BALMUDA Phoneの技適問題、新規参入メーカーが起こしがちなトラブルとは事情が違うワケ石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)

» 2022年01月15日 08時00分 公開
[石野純也ITmedia]

 バルミューダ初のスマートフォンとして登場した「BALMUDA Phone」が、1月上旬から販売を停止していた。同モデルの製造を担当した京セラが、バルミューダとソフトバンクの2社に「技術適合証明(技適)の認証に関して確認すべき事項が生じた」と連絡したためだ。1月13日には、この確認事項が干渉ノイズの許容値であることが明らかになった。14日には、バルミューダはBALMUDA Phoneに対し、ソフトウェアアップデートの提供を開始。同時に端末の販売も再開した。

 スマートフォン市場に新規参入した起こした技適を巡るトラブルといえば、楽天モバイルの「Rakuten Mini」が記憶に新しい。UPQの「UPQ Phone A01」が技適取得前に出荷され、全回収になったことを覚えている人もいるだろう。新規参入のメーカーが起こしがちな技適のトラブルとひとくくりにされがちだが、取材を進めると、BALMUDA Phoneのケースは少々事情が異なることも見えてきた。

BALMUDA Phone 技適に確認事項が生じたとして、販売を一時停止していた「BALMUDA Phone」。14日に販売を再開した上で、ソフトウェアアップデートも開始された

干渉ノイズの許容値をオーバー、発覚の経緯は?

 BALMUDA Phoneのメーカーはバルミューダとうたわれているが、参入表明当初から明かされていたように、製造は携帯端末メーカーの老舗ともいえる京セラが担当している。時系列に見ていくと、まず京セラが干渉ノイズの許容値を超えている恐れがあることに気付き、バルミューダとソフトバンクの2社に連絡。その後、1月7日にはBALMUDA Phoneの販売が一時停止された。発表はなかったが、店頭での情報がネットで広まり、1月9日ごろにメディア各社が第一報を掲載した。

BALMUDA Phone ソフトバンクオンラインショップでは、13日まで「在庫なし」のステータスになっていた。本稿執筆時点では購入可能

 当初は原因が不明だったが、1月13日にはバルミューダ、京セラ、ソフトバンクの3社がプレスリリースを掲載。問題の原因が、干渉ノイズの許容値超過にあることが分かった。京セラによると、TD-LTEのBand 41(2.5GHz帯)の一部で、技適の規定よりも多くの干渉ノイズが発生する恐れがあったようだ。ただし、許容値を大幅に超えるような差ではなく、「通話やデータ通信などには影響がない」(京セラ 広報室)という。

 一方で、干渉ノイズが許容値を超えてしまうと、技適の認証条件を満たしていないことになるのも事実だ。そのため、バルミューダとソフトバンクは、既存のユーザーに対し、必ずソフトウェアのアップデートすることを求めている。1月14日から販売が再開されているBALMUDA Phoneについては、最新のソフトウェアが適用された状態になっているという。

BALMUDA Phone バルミューダ、ソフトバンクだけでなく、製造や認証の取得を行った京セラも、ソフトウェアアップデートを促すプレスリリースが掲載した

 過去にも技適を巡るトラブルはあったが、干渉ノイズの許容値の違いにユーザーが気付くのは不可能だ。使用感や端末上に表示されるような値で分かる違いではないため、製造したメーカーですら、出荷後に見抜くのは難しいだろう。では、なぜこの不備が発覚したのか。京セラによると、「さまざまな端末を開発する中で適宜技術検証を行っている」といい、その過程でBALMUDA Phoneの問題が見つかったという。

 「(BALMUDA Phoneは)認証を得てはいたが、再度確認したところ、申請データの一部に不備があったことが分かった」(同)というのが、発覚の経緯だ。ケアレスミスで干渉ノイズの許容値を間違え、気付かずにデータを提出したところ、なぜか技適が取れてしまったということだろう。別の端末を開発する際の技術検証で発覚して、自己申告で修正をしたというのが一連の経緯だ。本来、不備のあるデータは認証機関が弾いてメーカー側に修正を依頼すべきだが、ここでも見逃されてしまった可能性が高い。

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