総務省、NTTグループ各社に定期的なサービス利用料金のデータ提出などを要請 会食問題に関連して

» 2021年11月01日 14時00分 公開
[作倉瑞歩ITmedia]

 総務省は11月1日、NTT(日本電信電話)やNTTグループ各社に対して「公正な競争条件の順守」「電気通信事業法などに基づく規律の順守」といった要請を行った。

 今回の要請は、10月12日に公正取引委員会が提出した「携帯電話市場における競争政策上の課題について(令和3年度調査)」と、NTTによるNTTドコモ完全子会社化に関連するものとなっている。総務省が行った要請の概要は以下の通りだ。

総務省NTT要請 要請の冒頭

電気通信事業法などに基づく規律の順守

 公正取引委員会が提出した報告書の内容を踏まえ、NTTグループ各社が電気通信事業法などの規律の順守を徹底することを要請している。特にNTT東日本/NTT西日本(以下「NTT東西」)に対しては、電気通信事業法第30/31条(他の事業者との適正な競争関係の維持、事業者を子会社化する際の他事業者との競争関係の維持)の順守を徹底することを強く要請している。

 NTTコミュニケーションズ(NTT Com)については、新たに「特定関係事業者」として指定されるドコモとの関係について、連携強化が予定されている面でも法律を順守させることを求めている。

公正競争条件の順守

 事業分離やNTTグループの再編などで求められてきた公正競争条件は、法改正などで精度の調整が図られており、引き続き順守する必要があるとしている。

 ドコモはグループ内の事業再編に伴い、NTT Comのネットワーク事業を継承する方針を示している。その際、NTT東西とNTT Comのと間に定められている公正競争条件については、新たにNTT東西とドコモの間でも適用される(順守する必要がある)べきだとしている。

禁止行為の規制順守に関するデータ提出

 NTT東西とドコモが法律で禁止されている行為を行っていないかを検証するため、毎年度総務省へデータ提出を求める。データの内容は市場環境の変化などで変わるとされているが、今回の要請では以下のデータを提出するように示している。

  • NTT東西局舎スペースの利用に関する検証に必要なデータ
    • スペースや電力の利用が少ない状況が3年以上継続している局舎、および直近1年間に少なくなった局舎について、利用申し込みの対応結果や提供料金などの対応状況など
  • グループ間取引を通じた禁止行為のくぐり抜けを検証できるデータ
    • 直近1年間のNTT東西からNTTグループ各社に渡り、その後NTTグループ各社へ再度卸されている、契約数が3万件以上の光ファイバーの仕入れ価格や再卸価格。およびドコモからNTTグループ各社に卸され、その後総務大臣が指定したドコモ特定関係法人に再度卸されているMVNO回線の仕入れ価格や再卸価格。
  • NTT東西が行う各種手続きについての発注から完成までにかかった時間(リードタイム)を検証できるデータ
    • 直近1年間の、NTT東西が加入/中継する光ファイバーの申し込みを受けてから提供を始めるまでの、NTTグループ各社と他事業者のうち、主要な接続事業者別の経過時間の平均。およびNTT東西が光サービス卸の申し込みを受けてから、提供を始めるまでのドコモと他事業者のうち主要なサービス卸先事業者別の平均日数。
  • NTT東西のネットワーク機能に対する要望などに関する検証ができるデータ
    • 直近1年間における、NTT東西に対する新たな機能の要望への対応について、事前調査の申し込み回答や接続申し込みの回答状況。および直近1年間にNTT東西が拡大した光通信エリアにおいて、各事業者へ情報を開示する前にドコモから光ファイバーの接続申し込みを承諾した事例。
総務省NTT要請 総務省が求めている報告内容

NTT東西のネットワーク調達状況の監視

 NTT Comのネットワークがドコモに移管された場合、NTT東西のネットワーク調達で公正な競争が妨げられないかを注視するため、総務省にNTT東西のネットワーク調達に関わる取引状況のうち、県間通信設備の調達状況を報告するよう求める。

ドコモの財務状況の透明性確保

 ドコモが上場廃止した後でも、ドコモ以外のMNO各社が公表するデータとの比較検証を行うために必要な情報は公開されるように要請している。公正な競争の確保という観点から、ドコモに対して期別の売上高や利益率、ARPU(ユーザー1人あたりの売上高)の公表を求めている。

利用者利益の確保と市場の活性化

 NTTグループ各社に対し、以下の条項の順守に努めさせる。

  • ドコモ完全子会社化に伴うグループ間の連携で生まれた相乗効果を通じ、ユーザーがより使いやすく安価なサービスや料金を提供すること、および産業の国際競争力を強化すること。
  • NTT東西が「ワイヤレス固定電話」(NTT東西のIPネットにモバイル回線を活用した電話サービス)の調達手続きを実施する場合、法令を順守し、適正性を確保すること。
  • NTT東西が県と県の間の通信設備を調達する場合、前述の要請に則って透明性と公平性を確保すること。
  • 共同調達を実施する場合、8月に総務省が策定した「日本電信電話株式会社、東日本電信電話株式会社および西日本電信電話株式会社に係る共同調達に関する指針」にのっとること。
  • NTT東西によるローカル5G導入にあたっては、2019年12月に総務省が策定した「ローカル5G導入に関するガイドライン」(PDF形式)にのっとること。

将来的なネットワークの統合に伴う課題

 今後「IOWN」(Innovative Optical and Wireless Network、次世代のネットワーク構想)などの構築にあたり、その設計上光ファイバーなどの設備単体での提供やさまざまな機能単体での提供も含め、サービスの分離などが不可能とならないようにすることに加え、ネットワークを利用する意思がある他事業者が必要な機器を調達した上で、ネットワークを構築した事業者と同時にサービスを開始できるよう取り組むように求めている。

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