スマホでもリアルタイムレイトレーシングを Armが新型GPUコア「Immortalis(イモータリス)」を発表 CPUコアもアップデート

» 2022年06月29日 14時15分 公開
[井上翔ITmedia]

 Armは6月28日(グリニッジ標準時)、コンシューマー機器向けの用途特化型演算をサポートする「Arm Total Compute Solution」の最新状況を発表した。その中で、リアルタイムレイトレーシング(RT)に対応するスマートフォン向けフラグシップGPUコア「Immortalis(イモータリス)」の概要や、モバイルデバイス向けCPUコアの最新状況を披露した。

Immortalisの概要

 ImmortalisはArmのフラグシップGPUコアとして、従来の「Mali(マリ)」の上位に位置付けられるブランドとなる。スマホゲームのグラフィックスの高度化に合わせて「究極のモバイル3D体験」を実現すべく演算能力も高めたといい、同社のGPUコアとしては初めてRTをサポートしている。

 第1弾製品となる「Immortalis-G715」は、高効率GPUコア「Mali-G710」をベースに開発された。先述の通りRTに対応した他、一部オブジェクトのシェーディングをあえて粗くすることで描画全体のパフォーマンスを改善する「可変レートシェーディング(VRS)」をサポートする。演算エンジン(EE)も一新しており、従来のGPUコアと比べて最大15%の描画パフォーマンス向上と最大15%のエネルギー効率改善を実現したという。コアの基数は、搭載されるSoCによって異なり、少なくとも10コア構成となる。

 なお、既存のMaliシリーズにも「Mali-G615」「Mali-G715」という新しい製品が登場する。Immortalis-G715と同様に、両コアはMali-G710をベースに開発されVRSをサポートする。一方で、RTはサポートされない。コアの基数は、搭載されるSoCによってMali-G615が6コア以下、Mali-G715が7〜9コアとなる。

コアラインアップ 新しいGPUコアのラインアップ。Immorital-G715をフラグシップ、Mali-G715とMali-G615をプレミアムと位置付けている。いずれも高効率GPUコアであるMali-G710をベースに開発されたという
新GPUの概要 これらの新GPUは、1コア当たりのパフォーマンスを最大15%向上し、機械学習(ML)の演算スピードを最大2倍向上している。エネルギー効率も最大15%改善したという

Armv9アーキテクチャのCPUコアもラインアップを拡充

 Armは2021年、新しいCPUアーキテクチャ「Armv9」を発表した。今回の発表では、Armv9アーキテクチャを使った新型CPUコア「Cortex-X3」「Cortex-A715」が披露された他、「Cortex-A510」のリフレッシュ版がアナウンスされた。

新CPUコア 新しいCPUコアの概要

Cortex-X3(フラグシップコア)

 「Cortex-X3」はパフォーマンスを最重視するCPUコア(Arm風にいうと「フラグシップコア」、Intel風にいうと「Pコア」)で、2021年に発表された「Cortex-X2」の改良版となる。

 Cortex-X2と比べると、Cortex-X3のシングルスレッド性能はスマートフォン向けで最大25%、ノートPC向けで最大34%のパフォーマンス向上を果たしたという。

Cortex-X3 Cortex-X3は、先代(X2)からシングルスレッド性能を向上した

Cortex-A715(bigコア)

 「Cortex-A715」はパフォーマンスを重視するCPUコア(Arm風にいうと「bigコア」、Intel風にいうと「Pコア」)で、2021年に発表された「Cortex-A710」の改良版となる。

 Cortex-A710と比べると、Cortex-A715は最大5%のパフォーマンス向上と20%の効率改善を果たしたという。

Cortex-A715 Cortex-A715は、先代(A710)から処理効率をさらに向上した

Cortex-A510(LITTLEコア)

 「Cortex-A510」は処理効率(消費電力)を重視するCPUコア(Arm風にいうと「LITTLEコア」、Intel風にいうと「Eコア」)で、2021年に発表されたものである。

 Cortex-A510は従来、Cortex-X2/Cortex-A710と組み合わせるLITTLEコアという位置付けだったが、Cortex-X3/Cortex-A715に対するLITTLEコアとしても利用されることになった。ただし、Cortex-X3/Cortex-A715に組み合わせる2022年版は、従来版と比べると最大で5%の消費電力削減を実現したという。

Cortex-A510 Cortex-A510は2021年から引き続き活用するが、2022年版では消費電力を改善している

PCでの採用拡大を意識した仕様変更も

 Armv9アーキテクチャでは、bigコア(フラグシップコアを含む)とLITTLEコアを「DynamIQ Shared Unit(DSU)」とで連結することで「CPUクラスター」を形成している。

 今回発表されたCortex-X3/Cortex-A715/Cortex-A510(リフレッシュ版)で使われるのはDSUは、Cortex-X2/Cortex-A710/Cortex-A510と同じ「DSU-110」だが、連結できるCPUコアを最大8基から12基(従来比1.5倍)に拡大した。

 加えて、「Cortex-X3×8コア+Cortex-A715×4コア」のようにLITTLEコアを省く構成を取ることも可能となった。これは、ノートPCでの利用にも耐えうるパワフルなSoCを開発しやすくするための措置だ。

新構成 2022年版のDSU-110では、CPUクラスターの構成をより柔軟に行えるようになった。LITTLEコアに相当するCortex-A510を省いて“パフォーマンス全振り”な構成も取れるという

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