5Gが創出する新ビジネス

「PoC沼」にはまったローカル5G、“実証”から“実装”に進むには何が必要かInterop Tokyo 2022(2/2 ページ)

» 2022年07月15日 10時35分 公開
[佐野正弘ITmedia]
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「iPhoneでローカル5Gを使いたい」に応えられるか

 続いて、企の執行役員 チーフ・テレコム/メディア・コンサルタントである伊賀野康生氏から、“PoC沼”から抜け出すためのヒントについて説明がなされた。伊賀野氏は過去のInterop Conferenceで、ローカル5Gの活用は技術目線ではなく顧客起点で考える必要があるとし、技術特性と難易度を意識し、難易度が低いものから取り組みを進め、成功を積み重ねることが重要だと説明してきたという。

 その上で伊賀野氏は、5Gのビジネス開発においては息切れせずに長く取り組みを続けていくことが重要だと話す。そこで伊賀野氏が提案するのが、顧客起点を実現するためペルソナ(サービスの対象となる典型的なユーザー像)を作り、その行動を考えて低コストで早く最小限の試作品を開発して使ってもらい、フィードバックを得て試作品開発を繰り返すという施策を何度も繰り返し、小さな成功を積み重ねていくという新規ビジネスの開発手法である。

Interop Tokyo 2022 伊賀野氏はペルソナを作ってサービス開発をし、フィードバックを得るというサイクルを素早く繰り返し、成功を積み重ねることが、顧客起点の事業開発には重要だとしている

 だがこの手法を取るには多くの資金が必要になることから、顧客とベンダー側とで成果報酬を分配するレベニューシェアを取り入れ、開発対価を共有してコストを下げる手法を伊賀野氏は提案。その事例として映画などにおける「制作委員会」の方式を挙げ、複数の企業がお金を出し合い、収益が出たらそれを分配するという仕組みをうまく活用すれば「沼から抜け出せるんじゃないか」と伊賀野氏は期待を寄せている。

Interop Tokyo 2022 資金面の問題をクリアするには、顧客とベンダーが共同で開発をし、その成果を山分けするレベニューシェアの枠組みを作ることが解決策の1つになるという

 その後、登壇した3者によるパネルディスカッションを実施。大都市圏でインフラ整備が進みやすい西新宿エリアでの5G整備に東京都が力を入れる理由について問われた平井氏は、「高層ビルを建てるときに空き地を作る必要があり、その広大な空き地をいまいち生かし切れていないのを改善したい」と回答。西新宿は丸の内エリアなどと違って特定の地主がおらず、多くのビルオーナーの同意を取る必要があるという難しさがあることも、東京都が力を入れる理由になっているという。

 またローカル5Gで課題となっている対応端末の動向を聞かれた門野氏は、端末バリエーションの少なさが非常に大きな足かせとなっており、それが「PoC沼から抜けられない要因の1つ」だと答えている。実際、顧客からは「iPhoneで使えないの?」という問い合わせが非常に多いそうで、対応端末を増やすにはとりわけ海外メーカーに対して、日本独自のローカル5Gという制度への理解と対応してもらうための取り組みを、日本全体でやっていく必要があると門野氏は述べている。

 また門野氏は、コスト面や制度面での課題に加え、実装面でもアップロードの速度が「準同期を使ったとしても、Wi-Fiに負けるのがリアル」と言うように、ローカル5Gにはまだ多くの課題があると説明。その課題解決に向けて、官民が協力しての取り組みが多く求められていること示した。

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