一般的なスマートフォンとしてのBALMUDA Phoneについても見ていこう。
基本的には、サブの2台目スマホ、ガラケーに近い通話中心の用途向けに開発されたと思われるコンパクトモデルだ。そのため、ディスプレイは4.9型と今どきのスマホとしては小さく、インカメラを画面内に内蔵したことでアプリの縦方向の表示領域がより狭くなっている。「LINE」や各種SNSなどの利用は可能だが、今どきの縦長スマホを想定した画面レイアウトのアプリはやや使いづらく感じる。あと1行分縦長か、インカメラをディスプレイの外に搭載してほしかった。
バッテリーは2500mAhと今どきのスマホとしては控えめだが、サブ端末としてアプリを積極的に使わないなら、電池持ちで不便さを感じなかった。ただ、メインのスマホとして使うなら3000mAh以上は欲しいところ。充電はUSB Type-C端子から行え、ワイヤレス充電にも対応する。
搭載するチップはミドルクラスのQualcomm製Snapdragon 765、メインメモリは6GBだ。ストレージは128GBのものを搭載する。ベンチマークも相応の結果だ。これだけの性能なら大半の一般アプリは快適に動く。だが、10万円台の製品ならより高性能なチップが欲しい一方、サブ機ならもう少し低スペックのチップを採用して価格に反映した方が良かったようにも思える。
カメラは4800万画素Quad Bayerセンサーを搭載し、1200万画素で記録する。通常の撮影に加え、メニューから料理や夜景モードなどに切り替え可能だ。ただ、各モードで撮ると料理は見栄えはコントラストや彩度が強め、夜景も明るいが手ブレに弱い印象を受ける。いずれも標準モードで撮影し、後から画像編集した方が手ブレも少なく無難という印象だ。10万円のスマートフォンでこのカメラ性能は明確な欠点といえる。
一方、800万画素インカメラは感度が良く画質も比較的良好だ。画面が大きければビデオ会議も快適に利用できただろう。
BALMUDA Phoneの評価だが、初参入の製品としては品質が良くコンセプトもある程度うまく形にできている。だが、スマートフォンとして評価するには厳しい部分が多い。
まず、スマートフォンの本質である「アプリを快適に使うための機器」として見た場合、性能と10万円台の価格は見合っておらず厳しい評価となる。各社が今販売しているスマートフォンはまずこの要素で競争し、その上でカメラやデザイン、サービス価値に関する壮絶な競争にさらされて販売されている製品だからだ。
既存のスマートフォンと異なるモデルが欲しいという需要も理解できるが、2021年は2つ折りやカメラ特化など個性的かつ機能面での価値も兼ね備えたスマートフォンが数多く販売された年だけに、投入タイミングも悪かった。
また、日本の中高年から高齢者で、デジタル機器やネットサービスと距離を取っており、スマートフォンの利用も通話やメール、LINEあたりまでという人に対して、外観やアプリのデザインを含め、ある程度刺さるのは確か。だが、画面サイズは対象層の高齢化もあり、通話やメールがメインでも小型化に振らない方が良かったのではないだろうか。同じようなサイズ感でシニア層を対象としたスマートフォンは、富士通や京セラが競争力の高いモデルを販売している。
10万円台という価格だが、これを青山や百貨店内のバルミューダのブランドショップで購入した上で、実際には存在しないが「店頭でLINEやキャリアメールを含むサポートも利用できる」といった内容であればアリだったかもしれない。
「惜しい」と思ったのはそれだけではない。バルミューダのスマホ市場参入は非常に話題になったが、ニッチかもしれないが新しい視点の製品に期待が寄せられていたのではないだろうか。
過去にはデザインケータイの流れで、ドコモのNEC製「705i」のようにデザイン家電のamadanaが手掛けたモデルもあった。近年の例だとシャープ製「AQUOS R6」とライカ「LEITZ PHONE 1」のように、別のモデルとの兄弟モデルであることが多い。ケータイとスマホでは求められるデザインの余地や意味合いは全く異なるが、バルミューダの初期の発表時はこういった取り組みを想像した人も多いだろう。
だが、今回のBALMUDA Phoneは一般的なスマートフォンと大幅には変わらず、ここ10年で撤退した日本のスマートフォンの再発明という印象だ。
とはいえ、「シンプルに使えるスマートフォン」を目指している姿勢は見える。弱点になりがちな独自アプリも、詳しい人が使いこなすには物足りないが品質は良好だ。バルミューダがスマートフォンで実現したい価値を、今後のアプリや製品の展開で見られることに期待したい。
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