KDDIは当面、LINEMO「3GB990円」対抗策は打ち出さず――まずは「でんきセット割」のUQモバイルに注力石川温のスマホ業界新聞

» 2021年08月06日 10時00分 公開
[石川温]
「石川温のスマホ業界新聞」

 菅義偉首相が雑誌のインタビューで携帯電話料金の値下げ政策について「倍の負担減が可能。あくまで道半ば」とコメントしたことが話題となっている。

この記事について

この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2021年7月31日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。


 この発言に対して、定例記者会見で質問された武田良太総務大臣は「公正な競争環境、さまざまなメニューをわかりやすくするなど、様々な手を打ってきた。過去に比べれば競争は活発になっている。乗り換えも進んでおり、新料金プランの加入者数は5月末時点で1570万となっており、軽減額を試算したところ、年間ベースで4300億円規模となった。一方、乗り換えを検討中の方も一定程度いる。乗り換えが進めば、負担軽減はさらに拡大するのではないか。

 国民が携帯電話料金の低廉化の恩恵を実感できるよう、乗り換えを円滑にするための公正な競争環境の整備に取り組みたい」とした。

 一方、キャリアはどう受け止めるのか。7月30日に決算会見を行ったKDDI・高橋誠社長は「雑誌は見ていないが、料金値下げによって、顧客に還元されていることは、競争の結果といえる。スイッチングコストを下げることで、お客様が移りやすくなり、その結果、4社が安い料金を出していく。当然これからも続いていく」とした。

 ちなみに、ソフトバンクがLINEMOブランドで投入した3GB990円のプランに対しては「すぐに手を打とうとは思っていない。新料金プランにはお客様の声や市場動向を見ながらしっかり対応していく。現在、UQモバイルのでんきセット割で990円プランを提供し始めており、お客様に評判も良く、加入してもらっている」としている。

 KDDIではオンライン専用ブランド「povo」を展開しているが、前回の決算会見では「100万契約が見えているところ」だったのが「約100万件」ともう少しで到達しそうな口ぶりであった。

 ただ、KDDIとしては、どちらかといえば、現在、プロモーション的にはpovoよりもUQモバイル推しのようで、povoにおいては、まだ様子見といった感が強そうだ。

 ちなみにKDDIでは値下げによる減収を年間6~700億円と見ている。これは5Gの普及によって上がる通信料収入を差し引きしたものとなる。将来的には5Gの普及によって、通信料収入が回復するのは間違いないだろう。そのタイミングについて高橋社長は言及しなかったが、「4Gスマホのユーザーに比べて、5Gスマホユーザーは倍のトラフィックが発生している」という。NetflixやYouTubeなどの動画コンテンツによって、トラフィックが伸びているようだ。

 5Gスマホが普及し、エリアも拡大すれば、それだけトラフィックが発生し、使い放題プランへの切り替えが進むはずだ。

 やはり、5Gスマホの早期の普及が、キャリアの収益回復に大きな影響を与えることになりそうだ。

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