初のスマートフォンということで、完成度に不安を覚える向きもあるだろう。スマートフォン市場に参入はしたものの、完成度の低さから販売が振るわず、すぐに撤退してしまったメーカーも少なくない。死屍累々のスマートフォン市場だが、Nothing Phone(1)は、Glyph Interfaceを除けば、思いのほか普通に使える。動作が緩慢すぎて使い物にならなかったり、カメラの画質がビックリするほど悪かったりということはない。
むしろ、レスポンスは非常によく、快適に操作できる。プロセッサはミドルレンジ上位のモデルに採用されるSnapdragon 778G Plusだが、メモリ(RAM)が8GBとこのクラスの端末としては大容量で、ディスプレイのリフレッシュレートも最大120Hzと高い。細かなところかもしれないが、バイブの振動も繊細で、タッチに対するフィードバックが心地いい。OSには、Android 12をベースにしたNothing OSが搭載されているが、カスタマイズは最小限に抑えられている。
Nothing Phone(1)の発表会では、独自のカスタマイズを加えて動作を重くするより、素のAndroidの安定性を向上させることに注力したと語られており、操作感のよさは、その成果といえる。プリインストールされているソフトウェアも、Pixelなどに近い。逆に言えば、Androidでイマイチなところも、そのまま受け継がれてしまっている。通知の上に表示される「クイック設定パネル」の「モバイルデータ」ボタンはその1つだ。
Android 12では、Wi-Fiとモバイルデータ通信が統合されてしまい、ワンタップでWi-Fiの切り替えをすることができなくなった。多くのメーカーはここに手を入れ、Android 11以前のスタイルに戻しているが、Nothing Phone(1)はそのままの形になっており、少々使い勝手が悪い。モバイルデータ通信のように、オン・オフの切り替えをする必要性が薄いボタンを、なぜ利用頻度の高いWi-Fiと統合してしまったのかは不可解だが、少なくともここにはメーカーとして手を入れてほしかった。
標準アプリも、ほぼそのままだ。ボイスレコーダーはNothing Phone(1)独自のアプリで、ドットやシンプルなラインを組み合わせたデザインだが、カレンダーやファイラーなどは全てAndroid標準だ。Android標準のままでも機能的には大きな不満はない一方で、ユーザーインタフェースにはまだ改善の余地がある。厳しい見方をすれば、少なくとも、内蔵されているアプリからは、“Nothing Phone(1)らしさ”が感じられない。
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