2020年11月頃、「スマートフォンの機種変更を行ったら、余計な周辺機器やソフトを買わされた」と、携帯電話ショップにおけるオプション品の販売手法に異を唱える発言がSNSで話題になっていました。
この話題は新しいように見えて、比較的古い話題でもあります。スマホの購入に際して「高額なmicroSDメモリーカードを分割で購入させられた」といった声は定期的に見かけます。このようなスマホ購入時にオプション品を“分割払いで”販売する手法や、そもそものオプション品の価格設定について、批判する声は少なからずあります。
ではなぜ、携帯電話ショップはこのような「販売手法」を取るのでしょうか。現役の店舗スタッフに話を聞いてみました。
シンプルに言ってしまえば、携帯電話ショップにとって周辺機器の販売は生き残るために欠かせない営みの1つです。ショップを巡る最近の事業環境を踏まえると、その“重み”は以前よりも増してます。
あるショップの店員はこう言います。
数年前までは、携帯電話端末が1カ月当たり200〜300台売れるのが“当たり前”でした。しかし、2019年10月に行われた電気通信事業法の改正以来、携帯電話端末の販売台数は激減しました。
そこに、2020年は新型コロナの影響で、店舗を開けられない時期もありました。このまま行くと、2020年度の通期販売は、2019年度の半分くらいの販売台数に着地しそうです。
法令改正に伴い、以前は収益の柱だった端末販売や回線契約が立ちゆかなくなった様子が伺えます。
ただ、別のショップ店員がこれから話す通り、端末販売自体は、それほど利益率が高くありません。いわゆる「薄利多売」スタイルです。
端末1台当たりの利益なんて、微々たるものです。数を売って、キャリアからインセンティブ(販売奨励金)を得ないと事業として成り立ちません。
台数が出ない以上は、端末販売以外の要素で稼がないといけません。例えば、オプションサービスの獲得で得られるインセンティブはその一例でした。お客さまには何らかの割引をする条件として、オプションサービスを一定期間の契約(利用)をお願いする、というものです。
しかし、電気通信事業法の改正によって、このような販売手法にも厳しい制限が掛かるようになりました。割引の上限額も微々たるもの(税別2万円まで)になってしまったので、オプション加入をお願いしづらくなってしまいました。
手っ取り早く利益を上げるのであれば、端末代金に「頭金」を設定することも選択肢です。しかし、「頭金」は他店との価格競争を考えると難しい面もあります。総務省や消費者庁も「頭金」に対する注意喚起をした所なので、「頭金」で利益を確保するのは一層厳しくなるでしょう。
そうなると、お客さまにメリットのあるオプション品を提案して販売することが、今後の利益確保に当たっては重要になります。microSDメモリーカード、スマホケース、セキュリティ対策ソフトなど、お客さまのスキルやニーズに合わせて提案できるスキルが、ショップのスタッフには求められるでしょうね。
かねて言ってきたように、筆者自身も携帯電話の販売に長く携わっていました。キャリアなどから得られるインセンティブが、店舗の収益確保において非常に重要なのは痛いほどよく分かります。
以前であれば、「他社からの乗りかえ(MNP)で端末を30台販売する」というノルマを達成すれば、スタッフ1人分の人件費に相当するインセンティブを得られました。月額300円程度のオプションサービスを3カ月間継続して利用して契約してもらえれば、1件当たり2000〜3000円の収入になります。
こうした大きな収益源に頼れなくなれば、新しい収益源を求めるのは自然な流れです。そこで、オプション品の販売に改めて力を入れるのも、当然といえば当然といえます。
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