ITmedia Mobile 20周年特集
コラム
» 2021年12月28日 17時00分 公開

当時は“世界最先端”だった――日本の「ケータイアプリ」の歴史を開発目線で振り返るITmedia Mobile 20周年特別企画(1/4 ページ)

昔のケータイ(フィーチャーフォン)は、「Java」または「BREW」で構築したアプリを楽しむことができました。かつて「ケータイ向けWebブラウザ」に携わっていた筆者が、かつてのケータイ向けアプリを開発目線で振り返っていきます。

[島田純ITmedia]

 ITmedia Mobileの創刊20周年、おめでとうございます。

 20年前といえば、NTTドコモが「iアプリ」のサービスを提供を開始した頃合いでもあります。スマートフォンが主流になった今、携帯電話にアプリを入れることは当たり前のことですが、当時のiアプリは非常に“画期的”なことだったのです。

 筆者はかつて、ケータイ(フィーチャーフォン)向けのアプリ開発に携わっていました。そのことを知っているITmedia Mobileの編集担当者は、筆者に「ケータイアプリを“開発目線”で振り返ってほしい」とリクエストしてきました。

 そのリクエストに応えるべく、この記事ではケータイアプリを主に“開発”面から振り返っていきます。なお、記事中の会社名やアプリ名は特記のない限り登場当時のものを掲載します。

N900i スクウェア・エニックスの「ドラゴンクエスト」アプリがプリインストールされていたNTTドコモの「FOMA N900i

キャリアごとに異なった「アプリ」の仕様

 今からちょうど20年前の2001年、NTTドコモが「iアプリ」対応のケータイを発売しました。これが、日本のケータイにおけるアプリ対応の“原点”です。

 当時のケータイは、ハードウェアとネットワークの両面でリソースが非常に限られていました。そのこともあり、アプリの配信方法や容量など、キャリアはさまざまな制限を設けていました。

 iアプリを例に取ると、最初期のバージョン(DoJa-1.0)ではアプリ本体の容量は圧縮後で最大10KBとされていました。MB(メガバイト)ではなくKB(キロバイト)です。10KBは半角文字にすると約1万文字に相当します。ファイルの圧縮を前提としているとはいえ、その容量は非常に少なかったのです。

 この容量制限は、ハードウェアやネットワークの進化と共に緩和されていきました。2011年に策定されたiアプリの最終バージョン(Star-2.0)に準拠するアプリでは、アプリ固有のデータ領域「ScratchPad(スクラッチパッド)」を含めて最大10MBと、最初期バージョンの1万倍にまで増えました。

DoJa iアプリの初期に使われていた「DoJa(ドゥージャ)プロファイル」では、アプリ本体の容量が厳しく制限されていました。そのため、ScratchPadも活用して容量の少なさをカバーしていました。DoJaプロファイルの最終バージョン「DoJa 5.1(5.1LE)」では、アプリ本体とScratchPad合算で最大1024KB(1MB)のアプリが作れるようになりました(出典:NTTドコモ、PDF形式、FOMAケータイ向けの仕様)
Star DoJaプロファイルの課題を解消すべく、ドコモは2008年冬モデルからiアプリのプロファイルを「Star」に一新しました。iウィジェット専用アプリ(ミニアプリ)を除き、Starプロファイルではアプリ本体とScratchPadの容量を合算で計算するようになり、最終バージョンである「Star-2.0」では最大1万240KB(10MB)のアプリを作れるようになりました(出典:NTTドコモ、PDF形式)

 ケータイ時代のアプリを大きく2つに分けると、公開された仕様に基づいて開発者が自由にアプリを開発・配布できる「勝手アプリ」と、各コンテンツ提供会社がキャリアに許可をもらって提供する「公式アプリ」がありました。携帯向けのWebサイトでも「勝手サイト」「公式サイト」という分類がありましたが、アプリにも同様の区分けはあったわけです。

 勝手アプリは、キャリアがその開発や配布をコントロールできません。先述の通りネットワーク環境もぜいたくではなかったこともあり、勝手アプリには以下のような制限が課されていました。

  • 電話機内部の情報(電話帳やメールなど)へのアクセスを禁止
  • GPSやネットワークを利用した測位機能へのアクセスを制限
  • 1回のアクセス要求で取得できるデータ容量の制限

 詳しくは後述しますが、ケータイのOS(ソフトウェア)の仕様から、勝手アプリの動作をしばらく禁止せざるを得なかったキャリアもあったくらいです。

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