ごく一部の例外を除き、携帯電話端末が対応するモバイル通信の規格とバンドは端末メーカーが決定している。対応バンドに関して法規制、あるいはガイドラインを策定する場合は端末メーカーの意向が重要となる。
先述の通り、競争ルールの検証に関するWGでは端末メーカーへのヒアリングも行われた。しかし、対応バンドの決定過程をよく知るためには、コストの話に触れざるを得ない。コストは企業の「営業秘密」に当たるため、端末メーカーへのヒアリングは、応じたメーカーの情報も含めて非公開とされた。
とはいえ、端末メーカーの意見が全く表に出ないようでは、対応バンドに関する政策議論の妥当性を外部から検証することは難しい。そのこともあってか、今回(第31回)の会合では、メーカー名や営業秘密に該当する情報を伏せた上で端末メーカーの意見が公表された。
主な意見をまとめると以下の通りとなる。一部に矛盾する意見もあるが、これは複数のメーカーからヒアリングを行った結果だと思われる。
- 対応バンド決定のプロセス
- 対応バンドはキャリアからの要求仕様に基づいてメーカーで検討し、コスト、開発期間やキャリアの販売戦略を踏まえてメーカーが最終決定する
- 要求仕様にないバンド(他社が使っているバンドを含む)について、キャリアから排除するような指示や要請を受けたことはない
- 対応バンドの決定は、経済合理性に基づいて行っている
- 他キャリアのバンドにも対応すると端末のサイズやコストに影響を与えることがある
- 共通設計化して自主的な判断をした結果、対応バンドが多くなった端末はある
- 高価格帯製品は多くのバンドに対応している
- 低中価格帯製品はキャリア向けには最適なバンドを搭載する一方で、MVNO向けにオープン市場モデルも用意している
- 海外向けを含めて可能な限り端末仕様の共通化を行って、製造や開発コストを削減している
- (仕様共通化の結果)全キャリアの主要バンドに対応できた機種もある
- 複数キャリアのバンドに対応するメリット
- 「エリアや通信速度の維持」「キャリアの乗り換えの容易化」というメリットがある
- 3社のプラチナバンドへの対応なら、端末価格への影響を抑えつつできそうである
- 端末やソフトウェアを共通化することで、ソフトウェア更新の提供を迅速化できる
- 複数キャリアのバンドに対応させるデメリット
- 端末価格やサイズ、無線性能に影響が出る(通信速度の低下を招く可能性もある)
- キャリアをまたぐ乗り換えをしない人に余計なコストを負担させることになりかねない
- 各キャリアの通信高速化技術(キャリアアグリゲーションなど)にも対応できなければメリットを享受できない
- コストの増加や端末サイズの大型化、開発期間の増加につながる可能性がある
- コスト面では、変動費だけでなく固定費も増加する可能性がある
- 端末の価格帯によるコスト
- 低中価格帯の端末は対応バンドの追加による設計やコスト面の影響が大きい
- 高価格帯の端末では設計やコスト面の影響を抑えて対応バンドを増やせる
端末メーカーから寄せられた意見(総務省資料より、PDF形式)
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