5Gが創出する新ビジネス

従来価格の5分の1でローカル5Gを導入 NTT東日本が展開する「ギガらく5G」とは(1/2 ページ)

» 2022年03月02日 13時08分 公開
[佐野正弘ITmedia]

 東日本電信電話(NTT東日本)は2022年3月1日、ローカル5Gの手続きから構築、運用までをワンパッケージで提供する、企業向けの「ギガらく5G」を発表。2022年5月から提供する。3月1日には記者向け説明会も実施し、提供の背景と具体的なサービス内容について説明した。

ローカルコストの整備コストが約1億円から2000万円に

 まずはNTT東日本のビジネス開発本部 担当部長である増山大史氏が、ギガらく5Gを提供する背景について説明。NTT東日本はこれまで、光回線を提供してきた実績を生かして企業などに向けたプライベートネットワークを支援、ローカル5Gに関しても「プライベートネットワークに重要なパーツになる」として、2019年12月の制度開始以降「ローカル5Gオープンラボ」を開設するなどして環境の構築や実証実験などに力を入れてきたという。

ギガらく5G 説明会に登壇するNTT東日本の増山氏

 だがそれだけに顧客からはローカル5Gに関する課題の声も多く耳にしたそうで、中でも多くの声が挙がったのがコストの問題であるという。ローカル5Gは機器や構築、さらに保守や運用にかかるコストが非常に高く、増山氏によると「5年間での総コストを換算すると1億円弱くらいかかる」そうだ。

 他にもローカル5Gは、免許取得やエリア設計に専門知識が必要なこと、導入後のシステム監視やトラブル対応が顧客自身では難しいなどの課題を抱えている。それゆえ顧客が試験的にローカル5Gを導入し、有用であれば段階的に拡大したいと思っても、そもそもローカル5Gを試験導入するすべがないという。

 さらに顧客からは、既にWi-Fiや有線のLAN環境があることから、そのネットワーク上にローカル5Gを追加して使いたいという要望も多かったとのこと。そうした顧客の声を受けて課題解決につなげるべく、提供がなされたのがギガらく5Gである。

ギガらく5G 現状のローカル5Gが抱える課題。導入・運用コストの高さに加え、免許取得に専門知識が必要であるなどハードルが非常に高く、試験的導入も難しいと感じている顧客が多いという

 実際、ギガらく5Gは、4.7GHz帯を用いたキャリアグレードの本格的な5Gスタンドアロン(SA)運用のネットワークを、事前の手続きから構築、運用保守までワンパッケージで提供することで、従来のローカル5Gと比べ約5分の1の価格で必要な要素がそろうという。屋内・屋外など利用環境に応じた機器を取りそろえている他、実証実験から本格運用まで柔軟に対応でき、既存のネットワークにアドオンできる仕組みも整えている。

 ギガらく5Gの基本サービスとしては、5GのSA運用に対応したコアネットワークと基地局を構成する無線アクセスネットワーク(RAN)、専用のSIMなどネットワーク構成に必要な機器に加え、無線局の免許取得や実際のネットワーク構築、システム監視や故障時の修理対応などのサポートが含まれている。オプションでエリアを広げるためアンテナや無線子局(Radio Unit、RU)を追加でき、顧客名義での無線局免許取得支援をサポートするサービスも用意している。

ギガらく5G 「ギガらく5G」の概要。ネットワークに必要な機器の提供だけでなく、免許の取得や構築、運用・サポートに至るまで包括的に提供する仕組みとなる

「準同期TDD」でアップロード需要の高い企業ニーズに応える

 NTT東日本のネットワーク事業推進本部 担当部長である佐治大介によると、ギガらく5GのネットワークはNTT東日本のデータセンターに5Gのコアを集約することにより、顧客側に設置する機器を最小限に減らしているという。実際、顧客側に設置する機器は、アンテナやRUの他、DU(Distributed Unit)やCU(Centralized Unit)といった基地局を構成する機器が主となっている。

ギガらく5G NTT東日本の施設内に設置された、ギガらく5Gと同じ機器で構成された屋外用のRUとアンテナ。アンテナは設置場所やカバーする範囲によって複数種類を用意しているとのこと
ギガらく5G こちらは屋内向けのRUで、アンテナと一体になったもの。屋内の広範囲をカバーするため、複数のRUを設置するハブも用意している

 ただ佐治氏によると、ギガらく5Gではデータ通信のルーティングを担うUPF(User Plane Function)を顧客側に設置しているとのこと。それによってエッジ側でのデータ処理を可能にし、低遅延を実現できるのが特徴の1つだという。

ギガらく5G 顧客の施設に設置する設備の一部。CUやDUなどRANを構成する機器に加え、UPFも顧客側に設置することで低遅延に欠かせないエッジでのデータ処理が可能になるとのこと

 そしてもう1つの特徴が、「準同期TDD」への対応だ。

 ギガらく5Gに用いられる4.7GHz帯は、上りと下りの通信を非常に短い時間で分けて送るTDD(時分割多重)を採用している。隣接する携帯電話会社の周波数帯との電波干渉を防ぐため、上りと下りのタイミングを合わせる「同期TDD」で運用しているが、企業では動画など下り通信のニーズが高いコンシューマー向けとは異なり、監視カメラやセンサーなどでの利用が多く上りの通信に対するニーズが非常に高い。

 そこで基本的には携帯電話会社と上り、下りのパターンを同期しながらも、一部だけを変えることで、上りの通信速度を高速化するのが準同期TDDとなる。ギガらく5Gはこの準同期TDDにも対応しており、同期TDDで運用した場合、上りの通信速度が最大230Mbpsとなるが、準同期TDDでは最大466Mbpsにまで向上させられるという。

ギガらく5G 準同期TDD運用時の上り通信速度。400Mbpsを超えていることが分かる

 NTT東日本のビジネス開発本部 担当部長である渡辺憲一氏は、そうしたギガらく5Gによる準同期TDDのユースケースとして、ローカル5Gによる高精細映像による遠隔からの現場把握システムを紹介。これはローカル5G端末を接続した2つの8Kカメラをプラント設備に設置し、ローカル5Gを通じてそれを伝送するというものだ。

ギガらく5G 準同期TDDによる、8Kカメラによる高精細映像伝送の事例。高解像度の映像を安定して送信でき、プラント内のバルブの状態や、不審者の侵入などを目視で確認できるとのこと

 準同期TDDによるローカル5Gでは、Wi-Fiなどと比べ、大容量のデータを高速かつ安定的に送信できることから、このシステムでは360度カメラの高精細映像を通じて設備の不具合や侵入者などを目視で確認、把握できるとのこと。上りの通信が大容量になる分、カメラの台数や種類を増やしたり、AI処理を加えたりするなど、システムの高度化が容易だというのもメリットだという。

ギガらく5G カメラ側はこのような構成。ちなみに端末は京セラ製のものを使用していたが、端末はギガらく5Gの構成には含まれていない

 なお、ギガらく5Gのネットワーク設備にはサムスン電子製の機器を包括的に採用している。佐治氏はその理由について、準同期にいち早く対応できる機器を提供していたことなどを挙げている。

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