店舗を変えるモバイル決済

FeliCaに対応、スマホが決済端末になる「Tap on Mobile」の可能性モバイル決済で店舗改革(2/2 ページ)

» 2021年07月07日 10時46分 公開
[小山安博ITmedia]
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実際に店舗でTap on Mobileを導入した結果

 実際に実証実験で利用した店舗では、どのような感想を持ったのか。東京・早稲田のビアバー「グランズー」で話を聞いた。同店は神田川のほとりにある小規模店で、醸造所が併設されてクラフトビールを提供している。

Tap on Mobile
Tap on Mobile 早稲田にあるビアバー「グランズー」は2階の醸造所でオリジナルビールを製造して提供

 店内はカウンターとテーブル席が1つというこぢんまりとした店。基本的にはカウンターでオリジナルのビールと軽食を楽しむのが主流だろう。もともと支払いにはクレジットカードと現金に対応していたが、Tap on Mobileを採用することで、FeliCaによる電子マネーに対応できるようになった。

 運営するジップザフューチャーズ代表取締役の横田典行氏は、「思ったより(Tap on Mobileの)利用者が多い」と話す。それまではもともと対応していなかったため、電子マネーで払おうという声は聞かれなかったが、対応したところ、想定以上の利用者が電子マネーを選択していたという。

Tap on Mobile 店内はこぢんまりとした小規模店。中央が横田氏
Tap on Mobile Tap on Mobileによって、WAON、nanaco、楽天Edy、QUICPayでの支払いがサポートできるようになった

 横田氏自身、電子マネーのニーズはないと思っていたが、対応したと知るとそちらを使う利用客も多かったという。取材時は実証実験を開始して1カ月ほどだったが、スマートフォンだけを持ってフラッと店に来て支払いをするという人もいたそうで、店側の想定以上にニーズはあったという認識だ。

Tap on Mobile 支払い手段を選び、料金を入力。スマートフォンのNFC(FeliCa)同士を合わせて支払いを行う
Tap on Mobile スマートフォンの楽天Edyで支払い

 そのため、横田氏はTap on Mobileを「続けたい」と話す。取材時はコロナ禍ながら、まだ飲食店は感染対策の上で営業できていた頃だが、手軽に電子マネー対応できるCARDNETのTap on Mobileは、店のニーズを掘り起こした形だ。

クレジットカードのタッチ決済も検討

 CARDNETの場合、他のTap on Mobileの仕組みとは異なり、NFCによるタッチ決済に対応していないというデメリットはある。実証実験ということで、FeliCaのサポートを優先したからで、今後はクレジットカード(NFCによるタッチ決済)への対応も検討するという。

 クレジットカードを挿入して支払うICへの対応が難しいが、NFCに対応すれば、タッチ決済化が遅れているMasterCardやJCB以外は、NFCへ対応することでカバーできる。それら2社も、タッチ対応に向けての取り組みを加速するとの話も聞こえてくる。

 スマートフォンにアプリをダウンロードすれば使い始められるという手軽さは、他の決済端末にはない簡便さで、FeliCaを読み取ってから決済が完了するまで1秒以内に完了するなど、性能面でも十分、というのがCARDNET側の判断だ。

 試してみると、店と客のスマートフォン同士でNFCアンテナを合わせるのが難しく、一般的なレジのリーダーにかざすよりも慎重な位置合わせが必要だが、読み取りさえ行われれば、すぐに決済は完了した。

 実証実験では端末を指定しており、ソニー、シャープ、Googleの2020年発売スマートフォンが該当する。実際に本サービス開始となれば、他の端末での検証は必要になるだろう。ただ、全ての端末でチェックすべきかどうかは今後の検討としている。

 CARDNETによれば、実証実験中に2カ月で1000件以上のトランザクション(決済の処理)があり、決済時間は1秒以内だったという。位置合わせが一発で済めば、特にストレスなく決済は完了する。個人的にはレシートが電子メールという点もよかった。店員からスマートフォンを受け取ってメールアドレスを入力する手間はあるが、紙のレシートよりは管理しやすい。

 スマートフォンを使うメリットは、アプリでの機能拡張が容易な点もある。コード決済と組み合わせてもいいし、加盟店が必要な業務アプリを提供することで、利便性をさらに高められる。

 日常で使うスマートフォンだと、決済中に電話がかかってしまうなどの問題もあるので、新たなスマートフォンが必要となる。専用にスマホを購入すると高くつくが、旧機種をTap on Mobileに使う、といったやり方も可能だろう。

 店舗からの評判もよく、CARDNET側では最短でも夏にはNFCへの対応を行い、商用化につなげたい考え。移動店舗への対応も図る意向だ。スマートフォンの決済端末化の有利な点は、従来よりも簡単にキャッシュレスを導入できる点だ。

 その反面、手軽ゆえに安定性や保守性、ハードウェア的な拡張性など、専用の決済端末に比べれば機能は劣る。逆に言えば、そうした拡張性をそれほど必要としない業種業態で、コストを抑えながらキャッシュレス化したい場合に向いている。CARDNETのTap on Mobileは、日本固有の電子マネーをサポートしている点が強みで、今後のクレジットカード対応とアプリケーションの提供次第では、個店を中心とした一定のニーズをカバーできそうなソリューションだ。

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