売店のビジネスモデルを大きくゆるがせている。その一方で、俣野氏は「携帯電話の販売数はここ数年で減少傾向にあるが、売上高は2021年度の水準から大きくは下がらないのではないか。携帯ショップには継続的に求められる役割がある」と予測する。

 携帯電話ショップの新たな役割とは「行政DX」への対応だ。新型コロナウイルス感染症の流行により、大規模なリモートワークが定着するなど、デジタル化が一気に進んでいる。政府はデジタル庁が発足し、行政手続きのデジタル化を加速させる構えだ。

携帯ショップ
携帯ショップ 携帯ショップは地域のIT拠点として活用できると主張する

 デジタル化が進めば、スマホはますます生活に欠かせないインフラとなっていくだろう。例えば、政府ではマイナンバーカードの機能をスマホ上で搭載し、スマホを身分証明書代わりに使えるようにするという議論が進んでいる。

 デジタル化でさまざまな手続きがスムーズになる一方で、スマホを使いこなせない人が行政サービスから取り残されていく可能性もある。こうしたいわゆるデジタルデバイドを解消するために、デジタル技術との付き合い方を教える設備、人材が求められる。

 俣野氏は「携帯ショップのスタッフは有資格者、お店も土日や夜まで空いている。身近で安心なデジタル化の地域拠点として行政DXを手助けできる存在だ」と主張する。

 総務省も、この主張に呼応する動きを見せている。2021年度には、高齢者向けの「スマホ講座」を支援する政策が本格的に展開するが、この政策ではキャリアショップが来店客のサービスで行っていたスマホ教室を公的に支援するような体裁をとっている。俣野氏は携帯ショップが地域のIT拠点として根付き、「将来的には、例えば公共料金の支払いをショップで行うなど、新しいサービスができれば理想だ」と構想を語る。

 5Gの普及に向けて、携帯ショップはさらに多様な役割が求められるようになるかもしれない。俣野氏は、「5Gの成熟期には、デバイスが多様化し、ARグラスやIoTデバイスなど、スマホ以外も普及していくだろう。携帯ショップでは、新しいデバイスを体験できる場となり得る」と話した。

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