ITmedia Mobile 20周年特集

当時は“世界最先端”だった――日本の「ケータイアプリ」の歴史を開発目線で振り返るITmedia Mobile 20周年特別企画(2/4 ページ)

» 2021年12月28日 17時00分 公開
[島田純ITmedia]

3Gケータイのアプリ事情を振り返る

 冒頭で触れた通り、筆者はかつてケータイアプリの開発に携わっていました。サービスの遷移で例えると、各キャリアが3G(第3世代移動通信システム)の通信サービスを提供し始めた頃から、LTEが商用サービスとして登場する頃くらいまでです。

 ひと言で「ケータイアプリ」といっても、NTTドコモ、au(KDDIと沖縄セルラー電話)、そしてボーダフォン(現在のソフトバンク)では仕様が異なり、アプリの開発に当たっては結構骨が折れました。そこで、3キャリアの3Gケータイにおけるアプリ仕様の違いについて振り返ってみようと思います。

NTTドコモ:勝手アプリの自由度が一番高かった

 ドコモのiアプリは、他社と比べると勝手アプリに対するスタンスが柔軟です。

 プラットフォームは米Sun Microsystems(現在の米Oracle)が開発した「Java」をベースとしているのですが、アプリをiモードケータイに最適化しやすくする観点から独自のプロファイルを採用しました。この独自プロファイルには「DoJa(ドゥージャ)」と「Star(スター)」の2種類があり、より新しいStarプロファイルを使うと、古い機種では動作しない代わりによりリッチなアプリを開発できます。

 独自プロファイルの仕様書はWebで公開されている上、何よりアプリを自由にインターネット上に公開できることから、他キャリアのケータイと比べると勝手アプリが充実していました

iモード iモードケータイで稼働する「iアプリ」は、今でも“現役”なので、2021年12月現在もWebサイトで仕様書などが公開されています

 とはいえ、2000年代前半は、ケータイ向けのWeb検索サービスはそれほど普及していませんでした。SNSもそれほど普及していなかったこともあり、ユーザーが個人開発のアプリにたどり付くチャンスはそれほど多くなかったことも事実です。たどり着けたとしても、当時のデータ(パケット)通信は単価が高かったため、高機能なアプリをダウンロードしたり使ったりすると通信料がかさむという問題がありました。

 データ通信という面では、iモードのデータ通信を月額3900円(税別)で定額利用できる「パケ・ホーダイ」が2004年6月に登場したことで状況は改善しました。しかし、当初は月額6700円(税別)の「FOMAプラン67」以上の料金プランを契約していないと加入できなかったため、出費的な意味ではやや厳しい状況は変わりませんでした。料金プラン制限の撤廃は、2006年3月まで待つことになります。

パケ・ホーダイ 2006年3月、FOMAの全ての音声プランでパケ・ホーダイに加入できるようになりました。適用可能な割引を全て適用すると、5900円(税別)からデータ定額を利用できるようになりました

 iアプリは、2021年11月30日をもって公式サイトでの配信は終了しましたが、公式サイト外で配布されている勝手アプリはFOMAのサービス終了まで引き続き利用できる見通しです。

ソフトバンク:勝手アプリも“要審査”

 ボーダフォンの「Vアプリ」、ソフトバンク(ソフトバンクモバイル)の「S!アプリ」(以下まとめて「S!アプリ」)は、iアプリと同じくJavaをプラットフォームとして採用しました。ただ、iアプリとは異なり、Sunがモバイル(携帯電話)向けに規定した「MIDP(Mobile Information Device Profile)」に準拠しています。そのため、海外のケータイ向けに開発されたJavaアプリを移植しやすいというメリットがありました。見方を変えれば、S!アプリは海外のケータイ向けに移植しやすいという利点もあります。

 ただし、セキュリティを担保するために、S!アプリでは「コンテンツアグリゲーター(CA)」による審査を経なければ勝手アプリを公開できないという制約がありました。CAはソフトバンクが公認した勝手アプリの配信事業者で、承認されると審査したCAを通して配信されます。

 大手のCAとしてはベクターとバンダイネットワークスの「週刊アプリLive/週刊ゲームLive」や、スパイシーソフトの「アプリ★ゲットV!(アプリ★ゲットS!)」がありました。一部の例外を除き、審査は無料で受けられたため、iモードよりも数は少ないものの、そこそこ多くの勝手アプリがありました。

 しかし“審査”がある故に、CAの意向で公開できない(≒審査が却下される)アプリも少なからずありました。キャリアが直接審査するわけではないにも関わらず、(状況証拠的に)キャリアのポリシーと合致しないゆえに審査に通らないケースもあったようです。

 そんなS!アプリですが、2020年3月24日をもって提供を終了しました。それに伴い、同日をもって勝手S!アプリも配信を終了しています。既にダウンロードしてあるアプリは引き続き使えますが、一度削除すると二度とダウンロードできません。

ソフトバンク ソフトバンクは2020年3月24日をもってS!アプリ(Vアプリ)の配信を終了しました。CAを介して配信されていた勝手アプリも同様に配信できなくなりました(参考リンク

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