欧州連合(EU)の欧州委員会が、スマートフォンなどの充電機器の端子についてUSB Type-Cに統一する法案を公開した。事実上、アップル・iPhoneが採用するLightning端子は排除されることになる。欧州委員会としては買い換えによる廃棄物を減らす狙いがあるとしているが、アップルは「技術革新を抑制し、欧州の経済や消費者に悪影響を及ぼす」と反発している。
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2021年9月25日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。
そもそもアップルはなぜLightning端子を続けるのか。今週、発売となったiPhone 13もLightning端子のままだ。
おそらくアップルとしては「表裏、どちらに刺しても使えるし、いまのところはこれで充分なのでは」というスタンスのようだ。すでに世界中に何億というLightning端子を採用するデバイスが存在し、サードパーティによる対応周辺機器も多い。これを変更することは影響が大きいという判断のようだ。
ただ、一方でiPad miniではLightning端子を廃止し、USB Type-Cに切り替えた。MacBookシリーズもUSB Type-Cだ。iPad ProでUSB Type-Cを採用した理由としては「周辺機器との接続性を考慮した」というのがあった。つまり、iPad Proをパソコンライクに使えるよう、USB Type-Cに切り替えて、周辺機器と接続しやすくしようとした、というわけだ。
そう考えると、iPhoneは電話機なので、周辺機器との接続性はあまり考慮する必要はない。わざわざ、USB Type-Cに切り替える理由はないというわけだ。
アップルがUSB Type-Cを嫌う理由で最も可能性として高そうなのがライセンスビジネスへの影響だ。周辺機器メーカーがLightning対応のケーブルを作るにはMFi(Made for iPhone)という認証が必要で、取得するにはライセンス料が発生する。これを逃したくないというのが、アップルの本音ではないだろうか。
欧州でUSB Type-Cへの一本化が法律化されれば、アップルはiPhoneでLightning端子を諦める可能性もあるだろう。しかし、欧州委員会とアップルとの充電器統一化の戦いは、それこそ10年以上、揉めており、かつてはmicroUSBへの統一化で合意したはずが実現はしなかった。
もう一つの可能性としては、アップルがLIghtningを辞める一方で、USB Type-Cは搭載せず、Magsafeでの充電にしてしまうことも考えられる。Magsafeで高速に充電できれば、USB Type-CやLightning端子は不要になる。
かつて、ヘッドフォンジャックを廃止したアップルだけに、充電端子もなくしてしまうと言う技術革新をしてもおかしくない。
データのやりとり自体はAirDropでもできてしまうだけに、可能性はゼロではないだろう。
穴がなくなれば、それだけ防水性能も高まり、製造もしやすくなる。
確かにLightning端子は登場してから、もうすぐ10年になろうとしており、古くなり始めた技術であることは間違いない。果たして、アップルは欧州委員会からの圧力にどのように対抗するのだろうか。
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