日米ともにiPhoneのシェアがグローバル平均より高いことも、Googleが両市場を優先してPixel 5a(5G)を投入する隠れた理由の1つと考えられる。ある業界関係者は「なりわいである検索の広告収入を考えると、iPhoneの比率が高いのはGoogleにとってマイナス。Androidのシェアが(相対的に)低い国だからこそPixelを投入する意味がある」と指摘する。
iPhoneのSafariはデフォルトの検索エンジンがGoogleになっているが、この取り組みに対しGoogleはAppleと広告収入をシェアし、支払額は年間で1兆円にのぼると報じられている。iPhoneにはマップやカレンダー、iCloudをはじめとしたGoogleのサービスと競合する機能も多く、Googleにとってシェアが低いのは悩みの種といえる。
事実、日本は特にiPhoneのシェアが高い市場で、米国も傾向は近い。日本では、シェアをiPhoneとAndroidが二分している状況だ。調査会社・MM総研によると、2020年度通期のメーカー別出荷台数はAppleが9年連続で1位を獲得しており、シェアも45%と高い。Androidの方が55%とやや数は多いものの、Appleの牙城を切り崩せるには至っていない。米国でも同様で、50%前後のシェアがある。米調査会社Counterpointの公表するマーケットシェアを見ると、低い月で40%強、高い月で64%ものシェアを維持していることが分かる。
これに対し、グローバルではAndroidが圧倒的に強い。調査会社Gartnerが公表している2020年の出荷台数は、Appleが2位につけているものの、シェアはわずか14.8%。その他のメーカーはおおむねAndroidを採用しており、合計したときのシェアは85.2%にものぼる。Samsung以外のメーカーはAppleより出荷台数が少ないものの、HuaweiやXiaomi、OPPOなど一定規模のメーカーが上位にひしめきあっている上に、その他メーカーの数も多いからだ。欧州やアジアでは軒並みAndroidのシェアが高く、日本と米国の状況は例外的だ。
逆に言えば、日本や米国はGoogleが自ら乗り込み、シェアを上げていかなければいけない状況にある。出荷台数を稼げるミドルレンジモデルのPixel 5a(5G)を、優先的に投入しない手はない。GoogleのソフトウェアやAIの技術力を見せるショーケースとしての意味合いが強いフラグシップモデルに対し、ミドルレンジモデルは普及促進の役割を担っている。半導体不足で生産台数が限られる中、Pixelの売れ行きがよく、Androidのシェアが低い国を優先するのは自然な流れといえる。
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