菅首相、出馬断念で混迷する総裁選――通信業界に影響を与える次期総裁は誰か

» 2021年09月10日 10時00分 公開
[石川温]
「石川温のスマホ業界新聞」

 菅首相が総裁選の立候補を断念したことで、メディアは一斉に総裁選の行方に注目している。すでに岸田文雄前政調会長が立候補を表明済み。また、高市早苗前総務相、野田聖子幹事長代行も立候補に前向きだ。9月3日の菅首相立候補断念を受けて、河野太郎ワクチン担当相も出馬の意向を固めたとされる。

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この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2021年9月4日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。


 個人的には、やはり「次期総裁が誰になるかで、通信行政はどうなるか」が気になるところだ。菅政権時代には値下げ圧力によって通信業界は大いに振り回された。

 次期総裁が誰になるかによって、通信業界への影響がどうなるか予想してみた。

 まず、従来の路線を踏襲しそうなのが、高市早苗前総務相だ。総務大臣を2期も務めたこともあり、通信行政にはかなり詳しい。実際、高市前総務相とはBSフジのプライムニュースでご一緒したことがあり、通信市場における競争政策について議論させてもらったことがある。そのときには、かなり通信行政について勉強されているというか、官僚から相当なレクチャーを受けている印象であった。ただ、高市氏が総務大臣だった頃は、どちらかといえば総務省が競争政策を仕掛けるも手ぬるい感じがあり、キャリアの方が一枚上を言っており、劇的な改革が起きなかった印象がある。菅政権の武田良太総務大臣時代には、キャリアは逃げも隠れもできなくなり、大幅な値下げをせざるを得なかったが、高市総務大臣時代は牧歌的で通信業界的にも安泰な時期だった。

 仮に高市総裁が誕生し、総理大臣になったとしても、通信業界的にはさほど影響はないのではないか。

 一方、通信業界的に追い風となるかも知れないのが、河野太郎ワクチン担当相だ。先月、発売された著書「日本を前に進める」(PHS新書)にデジタルの章を設けるなど、デジタル関連には明るい人であるのは間違いない。

 その著書では、通信関連について具体的な記載はないが、過去を振り返ってみると2017年に、COCOAアプリを主導した平将明・前内閣府副大臣と、IT系メディアではおなじみの小林史明元総務大臣政務官とともに「公共用周波数の民間開放に関する緊急提言」なんてのを出しているのを発見した。

 公共用周波数の資産価値は7.4兆円と試算し、少なくともその半分である3.7兆円分を開放。また、周波数割り当て行政の体制見直しを訴えている。

 小林史明元総務大臣政務官はかつて「警察などの公共無線もLTE回線化して、公共用周波数をもっと開放すべし」と訴えていたこともある。

 菅首相時代は通信料金にメスが入ったが、河野総裁が誕生すると、電波行政に対して大なたが振るわれるかも知れない。

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