「0円プラン」や「iPhone投げ売り」が与える影響は? MVNO復活に必要なこと(後編)(1/3 ページ)

» 2022年04月08日 15時30分 公開
[房野麻子ITmedia]

 テレコムサービス協会 MVNO委員会が3月18日に開催した「モバイルフォーラム2022」では、「リベンジ・今こそMVNOに乗り換える〜GoTo MVNO2.0〜」をテーマに基調講演やパネルディスカッションで議論が行われた。ここではパネルディスカッションの後半をレポートする。

 パネルディスカッションは、「激動が続くモバイル市場 MVNOが復活を果たすために必要なことは?」と題し議論を進めた。前半では2021年の携帯電話業界を振り返った後、総務省が進めている4つの乗り換え促進施策について議論。後半では、「MVNOの主なトピックから見える光明と課題」「MVNOに影響を及ぼすMNOの動き」の2テーマを議論した。

 パネリストは、野村総合研究所パートナーの北俊一氏、スマートフォン/ケータイジャーナリストの石川温氏、スマートフォン/ケータイジャーナリストの石野純也氏、テレコムサービス協会 MVNO委員会委員長でインターネットイニシアティブ 常務取締役の島上純一氏。モデレータは「ITmedia Mobile」の田中聡編集長が務めた。

モバイルフォーラム2022 パネルディスカッションに登壇したメンバー

MVNOの料金が下がりすぎている

 2021年、大手キャリアの料金値下げに引きずられる形で、MVNOも値下げを行った。1月から3月にかけて多くの発表があり、最も低容量のプランはワンコインからそれ未満。1GB1000円を切るプランの他、2GBや3GBは800円台から1000円台といった安価な料金プランが出た。背景には音声卸料金や接続料の低廉化があり、MVNOの体力を大幅に削ることなく値下げを可能にした。

モバイルフォーラム2022 MVNOもさらに低価格なプランを発表。その一方で低容量だけではない、独自プランも目立った

 ただ、MNOのオンライン専用プランやサブブランドも同様の価格帯に改定してきたので、MVNOの価格優位性は失われつつある。MVNOは料金面でサブブランドやオンライン専用プランとの勝負に挑む状況になってしまった。

 この状況を石野氏は「料金が下がりすぎ」と見る。「1GB290円で、果たして利益がどのくらい出るのか。それでビジネスとして、インフラとして成り立つのか。あまりこの方向で競争してほしくない」

 「値下げ以外の差別化、工夫が見たい」ということで、石野氏は通信速度で選ぶmineoの「マイそく」や、20GBと比較的容量の大きいNUROモバイルの「NEOプラン」に期待を寄せた。

 「データ容量ではなく速度で区切る『マイそく』は、今後、さらに速度を刻んできたら、選択肢として面白そう。MNOが使い放題にシフトしていく中で、速度という切り口は面白い。MNOがやっていない部分で、MVNOが攻め込める部分は、個人的には結構あると思っている。例えばPC向け。最近、SIM搭載PCが増えて、ソフトバンクはそれ用の料金プランを出しているが、ドコモは別に主回線がないと使えない。MVNOの工夫のしどころはあると思う」(石野氏)

接続料は引き続き低廉化してほしい

 石野氏のコメントに対し、島上氏は「𠮟咤(しった)激励と受け止める」とコメント。「MVNOから独自サービスが出てくるのは、事業者の多さが源泉。今後も、MVNOが今までにないものを出せる環境を整備していただきたい。また、MVNOはそういうものを出していかないと存在価値がない」(島上氏)

 今後、5Gが浸透していくと使うデータ量が増え、低容量プランでは足りない事態になる。とはいえ、現在、MVNOのユーザーは低容量帯が大多数を占めるという傾向が続いている。5Gによるアップセルをどう図っていくのか。

 島上氏は低容量帯のユーザーが多い理由として「低容量はMNOが提供していかなったレンジ。そこでMVNOが受け入れられてきた歴史がある」と説明。今後、コンテンツの大容量化や端末の高機能化でデータ量が増え、大容量プランを求めるユーザーも増えると予想する。既に大容量プランを提供しているMVNOが存在することを指摘した上で、その難しさを語った。

 「大容量になってMNOと対抗すると、品質の違いが如実に表れる。接続料が下がったとはいえ、MNOが投下するコストを考慮すると、今の接続料で対抗するのはやはり厳しい。接続料は引き続き低廉化していただきたい。それがベースとなって、新しいユニークなプラン、ユーザーに選んでもらえるプランを作っていくことだと思う」(島上氏)

 接続料の低廉化によって料金プランの値下げが行われたことに加え、音声卸料金が下がってMVNOの通話料が下がったこともトピックだ。日本通信の「合理的かけほプラン」から端を発し、他社はオートプレフィックスを使うことで、一部を除き、通話アプリを使わず11円/30秒での通話が可能になった。かけ放題オプションを導入するMVNOも増えた。

 石川氏は「やっぱり通話には根強いニーズがある。また、従量制ではなく、かけ放題のように安心して使えるプランが求められている」とみる。mineoのマイそくを例に出し、「ストレスを感じずに使える方法をMVNOも提供できるようになってほしい。接続料の仕組み上、難しいとは思うが、データ通信に関してもかけ放題がヒントになるのでは」と語った。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2024年