では、なぜPixel 5aは展開する地域が2カ国に減ってしまったのか。Googleでハードウェアプロダクトマネジメントのバイスプレジデントを務めるブライアン・ラコースキー氏は、その理由として昨今の世界的な半導体不足を挙げつつ、次のように語る。「新型コロナ感染症で大きな問題が生じた。特にシリコン不足の影響が大きく、展開する地域を限定しなければならなかった。Pixelにとって、主要なマーケットに絞っている」。
半導体が不足したことにより、生産台数が減った結果、従来のように幅広い国や地域で販売するのが難しかったというわけだ。持ち運べる小型のコンピュータであるスマートフォンには、CPUやGPU以外にも数多くの半導体が使われている。Googleはいわゆるハードウェアメーカーとは立ち位置が異なり、販売規模も大きくはないため、調達に苦労した可能性がありそうだ。一方で、ラコースキー氏のコメントからは、日本がPixelにとって重要な市場になっていることも分かる。
実際、Googleの“日本優遇”は以前から続いている。初代の「Pixel」や2世代目の「Pixel 2」は発売が見送られたものの、「Pixel 3」を投入するにあたって日本独自仕様のおサイフケータイに対応。2020年10月のPixel 4a(5G)は、その他の国や地域より1カ月以上早く先行発売している。取り扱いキャリアが徐々に少なくなってはいる一方で、独占提供するソフトバンクは販売に力を入れており、Androidスマートフォンの中では売れ行きも好調だという。
ラコースキー氏が「大きな成功を収めた」という廉価版のPixel aシリーズは、中でも注目度が高い。例えば、調査会社BCNの運営するBCNランキングでは、2020年8月の発売初週にPixel 4aがAndroidの販売台数シェアでトップに躍り出たことが報じられている。BCNの調査はソフトバンク分だけの集計になり、Googleの直販は含まれていないため、実数はさらに大きくなる。グローバルでのシェアはSamsungやXiaomiといったメーカーにはまだ及ばないが、日本ではキャリアと緊密なタッグを組むことで、徐々に存在感を高めているといえる。
2019年10月に電気通信事業法が改正され、ハイエンドモデルの売れ行きにブレーキがかかる中、ミドルレンジモデルでコストパフォーマンスの高いPixel aシリーズがユーザーのニーズにしっかりフィットした格好だ。投入する端末の種類が年2、3機種で、取り扱うキャリアも少ないため、販売台数のシェアでは「その他」に含まれてしまうものの、徐々に存在感を高めていることがうかがえる。
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