ITmedia Mobile 20周年特集

当時は“世界最先端”だった――日本の「ケータイアプリ」の歴史を開発目線で振り返るITmedia Mobile 20周年特別企画(3/4 ページ)

» 2021年12月28日 17時00分 公開
[島田純ITmedia]

au:勝手アプリに一番“厳しい”方針も次第に緩和

 au(KDDIと沖縄セルラー電話)では、「EZアプリ」というケータイ向けアプリサービスを展開していました。

 最初期はJava(MIDPプロファイル)に準拠した「ezplus」を展開しており、勝手アプリの動作にも対応していました。ボーダフォンが「勝手アプリも要審査」とすることでセキュリティを確保していたのに対して、auではプライバシーに関わる機能にアクセスするためのAPIを公式アプリにのみ利用を認める(一般公開しない)ことでセキュリティを担保していました(iアプリにおける「iアプリDX」と同じ考え方です)。

Javaケータイ auで初めてアプリに対応した「C451H」と「C452CA」。「ezplus」(後に「EZアプリ(Java)」)という名称でMIDP準拠のJavaアプリに対応していました

 その後、auは2003年春モデルから、ケータイ向けのアプリを米Qualcommが提唱する「BREW(ブリュー)」というプラットフォームに移行し始めました。Javaベースのアプリと区別しやすくするために、BREWベースのアプリは「EZアプリ(BREW)」という名称で提供されることになり、Javaベースのezplusは「EZアプリ(Java)」と改名されることになります。

 BREWは、同じくQualcommが開発した「REX OS」で稼働する端末上において“ネイティブに”動作することが特徴で、仮想マシン(VM)を挟んで実行されるJavaアプリよりも高速かつリッチに動くことがメリットです。ただ、見方を少し変えると、アプリがネイティブに動作するということは、アプリの不具合が端末に悪影響を与えうるというデメリットを抱えていることにもなります。

 アプリの不具合を未然に防ぐと同時にセキュリティを確保する観点から、auはBREWベースの勝手アプリを一切許可しませんでした。BREWアプリ対応の端末では公式アプリしか楽しめなかったのです。

 さらに、EZアプリ(BREW)には1アプリにつき1日最大3MBの通信容量制限が設けられていました。実はこれ、EZアプリ(Java)から“引き継いだ”制限でもあり、通信を多用するアプリの開発を困難にする原因にもなりました(後に一部機種を除き1日最大6MBに緩和されます)。

 当時のKDDIは、この制限を不正なアプリ(≒大量通信を行うアプリ)の開発を防ぐための措置と説明したのですが、通信インフラが今ほど強固ではなかった当時において、設けざるを得なかった制限だったともいえます。ただし、このような通信容量の制限は他キャリアのJavaアプリにはありません(※1)。

(※1)iアプリやS!アプリにも「1回の通信リクエストでやりとりできるデータ容量の制限」はありますが、通信容量の総量制限はありませんでした

 auケータイにおいて勝手アプリが動かなくなったことは賛否両論を巻き起こしました。先述の通り、BREWベースのアプリは高速かつリッチに動作します。特にゲームアプリではその恩恵にあずかれる場面も多かったのですが、個人が作った勝手アプリを使えなくなったことで困る人もそれなりにいました。アプリの「自由さ」を求めて、auからドコモやソフトバンクに乗り換えた人もいたように記憶しています。

W21S EZアプリ(BREW)への移行を本格的に行った2004年夏モデルの1つである「WIN W21S」。BREWアプリはJavaアプリよりも高パフォーマンスかつリッチだった反面、制限が厳しく勝手アプリも許されなかったことから「自由」を求めるユーザーには不評でした

 個人が作ったアプリも使いたい――その声に応えるべく、auでは2007年春モデルから「オープンアプリプレイヤー」を搭載するようになりました。

 大ざっぱにいうと、オープンアプリプレイヤーはBREWアプリとして実装されたJava VMで、MIDPプロファイルで作られたJavaアプリを動かせることが特徴です。auケータイで再び勝手アプリを動かせるようになったのです。

 オープンアプリプレイヤーはBREWアプリの1つとして実装されています。ゆえに全てのJavaアプリが「1日当たり3MBまで」の通信容量制限を共有することになってしまいました。あるJavaアプリが3MB通信すると、日付が変わるまで別のJavaアプリでは一切通信できなくなったのです。

 しかも、オープンアプリプレイヤーではJavaアプリが通信しようとするたびに確認ダイアログが出てきてしまうという問題もありました(参考記事)。Webブラウザや他のアプリとは異なり「許可する(以後確認しない)」という選択肢がなかったため、通信を多用するJavaアプリを使うと「便利さ」よりも「うっとうしさ」が勝る場面も少なからずありました

オープンアプリプレイヤー オープンアプリプレイヤーによってJavaアプリを再び実行できるようになりましたが、特に通信面で制約が厳しいことが足かせでした

 2009年秋冬モデル以降、オープンアプリプレイヤーの「非搭載」機種が一部に登場しましたが、2010年秋冬モデルから「EZアプリ(J)」として一新され、その後の3Gケータイでは継続的に搭載されました。これと同時に、EZアプリ(BREW)は「EZアプリ(B)」に改称されました。

 EZアプリ(J)は公式アプリでの利用も想定されており、アプリの最大容量が拡大された他、間接的ながらSDメモリーカードへのアクセスもサポートされました。1日当たりの通信容量制限も撤廃されたため、ある程度リッチなJavaアプリを実行できるようになりました。ただし、通信をする度に必ず確認が入る仕様はオープンアプリプレイヤーから引き継いでいます。

 EZアプリ(B)の配信は2018年3月31日をもって終了していますが、公式サイト外にあるEZアプリ(J)は、3Gケータイのサービス終了日(2022年3月31日)まで引き続き利用できます。あと、約3カ月で終息です。

仕様書 EZアプリ(J)に対応する機種は、2022年3月31日まで利用できます。そのこともあってか、EZアプリ(J)の仕様書は、まだWebで公開されています

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