ニュース
» 2021年06月18日 10時00分 公開

公正取引委員会が「競争政策上の課題」を発表――MNOへの「信頼・満足・愛着」があり、乗り換えに興味なし石川温のスマホ業界新聞

公正取引委員会が、携帯電話市場における競争政策上の課題に関する調査レポートの2021年度分を公表した。この調査は2018年度に行った調査のフォローアップを目的として行われたものだが、無理やりキャリアの乗り換えを促すような方向性は、果たして「自由な競争」に資するのだろうか。

[石川温]
「石川温のスマホ業界新聞」

 公正取引委員会が「携帯電話市場における競争政策上の課題について(令和3年度調査)」を発表した。

 調査の狙いとしては「MNOとMVNO間の競争の活発化」「MNO間の競争の活発化」「消費者が最適な料金プランを選びやすい環境の整備」の3つがあるという。

この記事について

この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2021年6月12日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。


 そのため、通信と端末のセット販売期間、拘束・自動更新付契約(2年縛り) 、将来的な端末の下取りや同じプログラムへの加入等を前提としたプログラム、SIMロック、中古端末の流通、携帯電話端末の修理、MVNOの競争環境を確保するための制度上の対応等をフォローアップ事項としてあげている。

 これを受けて、ニュース報道や一般紙では、KDDIやソフトバンクの「端末購入サポートプログラム」に見直しが入るのではないか、という指摘があった。

 ただ、高価なスマホを、毎月、手軽な負担で購入できる仕組みにメスを入れる必要が本当にあるのか、議論の余地があるだろう。

 毎月の通信料金に対してあまり負担を感じず、むしろ、ハイスペックなスマホを継続的に購入し続けたいというユーザーもかなりいるはずだ。そうした人たちの選択肢を奪うべきではないだろう。

 そもそも、この調査ではMNOからMVNO等への乗換えが進まない理由等について消費者アンケートを行い「MNOへの信頼性・満足度・愛着度」が最も大きな影響度を持つと分析されたと結論づけている。

 つまり、多くのユーザーはキャリアを乗り換えようとは思っておらず、いまのMNOを使い続けることになんら負担を感じていないのだ。

 実際、総務省が行った数年前のアンケートでも、「キャリアを乗り換えたい」という人はごくごく少数派で大半が「いまのキャリアを使い続けたい」というのであったはずだ。

 総務省や公正取引委員会がどんなに頑張っても、ユーザー自身が契約しているMNOに愛着を感じてしまっている。さらに、固定インターネットや電気契約で家族まるごとしばられつつある。また、ID基盤によっても、囲い込みが進みつつある。もしも、ユーザーが「通信料金が高い」と感じたら、UQモバイルやワイモバイルといった店頭サポートのあるブランドやオンライン専用プランが存在する。

 「料金が高い」と思っても、まずはブランド変更にとどまるだろうし、キャリアを乗り換えようというモチベーションを起こすのはかなり難しいのではないか。

 総務省や公正取引委員会が本気でMNOからMVNOへの乗り換えを促進させたいのであれば、そもそも楽天モバイルに新規参入させるべきではなかった。さらに言えば、MNOに対して、オンライン専用プランなど作らせてはいけなかったはずだ。

 「携帯電話市場における競争政策上の最大の課題」はいまの菅政権であり、選挙のためのMNO3社の値下げによって、日本では公正で自由な競争はもはや望めなくなったと言わざるを得ないだろう。

© DWANGO Co., Ltd.

この記事が気に入ったら
ITmedia Mobile に「いいね!」しよう