一連の取り組みでドコモが目指すのはオープンRANの“輸出”、つまりドコモが培ったオープンRANの実績をもとに、海外の携帯電話会社にオープンRANを導入するための基盤を提供することを同社の新たなビジネスにすることであるようだ。実際同社では、既に複数の海外携帯電話会社とオープンRAN導入に関する議論を進めているという。
この本格展開はこれからという段階のようだが、2022年1月には韓国の携帯大手であるKTが、ドコモや富士通とオープンRANの検証設備を構築、接続試験に成功したと発表している。その中でドコモはO-RAN ALLIANCEの仕様をベースとした基地局の導入に関するコンサルティングを実施しているそうで、実績は徐々に現れつつあるようだ。
ただ、同じような取り組みをしている企業は国内にもう1社存在する。それは楽天モバイル子会社の楽天シンフォニーで、同社も仮想化技術やオープンRANなどの技術を全面的に採用した楽天モバイルの実績をもとに独自のモバイルネットワークプラットフォームを構築。それを海外企業に提供する取り組みを積極化しており、既にドイツの新興携帯電話会社である1&1に全面的に採用されるなど、実績という意味でいえばドコモに先行している状況にある。
だがより大きな競合、というよりもオープンRANを導入する上で最大の障壁となってくるのが大手通信機器ベンダーの存在である。既存の携帯電話会社の多くは中国Huawei、スウェーデンのEricsson、そしてフィンランドのNokiaという大手3社のうちいずれかの機器を全面的に採用しており、モバイルの通信機器市場はこれら3社が8割近いシェアを持つとされる寡占状態にあるのだ。
携帯電話会社がオープンRANを導入する上では、既に導入されているこれら3社の機器との連携が不可欠になってくるだろうが、寡占体制を築く3社にとってRANのオープン化はデメリットでしかなく、その取り組みも決して積極的とはいえない。オープンRANの盛り上がりを受け徐々に環境改善の流れは出てきているようだが、世界的にオープンRANの導入がスムーズに進むかどうかは、これら3社の動きが少なからず影響してくることは確かだろう。
また一方で、オープンRANは資金と技術を持つ大手の携帯電話会社であれば導入に前向きに動けるだろうが、そうしたリソースを持たない中小の携帯電話会社の場合、逆に大手ベンダーに設備導入や運用などを“丸投げ”してしまった方が楽なので、大手ベンダー依存から抜け出しにくくオープンRAN導入に至らないという問題もある。先行する企業がオープン化による明確なメリットを示し、そうした携帯電話会社の意識を変えていくことも、オープンRANの本格導入には求められることとなりそうだ。
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