総務省は4月26日、「競争ルールの検証に関するワーキンググループ」「消費者保護ルールの在り方に関する検討会」の合同会合において、携帯電話端末販売に関する「覆面調査」の結果の概要を発表した。携帯電話の通信(回線)契約とひも付かない端末販売について、応じない携帯電話販売店が少なからず存在する実態があったという。
この記事では、調査に至るまでの経緯と、調査結果について解説する。
2019年10月に改正された電気通信事業法では、端末販売における利益提供(値引き)を以下のように規制している。
ただし、端末の販売条件を単品販売時と“同一”とする場合に限り、セット販売時でも値引き制限をなくす例外規定も設けられている。大手キャリアが提供する現行の端末購入サポートプログラム(※1)は、この例外規定を活用して提供されている。
(※1)NTTドコモの「スマホおかえしプログラム」、au(KDDIと沖縄セルラー電話)の「かえトクプログラム」、ソフトバンクの「トクするサポート+」
つまり大手キャリアが端末購入サポートプログラムを“合法的に”提供するには、その販売代理店(キャリアショップ、家電量販店、併売店)が端末の単品販売に応じる必要がある。
しかし、端末購入サポートプログラムを巡って、以下の大きく2点が問題として指摘されている。
これを受けて、総務省は2020年5月29日、ドコモ、au、ソフトバンクに対して「割賦により端末を販売する際の販売手法に係る要請」を行い、サポートプログラムの提供条件に関する周知の再徹底と、状況報告を求めた。
同省は、2020年10月27日に公表した「モバイル市場の公正な競争環境の整備に向けたアクション・プラン」において、上記の問題点が解消したかどうか確認するために覆面調査を実施することを盛り込んでいた。今回、結果の概要が公表された覆面調査は、プランに基づく取り組みということになる。
総務省による覆面調査は、2020年12月から2021年2月にかけて行われた。結果、対象店舗のうち販売拒否(端末購入サポートプログラムの提供拒否を含む)が確認された店舗の割合は以下の通りだったという(調査した店舗の実数は公表されていない)。
この結果を受けて、同省は3社に端末販売拒否事案の有無について調査を依頼した結果、拒否した事実を確認できた店舗数の割合(※2)は以下の通りだったという。なお、一部のキャリアは現在も調査を継続しているため、比率は変わる可能性もある。
(※2)同時に3人以上の契約手続きを受け付けられる店舗を分母として算定
同省が覆面調査を行った店の実数(分母)が分からないため、比率の乖離(かいり)について評価することは難しいが、端末の単品販売を断る代理店が少なからず存在し、大手キャリアの指導(統制)が不十分であることは間違いない。
覆面調査では、主に以下のような「理由」で販売を断っていたという(要約して掲載)。
現行の法令を踏まえると、いずれも明確な誤案内である。端末単品購入者に対する端末購入サポートプログラムの提供を拒否した事例では、主に以下のような説明があったという(要約して掲載)。
これらは全て、各キャリアのサポートプログラムの条件と矛盾する説明である。
同省が代理店を監督する大手キャリアにヒアリングを行った所、誤案内の原因としてドコモは「スタッフの誤認」と「受付業務繁忙による他店舗案内」を、KDDIとソフトバンクは「スタッフの知識不足」を挙げたという。ただ、SNSでは、ユーザーから以下のような声も寄せられている。
これらの説明は、果たして「誤認」や「知識不足」によるものなのだろうか……?
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