総務省の施策で本当に“乗り換え”は進むのか? MVNO復活に必要なこと(前編)モバイルフォーラム2022(1/3 ページ)

» 2022年04月04日 13時42分 公開
[房野麻子ITmedia]

 テレコムサービス協会 MVNO委員会は3月18日、「モバイルフォーラム2022」をオンラインで開催した。MNO各社において新たな料金プランの導入が発表された中、MVNOの果たすべき役割とあるべき競争環境の姿などについて、「リベンジ・今こそMVNOに乗り換える〜GoTo MVNO2.0〜」をテーマに基調講演やパネルディスカッションで議論が行われた。ここではパネルディスカッションの前半をレポートする。

 パネルディスカッションは、「激動が続くモバイル市場 MVNOが復活を果たすために必要なことは?」と題し議論を進めた。パネリストは、野村総合研究所パートナーの北俊一氏、スマートフォン/ケータイジャーナリストの石川温氏、スマートフォン/ケータイジャーナリストの石野純也氏、テレコムサービス協会 MVNO委員会委員長でインターネットイニシアティブ 常務取締役の島上純一氏。モデレータはITmedia Mobileの田中聡編集長が務めた。

モバイルフォーラム2022 パネルディスカッションに登壇したメンバー

2021年の携帯電話業界を振り返る

 2020年末に起こった政府から携帯電話事業者への値下げ要請によって、2021年は市場が大きく動いた。MNOからahamo、povo、LINEMOといったオンライン専用プランが登場し、Y!mobile、UQ mobileなどサブブランドも強化された。さらにメインブランドでも値下げが行われるなど、動きが非常に活発だった。

 この動きがMVNOに与えた影響も計り知れないものがある。パネルディスカッションでは、2021年に携帯電話業界で何が起きたかを振り返り、今後、MVNOへの乗り換えをさらに促進するために、どんな施策やサービスが必要なのかを議論していった。

 2021年には、3月に大手3キャリアがオンライン専用プランを開始した。ソフトバンクとKDDIはサブブランドも強化。4月には楽天モバイルが料金プランを0円から使える「Rakuten UN-LIMIT VI」に改定し、4キャリア全てで料金の低廉化が進んだ。

 ICT総研が行った「2022年1月 スマートフォン料金と通信品質の海外比較調査」によると、2GBと20GBのプランでは諸外国比べて日本が一番安く、5GBと無制限プランに関してもイギリスに次ぐ安さになっている。世界的に見ても、日本の携帯電話の料金は大幅に安くなった。

モバイルフォーラム2022 2021年は大手キャリアが料金を値下げ。その影響でMVNOの契約数が落ち込んだ

 大手キャリアの料金値下げは、ユーザー目線では非常に喜ばしいことだが、MVNOの振興という面ではマイナスだ。MM総研が行った「国内MVNO市場調査」では2021年にMVNOの契約数が大幅に落ち込む事態になっている。この中には楽天モバイルのMVNOからMNOへの移行も含まれているので、一概にMVNOからユーザーが流出したとは言い切れない部分もあるが、影響は小さくない印象だ。

ahamoは「非常に強烈」「攻撃的」だった

 大手キャリアのスマートフォン料金が世界と比べても低廉化したことについて、石川氏は「予想通りの結果」とコメント。

 「総務省が、20GBという数字で比較をしているので、各社は20GBのプランを作って安く見えるようにしている。20GBプランはユーザーが望んでできたわけではなく、あくまで比較されているから、各社、20GBプランを作って安く見える状況になった。(安いプランが増えて)乗り換えやすくなってるのは事実だが、興味がない人は全然動いてないと見ている」(石川氏)

 石野氏は、ahamoをきっかけに各社が料金を下げる中で、「特にサブブランドのUQ mobileとY!mobileの動きが大きい」と語った。

 「特にUQ mobileが、想像していたよりも踏み込んできた印象。決算発表を見ても、KDDIとソフトバンクともに良く伸びているのはサブブランド。20GBの料金が話題になったが、最終的に伸びているのは3GB990円ぐらいの料金プランを提供するサブブランドで、それによってMVNOの一部が苦戦してる状況」(石野氏)

 MVNOの立場として島上氏は、「ahamoが非常に強烈だった」と、MVNOにとって厳しい状況を振り返った。

 「2020年半ばから、MNO各社が新プランや値引きを行った。MVNOからすると当時、接続料の将来原価方式は見えていたが、音声卸については影も形もなかった。MVNO委員会から総務省に申し入れをしながら、ああいう形で決着したのが2020年の年度末。その頃にバタバタといろんなものが決まって、われわれは原価が確定しない中でMNOの新プランと戦うことを強いられた。一部のMVNOは見切り発車的に新プランを出したところもあったが、基本的には後手に回って非常に苦戦した」(島上氏)

 北氏も「ahamoの値段設定がポイントだった。ちょっとびっくりした」と語り、当時の状況を説明した。

 「当時、内外価格差調整で、ドコモ以外の5カ国の平均値がほぼ5000円だった。(ドコモの値下げする料金が)5000円より下という話は漏れ聞こえていて、4980円か、行っても3980円かと思っていた。それが20GBで、ショップが使えないとはいえ、まさかの2980円。私や当局が想像していたよりも下がった。恐らく菅前総理も想像していなかったと思う。攻撃的な料金が出てきた」(北氏)

 メディアの記事でも「ahamoショック」という言葉がよく使われた。他社も料金値下げで追随せざるを得ない状況になった2021年だった。

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