決済+ポイントの処理を同時に行える「.pay」 加盟店が導入するメリットは?モバイル決済で店舗改革(1/2 ページ)

» 2019年12月25日 06時00分 公開
[小山安博ITmedia]

 東急、NTTデータ、東急カード、東急エージェンシーの4社が開発したコード決済機能を搭載した決済ソリューション「.pay(ドットペイ)」は、乱立するコード決済サービスの中で、既存のサービスとは異なる目的で開発されたものだ。.payのメリットと仕組みについて、東急とNTTデータの担当者に話を聞いた。

.pay 「.pay」
.pay 左から、東急の経営企画室マーケティング・IT推進グループ マーケティング担当の亀田一誠氏、同課長補佐の松藤京介氏、NTTデータ ITサービス・ペイメント事業本部カード&ペイメント事業部プラットフォーム統括部イシュイングソリューション担当課長代理の西山敦氏、同課長の伊藤寛氏

ハウスカードと同じ施策をスマホアプリで実現

 .payは、一般的なコード決済サービスではなく、「スマホ決済ソリューション」と位置付けられている。これは、コード決済の機能に加えて、ポイントやクーポンを自社サービスとして構築できるソリューションだからだ。

 これまでも紙やプラスチックカードを使った会員サービスを提供していた店は多いが、こうした各店の会員施策を、キャッシュレス、カードレスで実現できるのが.payとなる。ハウスカードと同様の施策を、スマートフォンのアプリで実現できるのが強みだ。

.pay 決済だけでなく、クーポン、ポイント機能も提供する

 他のコード決済サービスを導入し、会員専用アプリでポイントサービスを提供するという手法もあるが、その場合、会員専用アプリを起動してバーコードを読み込み、さらに決済アプリを起動してまたコードを読み込む、といった手間がかかる。.payの場合、こうした手間はなく、.payアプリが会員専用アプリとなり、そこに決済用コードが表示され、決済を行うとそのまま会員にポイントを提供できる。ポイントでの支払いもアプリから指定できるし、店側がクーポンを発行したら、これも決済時に自動的に適用される。

 東急の松藤氏は、「クーポンを使用する際やポイントを獲得したい場合も、レジで何も言わなくても自動的に使えるようにした」と説明。店側も会計時に会員カードを持っているか聞く必要もなく、客側も何も指定せずに支払えば、ポイントを獲得できてクーポンも使えるというわけだ。

 発行したクーポンやポイントは積極的に使ってもらって販促につなげてほしいというのが店側の期待だが、「デートでクーポンやポイントを使うのは……」として使ってもらえないと効果がないため、こうした仕組みにした。

.pay .payの特徴

.payなら加盟店が自社会員を抱えられるようになる

 最初に.payを導入したのは、東急グループ内の商業施設である渋谷スクランブルスクエア。11月1日に新オープンした商業施設の各店舗で利用できる。同施設の場合、採用したのはスクランブルスクエアなので、店舗ごとの会員サービスではないが、渋谷スクランブルスクエア全体で決済、クーポン、ポイントが共通して利用できる。

.pay .payの導入1号となった渋谷スクランブルスクエア
.pay 実際に決済をしている様子。ポイントやクーポンを指定しておけば、何も言わずに自動的に適用される

 東急自身は、グループ内に鉄道だけでなく商業施設やスーパーマーケットなどを抱えており、東急ストア、東急百貨店と業種業態がいろいろある。その中で東急ポイントという共通ポイントも提供しているが、こうした施策によって逆にそれぞれが個別で販促などの施策を打つことが少なくなってきていた。さらに東急は、複数の店舗を抱える百貨店などのように「加盟店を抱える企業集団」(松藤氏)という視点からマーケティング施策ができないか、という戦略を打ち出したのが出発点だったそうだ。

 そこで生まれたのが.payだ。「決済は必ず行われる動作」(同)であり、アプリ自体へのアクセスが増える。その結果、会員が増えて、しかも「それが自社の会員であることが重要」(同)だ。PayPayやLINE Payなどを導入しても、会員はこれら決済サービス事業者が持つ形になるが、.payなら加盟店が自社会員を抱えられるようになる、というのがポイントだ。

 ここで「.pay」という名前にもつながる。.pay自体が主ではなく、導入した店舗の名前を冠して「“東急ストアpay”のようになれる」というのが、こうした名称の意味だという。そうしたことから、東急グループに限らない展開を想定している。もともと何らかの販促アプリを持っていれば、そこに.payを組み込むことで、決済とクーポンやポイントを提供できるようになる。

 こうした仕組みのため、加盟店側が集めた会員は、その店の会員となる。「提携クレジットカードに近い」と松藤氏が言うように、決済の仕組み自体は.payが提供するが、ブランドはその店になり、会員もその店が管理することになる。

 企画自体は2〜3年前から始まったそうだ。当初は米スーパーチェーンのウォルマートを参考にしたという。同社はハウスカード戦略を打ち出しており、自社のカードで特典を提供して会員を増やす戦略だった。

 共通ポイントには送客の魅力はあるが、ハウスポイントは販促に使えばそれだけ自分の売り上げになる。使われなかったポイントも他社に流出することはないため、「粗利率を割らなければいくらでもポイント施策を打ち出して売り上げにつなげられる」(同)。これを松藤は「原価論」と表現し、そうした背景から生まれたのが.payだという。

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